田原桂一と山本耀司の対談 METAPHORE 5

田原桂一と山本耀司の対談も、今回が最終回です。
最終回のテーマは、「装うことの源流」です。

 

装うことの源流

ヨウジヤマモト メタファー31 田原桂一ピエール・アントニウッチ
1984-1985年秋冬
「METAPHORE(メタファー)」より

 

METAPHORE(メタファー)より、以下に引用します。

山本耀司

アラブとか東南アジアが好きで、よく歩きました。
アラブはモロッコとチュニジアしか行ってないですけど、全部好きですね。
むしろチュニジアのほうが好きかな。
モロッコはちょっと美し過ぎる。

田原桂一

うん、洗練されてる。

山本耀司

東南アジアも、どこへ着いても、僕、ほっとしますね。
服装で一番刺激されるのはアラブです。
民族衣装と西洋のものを完全にまぜて着てる人たちですから。
あの国以外ないね。

田原桂一

そう。

山本耀司

ヨーロッパの古着と、それから自分たちの民族衣装を完全に取りまぜて、コーディネーションなんていうものじゃなくて、猛烈な精神で着こなしている。

田原桂一

そんなものじゃないですかね。
そのへんはこの人に聞いていただければ、身をもって実践してますから。

友松美幸

失礼ね。

山本耀司

日本人がはかまに背広のような上着を着るようなもので、僕は、明治維新のころの男たちのスタイルは勢いがあって好きなんですけど、それよりもっとすごい。

アラブが大好きで、僕のコレクションの原型があれなんですよ。
それに感動しちゃってるから。
男がすごくセクシー。
とにかく「男だ」ってね。

友松美幸

そうかな。

 

だから、歌がある

ヨウジヤマモト メタファー32 田原桂一ジャン=シャルル・ブレ
1985年春夏
「METAPHORE(メタファー)」より

 

山本耀司

かっこいいよ。
おじいさんがすごくエレガント。

田原桂一

トルコなんて歩いていると、トルコ人は気性が荒くて、カッカカッカして、若いのなんてエネルギーの塊みたいな感じ。
あれが枯れて、おじいさんになったときに、いいよ。
みんなそれぞれが、こうなってやろうとか個々の欲望を秘めていてさ。
それで、結局はあきらめて、もとの座に戻ったり。
でも、その過程の中で燃えていく心、あるいはあきらめから出てくる退廃的な別のエネルギー、そういうふうなものというのはものすごくおもしろいと思う。

そしてそういう過程を通りすぎて年老いた男というのは、成功したにせよ失敗したにせよ、それぞれに味がある。

山本耀司

だから、歌がある。
アラブの歌はいい。
汚いカスバの脇の露店の喫茶店みたいなところで、あんちゃんたちが替え歌の即興で渡り合ったりする。
そうすると、どんなレコード聴くより、ワーッと感動してくる。

歌でそれに近い感動をしたのは、1回だけ。
沖縄の西表へ行ったときに、昼間農業で、夜奥さんが機(はた)を織ってるという思想家なんだね。
その夫婦が、蛇皮線で西表の民謡を1時間ぐらい歌ってくれたの。
あんまりいい歌で、おれ、30分泣いていた。
それもアラブで聴いたときの感動のまま。
これぞ歌だと。
この間、三味線の桃山晴衣さんと話したでしょう。
一体、歌い手というプロフェッショナルというのは何なんだろう。
生活の、あるいは人生の中から出るのが歌であって、歌い手が人生になっちゃった人って一体何なんだ。
本当は意味ないと思うって、彼女も言っていた。
おれ、そのとおりだと思った。

 

何でああかっこ悪いんだろう

ヨウジヤマモト メタファー33 田原桂一ルチアーノ・キャステリ
1985-1986年秋冬
「METAPHORE(メタファー)」より

 

山本耀司

アラブはいいですよ。
いま田原さんが言った意味でね。
それに比して日本は、僕らの職業でもどんどん文化性が薄れていってると、自分で思いますね。
手でつくらなくなっているからね。
さわって物をつくらなくなっているから、どんどん文化じゃなくなってるというか、文明になっちゃってる。
洋服までが文明になっちゃっているということですね。

田原桂一

でも、いま、そういうことに対する反発が出ています。
特にヨーロッパは。
それと階級制の問題とかに対しても反発がいま出てきているから、もうじき日本も当然なるよね。

山本耀司

なるんだろうね。

僕がいま一番デザインを請け負いたいのは、おもしろいだろうなと思うのは、自衛隊とか警官の制服です。
何でああかっこ悪いんだろうと思う。

友松美幸

パリのは変わったわね。

田原桂一

見た?

山本耀司

まだ見てない。

友松美幸

あれミュグレルじゃないかな。

田原桂一

ミュグレルだと思うの。

山本耀司

ちょっとモダニズムが入ってるの?

田原桂一

そう。
デコみたいな感じね。

山本耀司

デコなの、モダンなの、どっちなの?

田原桂一

デコっぽい。

友松美幸

ポストモダンじゃないの。

田原桂一

だからデコよ。

 

ひとつの夢です

ヨウジヤマモト メタファー34 田原桂一ベルナール・パジェス
1986年春夏
「METAPHORE(メタファー)」より

 

山本耀司

あんまりよくないな。
全体主義でやればいいのにね(笑)。

田原桂一

本当にそうだと思う。

友松美幸

軽く見える。

山本耀司

よくないね。

友松美幸

みんな交通整理のお巡りさんに見えるね。
本当はこわいのにね。

田原桂一

そんなふうにやって隠すことないですよ。

山本耀司

自衛隊だって、制服をかっこよくしたら、人がいっぱい集まるよ。
制服というのは、やっぱりそそられるものがあるね。

ファッションデザイナーって、だれでも一時期、2、3年軍服とか戦闘服に傾倒するんです。
そこから身動きとれないぐらいのめり込んじゃうことがあるんですよ。
僕もあったんです。

田原桂一

制服というのは、属性というか何ていうか、プライベートな個人を否定しますでしょう。
だから、いいんでしょうね。

山本耀司

だから、いいんですね。

友松美幸

制服のデザインはファッションデザイナーの夢ですか。

山本耀司

ひとつの夢です。

1985年12月12日

友松美幸(ともまつ みゆき):翻訳家。パリ在住。

METAPHORE(メタファー)

  • 発行日 :1986年12月24日
  • 著者  :田原桂一
  • テキスト:カトリーヌ・ミエ
  • 発行所 :株式会社求龍堂
  • ISBN4-7630-8619-7

今回で、最終回です。

 

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