テリー・ジョーンズが山本耀司を語る 第1回

「i-D」の編集長のテリー・ジョーンズは、山本耀司と文通をしています。
山本耀司についてのテリー・ジョーンズのインタビューを、2回に分けて紹介します。

 

テリー・ジョーンズ

ヨウジヤマモト436 テリー・ジョーンズテリー・ジョーンズ
「FASHION NEWS」より

 

テリー・ジョーンズ(Terry Jones)

  • 1945年 イギリスのノーサンプトンに生まれる(9月2日)
  • ウエスト・オブ・イングランド・カレッジでグラフィックデザインを学ぶ
  • 1972年 英国版「ヴォーグ」のアートディレクターを務める(-1977年)
  • 1980年 「i-D」を創刊

テリー・ジョーンズのインタビューが載っている雑誌は、

  • ファッションニュース 161号3月号増刊
    2011年3月1日発行
    発行所 株式会社INFASパブリケーションズ

です。

それでは、以下に引用します。

「i-D」の編集長兼クリエイティブ・ディレクター、テリー・ジョーンズが山本耀司の伝記を手に取ったのは、数年前のことだった。

そして今、2歳違いのふたりは、ペンフレンドだという。

手紙に込められる個人的な想いと「ヨウジヤマモト」のコレクションを通じてテリーは、「ヨウジから多くのことを学ばせてもらっている」と語る。

 

ヨウジは世界の別の場所にいる兄

ヨウジヤマモト437 2000年秋冬カタログドレス ヨウジヤマモト 2000年秋冬
「Yohji Yamamoto V&A」より
ISBN978-1-85177-627-6

 

  • 赤いシルクのレイヤード・ドレス
    ヨウジヤマモト
    2000年秋冬
    モデル:アンバー・ヴァレッタ
    撮影:クレイグ・マクディーン

編集部

耀司さんと文通していらっしゃるそうですが、手紙なんですか?
それともEメール?

テリー・ジョーンズ

両方です。 
私はテクノロジーがよくわかっていなくて、タイピングもできないので、PA(パーソナル・アシスタント)にやってもらっているんですよ。
最初に私が送ったものは手書きで、ファックスで送りました。
通常はPAがタイプアップしてくれます。

編集部

文通はどうやって始まったんですか?

テリー・ジョーンズ

私が最初に送って、彼から返事がきました。
ヨウジの返事はとても詩的で短いものですよ。

編集部

どんなことを書いているんですか?

テリー・ジョーンズ

ヨウジの伝記を読んでみたら、彼は私より2歳年上で、お互いの育ちに共通することがいろいろあるんです。
なので、彼のことは、世界の別の場所にいる兄のように感じています。
手紙にはたとえば、「父親であること」について書いていますね。
お互いの娘が成長して、それぞれの仕事で成果を上げていることについて。
私の娘のケイトはフォトグラファーで、ロサンゼルスに住んでいます。
私の最初の手紙は、娘のいる街から出したんですよ。
私はその時、彼女の仕事を見ていて、ヨウジが娘さんのショーを、ファッションデザイナーとしてではなく、娘自慢の父親として見ていたのを思い出したんです。
それぞれがひとりの父親として、男として、娘に対する責任や娘が仕事で成功していること、それについてどう感じているかなど書きました。

編集部

とても個人的なやりとりなんですね。
ジャーナリストとデザイナーのやりとりではない。

テリー・ジョーンズ

ヨウジについて、ファッション以外の面が面白いと思っているから、でしょうね。
ファッションは、いろいろな意味で、彼にとっては二義的なものなんじゃないかと思うのです。
彼の伝記を読んでいると、この人はロックスターにもなれたんじゃないか、または画家としても成功したんじゃないかと思うのです。
彼の持っているある感覚が彼を特別な存在にしているのですが、それは服に関するものに限定されているわけではないのです。

 

ヨウジは教師のような人

ヨウジヤマモト438 2000年秋冬カタログドレス ヨウジヤマモト 2000年秋冬
「Yohji Yamamoto V&A」より

 

  • 黒いシルクのドレスと白い革の手袋
    ヨウジヤマモト
    2000年秋冬
    モデル:アンバー・ヴァレッタ
    撮影:クレイグ・マクディーン

編集部

耀司さんと兄弟のように感じている、とおっしゃいましたが、耀司さんはどういう方だと思いますか?

テリー・ジョーンズ

ヨウジは、教師のような人ですね。
私にとって彼は師匠(マスター)です。
ただ、一般的な意味合いでの教師というのとはちょっと違います。
彼が伝えようとしていることを完璧に理解することはできないから。
彼は彼が作り出すファッションを通じてなにかを伝えようとしていますが、それは言葉では表現できないことなのです。
彼の発信してくるものは、なんというか、感傷のようなものだったりするのです。
ある意味、私も彼も”オブザーバー”なんです。
私は人生を観察していますし、彼は人々を観察しています。
彼は「パリのカフェでコーヒーを飲みながら通行人を観察するのが好き」と言っていますね。
人を見ること自体がインスピレーションになっているのです。

編集部

おふたりとも、自分が世界の中心と思うのではなく、半歩下がって世界を見ているように聞こえるのですが?

テリー・ジョーンズ

私はよく「自分だけが別世界に生きているみたいだ」と言われます。
私の脳が、どこかほかのところに行ってしまっているような。
ヨウジ自身の脳がどんなふうに働いているのかまではわかりませんけれど。
感覚も作品も、100パーセント分析することはできないのではないかと思います。
そういうものはエモーショナルな部分に存在するので。
そして、その分析しきれないエモーショナルな部分から出てきたものが、詩になるのです。
彼の作品は、その詩を通じて表現されているのではないかと思います。

編集部

耀司さんは彼のエモーションを服を通じて表現している、ということでしょうか?

テリー・ジョーンズ

服については、彼はある種の女性を想定して作っているのではないかと思います。
知的な女性向けであり、ルールにとらわれていない。
エレガンスが基本にあるとは思いますが。
伝記に書かれている彼の服作り、カットや素材の選び方はとても面白いものです。
それは布の動きについてであり、素材の重さについてであり、バイアスカットの作り出すものについてであり、スケッチについてです。
彼は、服は誰かが着て動いてこそのものであるとわかっているし、私もそう思います。
止まった状態で完璧であるべきものではないのです。
ただし、服そのものについて、私は多くは語れないんですよ、服は、着る人がいてこそのものなので。

文:正岡雅子

テリー・ジョーンズが山本耀司を語る 最終回を読む

 

「クリエイターが山本耀司を語る」は、以下も参考にしてください。