田原桂一と山本耀司の対談 METAPHORE 4

田原桂一と山本耀司の対談も、今回で4回目です。
今回は「被写体」と言うテーマで、田原桂一と山本耀司が語り合います。

 

被写体

ヨウジヤマモト メタファー25 田原桂一ジェラール・ガルースト
1982年春夏
「METAPHORE(メタファー)」より

 

METAPHORE(メタファー)より、以下に引用します。

山本耀司

田原さんはどうなの。
女を撮ろうと思わない?

田原桂一

むずかしい。
ずっと昔から思っていたんですけど、体を見たとき、男と女はどっちがきれいかなといったら、僕なんか男のほうがきれいだと思っちゃう。
そういうのが根本的にあるのね。

山本耀司

そう。男のほうがきれいですよ。

田原桂一

それと、僕なんか、男の人に対しては純粋に見れるわけ。
女の人に対しては下心が僕の中で働くわけね。
きれいな人なんか見たりすると。

山本耀司

いや、別にそれは下心じゃない。
素直な心ですよ。

田原桂一

あ、そうか。
素直な心がやっぱり出てきちゃうわけね。
自分が冷静に、客観性と言ったらおかしいんですけれども、観察しようとする対象にはなり得ないわけ。
感情を移入する対象になっている。

山本耀司

感情か触覚かを働かせないと味わえないものでしょう。
男は見てるだけでいいですね。

田原桂一

確かに写真を撮るということは、1枚の写真の中に、さわるとか、そういうことによって得られる部分が出てくる要素がかなり強いんだけれども、女の人の場合は、写真を撮るよりか、さわったほうがいい。

山本耀司

大賛成。
相当焼きが回らないと、女の体を眺めてきれいだとかって言えないね。

田原桂一

枯れないと言えないんじゃない?
そういう意味で、女の人に服を着せるなり何なりして撮るのはむずかしいですよ。

 

だから僕、信じられないですよ

ヨウジヤマモト メタファー26 田原桂一ジャン=ピエール・ベルトラン
1982-1983年秋冬
「METAPHORE(メタファー)」より

 

山本耀司

僕、この年で、いままで15年ぐらいファッションをやってますけど、ファッションモデルに1回もいかれたことないですよ。
自分の服を最高に表現してもらうための道具としか見えないから、おまえ、何でそんなになで肩なのとか、何でそんなに尻が下がってるのとか、ふとももが張り過ぎてるとか、あらばかり見えちゃう。

田原桂一

つまんないね。

山本耀司

男のほうがゾクッとする。
僕はそういう気(け)はほとんどないけど。

田原桂一

ほとんどないね。
僕なんかヌードを撮ると、その感情を押し殺そう押し殺そうとするわけですよ。
だから、絶対ビニ本みたいのはできないね。

山本耀司

そうだね。
そういう純粋なものはできないね。

田原桂一

隠して、隠して、女はきれいだと言ったほうがいいんじゃないか、みたいな、そういうつくり方にどんどん自分を追い込んでいくわけです。
でも、気持ちとしてはビニ本であり、SMであり、そういう気持ちなわけだと思うのね。
本当に正直言ってね。
でも、できない。
だから、女を撮るというのは嫌なのよ。

山本耀司

だから僕、信じられないですよ。
裸体ばかり専門の絵かきとかね(笑)。

田原桂一

信じられないですね。

山本耀司

うん。

 

着せたい男、撮りたい男

ヨウジヤマモト メタファー27 田原桂一ジャン・ドゥゴテックス
1983年春夏
「METAPHORE(メタファー)」より

 

友松美幸

着せたい男、撮ってみたい男の具体例というと、たとえばだれですか。

山本耀司

日本人でですか。
日本人ではいないんで、いままで撮ってないんですよ。
僕はどっちかというと、アーティストとか作家じゃなくて、町をゴロゴロ歩いてるような、たとえば昼間土方をやってるような人とかで、ああ、おもしろいと思うことがよくありますけど、そういう人は無名だから・・・。
よく、カーキ色の靴下を履いて、ニットの紫の腹巻きをしてるのを見ると、うわ、粋やねと思ったりするし、そういうやつには着せたいなというふうに思います。
それ以外には、そういうふうに強く思うことはあんまりないですね。

