パリ 山本耀司のファッション進化論

山本耀司のファッション進化論、第2回目は「パリ」です。
どんな話が、とびだすのでしょうか? 

 

パリ

ヨウジヤマモト102ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs back stage : Bertrand Marignac

             stage : Bogdan

 

編集部と山本耀司の対談を、引用します。

編集部

パリのどこが好きですか?

山本耀司

自由なところが、いいですね。
みんなが勝手気まま。
勝手にしやがれって気分が、石畳にしみ込んでいる。

編集部

東京には自由がないのかなあ。

山本耀司

街も人もきれいになったでしょう。
どこに行くにも、きちんとしなければ、違和感がすごい。
許されない。
それが苦痛です。
パリならかなりいいかげんな、汚い格好しても平気。

編集部

裏通りなんか、似合いそう。

山本耀司

リヨン駅の近く、古い鉄道のターミナルや運河があって、そこ通ると、うん、似合ってる、なんて。
自分が大きく感じられます。

 

パリのファッションデザイナー

ヨウジヤマモト103ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs back stage : Bertrand Marignac

             stage : Bogdan

 

編集部

’81年の、最初のパリ・コレクションの時は、敵陣に乗り込む感じ、しませんでした?

山本耀司

別に。
たてつこうと思って行ったわけじゃないもの。
その当時、自然に好きなものを作って発表したら、喜んだ人と反発する人にはっきり分かれた。
それでパリの反応を見たくなったんです。
きっと好みの合う人がいるにちがいないと。

 編集部

いましたねえ。
大量に。

山本耀司

そうでもない。
最初は。
日本からの出稼ぎデザイナー集団の一人としか見られませんでしたから。
6、7回やったら、あんた、やっぱりパリのデザイナーだよって扱いになった。

編集部

居心地がよくなったでしょう。

山本耀司

悪いですよ。
だって、後ろ向いてぺっと舌出すようなことしているんだから。

編集部

クチュールの伝統美をからかったり。

山本耀司

いたずらを隠している子供みたいに、ほめられると落ち着かない。

編集部

パリの人は、諧謔(かいぎゃく)を見抜いたうえで、認めているんだと思う。

山本耀司

(略、コピーが切れていました。)
の美が好きなんです。
でも反発する美も欲しい。
僕の仕事がやっと議論の対象になったから、あれこれ言ってるだけ。

編集部

これ以上いじめるとやばい。

山本耀司

オートクチュールの城塞の中で仕事してるわけ。
ちかっといじってユーモアにするしかない。

 

パリの仲間

ヨウジヤマモト104ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs back stage : Bertrand Marignac
             stage : Bogdan

 

編集部

それでも、パリが一番。

山本耀司

デザイナーが作ったものを見てもらう場って、コレクションしかないでしょう。
他の形式は考えられない。
パフォーマンスは目的が違うし、展示会や店は商売の場だし。
僕の場合、単純にこんなもの作ったんだけど見てくれるって発想だからどうせなら世界中からおしゃれな人が集まる町がいい。
その代わり、コレクションの時は、丸裸にされる感じです。

編集部

あら捜しの名人にじっくり見られて。

山本耀司

自分がいかにだめかを眺める感受性があるかどうか。
そこが勝負だと思う。
だめなときはだめでいい。
今回はだめなのよね、というメッセージさえあれば。
人間の力ではどうにもならない組合わせ、巡り合わせで、うまく言えないこともあるし、ショーの成功と服の成功も、また別です。
ショーは受けても、頼れる服がないとか。

編集部

頼れる服って?

山本耀司

これで半年間温かい気持ちでいられるという服があるんです。
たいてい専門的、楽屋落ち的な服だから、通じるのはパタンナー、デザイナーとかの同業者。
あ、こいつ着てるな、わかってるな、と。

編集部

そうか。
パリには服を通してわかり合える仲間がいるんだ。

山本耀司

国籍や年代や好みが違っても、競争相手であっても、 根っこは同じだと思う。
アライアやゴルチエに会えば、同時代を生きる同志って気がするし、サンローランやカルダンのようなかけ離れたデザイナーに会っても、同じ根っこを感じます。
彼らに会うだけで、吸収できる。
物を作る人間が恍惚とする瞬間ですね。

編集部

ニューヨークやミラノは?

山本耀司

あんまり好きじゃない。
服のとらえ方が違います。
売れる服がいい服。
すべて売上で判断される。
そして成功したら、成功のパターンを見せなければ納得しない。
ミラノなら、郊外にお城を買うとかね。
パリには、デザインそのものを見てくれる人がおおぜいいる。
何人かが、これいいね、好きなんだよね、と言ってくれれば、もう充分、こういうことのためにやっているんだって気持ちになれます。

 

’87春夏パリ・コレクション

ヨウジヤマモト105ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs back stage : Bertrand Marignac
             stage : Bogdan

 

編集部

このスナップは、今回の’87春夏パリ・コレクションの楽屋ですね。

山本耀司

始まる前の写真、いやだなあ。
楽屋で見る姿とステージで見る姿は全然違う。
生き死にがあるから、手ごたえがわからないんです。

編集部

で、うまく言えました?

山本耀司

ストレートすぎた。
もう少し何かに包んで、解釈の余地を残せばよかったと思う。

他の「山本耀司のファッション進化論」は、以下を参考にしてください。