ポケット 山本耀司のファッション進化論

山本耀司のファッション進化論より、今回のテーマはポケットです。
ポケットはデザインの上でも、型紙を作る上でもセンスが問われます。

 

ポケット

ヨウジヤマモト133 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

 

  • Photographs : Kenji Toma
  • Hair : Masanao Nomoto(Seints)
  • Model : Bill Blake

それでは、引用します。

編集部

ポケットは、もともと男性のものでしょう?

山本耀司

女の人がポケットに手を入れるようになったのは、いつごろだろう。
マルレーネ・ディートリッヒあたりかな。
いずれにしても、男物を着るようになってからですね。

編集部

女性の解放はポケットから、なんて。

山本耀司

その男っぽいポーズが、時代に受け入れられたことは確か。
一つのモードになってしまったのだから。
本来必要のないオートクチュール風の服を作っても、ポケットをつけたくなる。

編集部

物を入れるより、手を入れるため?

山本耀司

女の人がズボンのポケットに手を突っ込んで、生意気ぶってるの、好きですから。

編集部

男だって、かわいい。

山本耀司

ジャームズ・ディーンとかロバート・ミッチェム。
不良かやくざ。
男の場合は、拒絶、軽蔑、反抗、ひがみを意味します。

編集部

誰かさんのお得意だったりして。

山本耀司

新宿でもパリでもニューヨークでも、夜、やばいところを歩いていると、向こうからやばいのが来たりする。
そんなときポケットの中の手は、戦闘態勢に入っているんです。
次の段階で、鍵を握りしめて。
男って、ばかでしょう?

 

女性にはモード男性には実用

ヨウジヤマモト134 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

ふふ・・・男とポケットのドラマティックな関係がよくわかったわ。

山本耀司

しわくちゃのドル引っ張り出して、やっと一杯飲める、なんていうのもいいですね。

編集部

男の人生に密着している。

山本耀司

子どもの時は、宝物入れ。
何でもかんでも詰め込んだ。
今でもズボンのポケットがバッグ代わりになっています。
個人的には、財布以上の荷物持って歩くの軽蔑しているから。

編集部

何が入っているの?

山本耀司

右側にお金。
左側にハンカチ、ライター、キーホルダー。
上着にパスポートの入る内ポケットがあれば、旅行かばんもいりません。

編集部

女性にはモード、男性には実用。

山本耀司

実用の最たるものが、ヘビーデゥーティウェア。
ポケットが13個くらいついて、服が便利バッグになっている。

編集部

機能のかたまり。

山本耀司

普通の服でも、財布が入らなかったり、悪い位置についていて、手に余計な動きをさせるのはだめ。
手を入れて服のシルエットが変わるのも失格です。

 

持って生まれたセンス

ヨウジヤマモト135 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

でも、アウトポケット、箱ポケット、玉縁ポケット、フラップポケット、サイドポケットと数えきれないほどある中から、何を基準に選べばいいのかしら。

山本耀司

ポケットの位置、形、数、口の大きさ、角度、袋の深さは、服の役割によって違ってくる。
僕も以前は”ねばならぬ”風につけていたけれど、このごろは意識してつけてます。

編集部

最初の写真のジャケットは?

山本耀司

このコレクションは、男のかわいさがテーマだから、宝物がいっぱい入るポケット。

編集部

厚みがあって大きいのに違和感がない。

山本耀司

布の比重が胃のあたりにかかって、落ちが決まっている服は、どこに持っていってもおさまります。
布のすわりが悪いときは、とってつけた感じ。
福笑いみたいになってしまう。
実際仮縫い中、穴をあけると、笑ったみたいに口のあくことが、よくあるんです。
(中略)、ポケットにも当然あいてほしいという位置があって、かみそりで切ったら、シュッとおさまるはず。

編集部

その位置を見極めるこつは?

山本耀司

服の着心地をよく知ること。
あとはその人の持って生まれたセンスじゃないかな。

 

本当の意味で育ちのいい女性

ヨウジヤマモト136 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

方程式は、なし。
まずは、いい土台を作ることね。
2番目のは、色違いの玉縁。

山本耀司

一種の儀礼服のもじりです。
ホテルのドアマンみたいな。
シンボライズされた服のコピー。

編集部

3番目は、目立たない玉縁ポケット。

山本耀司

衿のトリミングやボタンが派手だから、けんかしないように、控えめ。

編集部

最後のは、また大きなポケットですね。

山本耀司

アウターウェア、作業服だから、でっかいポケットがいります、と服の目的をポケットで誇張したわけ。

編集部

yohji yamamotoの秋冬コレクションでは?

山本耀司

ポケットのミニマリズム。
傾斜をつけないで、体に平行にかみそりで切込みを入れたみたいな、最小限のポケットをつけました。
気分のいいところに穴があいているというだけ。

編集部

すると、ディートリッヒ以前の女性像。

山本耀司

逆行させるつもりはありません。
オートクチュールとは違う、本当の意味で、育ちのいい女性。
プレシャス。
ノーブル。
ポケットを必要としない女の人です。

他の「山本耀司のファッション進化論」は、以下を参考にしてください。