田原桂一

そういう人って絶対着ないから着せたいと思うんでしょう。

山本耀司

そう、そう。
ただ、そういう人がファッションぶろうかと思うと、いきなりバカ派手へ行くんですよね。
それは間違いだぜというのをはっきりさせるために、いわゆる無印商品に近いもので、インターチェンジのそばの作業衣屋に並べてもらうとか、そういうのを、あるスーパーマーケットと組んで、いままじめに企画してるのね。
そうなったら、すてきという意味じゃ一番すてきだよね。
ジャリトラをガーッととめて、おい、このズボン5本くれとかっていう感じで買っていって愛用してくれたりすると、実際はあれはおれのデザインだと絶対言わないで、ほくそ笑んでるわけ。

田原桂一

ウシシ・・・と思ってるわけね。

 

すごく、歌舞伎してるでしょう

ヨウジヤマモト メタファー28 田原桂一ジャン=マルク・ビュスタマン
1983-1984年秋冬
「METAPHORE(メタファー)」より

 

山本耀司

1回、作業服の専門店に資料を集めに行ったことがある。
脚半(きゃはん)とかゲートルとか軍手とか、いろんなものを買ったわけ。
そしたら、売ってくれた奥さんが、おれがそういう土方のアルバイトでもすると思ったんですね。
「それじゃサイズでかいよ」とか、いろいろめんどうみてくれたのね。
僕の体を見て、どうしてそういうふうに思っちゃったのか。
顔を見れば、そう思うかもしれないね。

友松美幸

苦学生だと思う。

田原桂一

いや、鳶職だと思う。

山本耀司

いろいろサイズのめんどうみてくれたりして、すごくおもしろかったよ。
置いてあるものが全部、すごく粋なんだよね。

田原桂一

鳶職の履くニッカボッカは、ものすごく動きやすい。
両脇が出ていても、どこにも引っ掛からないの。
どこかに引っ掛かって、あれで自分の体の幅がはかれるというのね。
トントントンと細いところを歩いていくときに、あの幅というのが安全なんだって。

山本耀司

ああ、そうか。

田原桂一

ちゃんとそれがあるみたいね。

山本耀司

ああいうものは完成されてるんだよね。
で、すごく歌舞伎してるでしょう。

田原桂一

うん、歌舞伎してる。
それに自分の仕事にものすごい職人的なプライドを持ってるでしょう。
たとえばトラックの運転手でもそうですよ。

山本耀司

向こうの人はそうだね。

田原桂一

すごいですよ。

山本耀司

向こうのトラックの運転手というのはすごい。

田原桂一

いや、おれ、日本でもそうだと思うの。

山本耀司

あ、そうか。

 

プライドのひとつの表れ

ヨウジヤマモト メタファー29 田原桂一アラン・ボレル
1984年春夏
「METAPHORE(メタファー)」より

 

田原桂一

トラックの運転手ってものすごいプライドを持ってるもの。

山本耀司

マナーもいいね。

田原桂一

だから、あれだけ自分のトラックを飾る。
一時、飾るの流行ったじゃない。
あれは、プライドのひとつの表れだと思う。

山本耀司

それはわかる。

田原桂一

変な話だけれども、そこらへんの会社に勤めてるサラリーマンの人なんかよりも、自分のやってる仕事に対して誇りを持ってると思う。
まじめだと思う。
特に最近、わりと仕事先の会社なんかに行くじゃない。
仕事してるの見ていたら、頭に来るもんね。
ジャリトラとか、そういう人を見ていたら、まじめだと思う。

山本耀司

夜明けの東名の上りなんて見てると、ジャリトラがウワーッと行くでしょう。
あれ、かっこいいね。

田原桂一

うん。東名のドライブインで、飯食ってるときなんて、横にジャリトラの連中がワーッと集まってきて飯食うじゃない。
話を聞いていたら、いろいろおもしろいのよね。
真剣になって効率の問題とか、やってるんですよ。
飯食ってるときに真剣にみんなでディスカッションみたいのをやっていて、ヘェーと思ったね。
やっぱり中途半端じゃないですよ。
特にああいうのって、自分のトラック1台で商店でしょう。

山本耀司

うん、そう。

田原桂一

だから、ものすごく真剣なのよ。
鳶職の人だって同じだと思うのね。

1985年12月12日

友松美幸(ともまつ みゆき):翻訳家。パリ在住。

METAPHORE(メタファー)

  • 発行日 :1986年12月24日
  • 著者  :田原桂一
  • テキスト:カトリーヌ・ミエ
  • 発行所 :株式会社求龍堂
  • ISBN4-7630-8619-7

田原桂一と山本耀司の対談 METAPHORE 5 に続く

 

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