田原桂一と山本耀司の対談 METAPHORE 1

METAPHORE(メタファー)という写真集の中に、田原桂一と山本耀司の対談が載っています。
長文ですが、何度かに分けて紹介します。

 

出会い1

ヨウジヤマモト メタファー07 田原桂一ルチアーノ・キャステリ
1985-1986年秋冬
「METAPHORE(メタファー)」より

 

METAPHORE(メタファー)より、以下に引用します。

山本耀司

我々のきっかけはなんでしたっけ。

田原桂一

カレンダーを1回一緒につくって、それがきっかけになって始まったようですね。

山本耀司

よく覚えてないです。
うちのパリにいたスタッフが、カレンダーをつくるのに写真家を探したんでしょうね。

田原桂一

みたいですね。
展覧会を見に来てくれたの。
これでカレンダーができればおもしろいねという話で、電話がかかってきた。

山本耀司

で、「社長、すごい写真があるから、見てください」と、こうなって。

田原桂一

あれ、何年のカレンダーだっけ。
79年のカレンダーだっけ?

友松美幸

79年に80年用のを撮ったんです。

田原桂一

画期的なカレンダーだった。
大きくて。

山本耀司

日付はほとんど見えない。

田原桂一

写真しか見えない。
それと、何か田園コロシアムでやったでしょう。

山本耀司

あ、そうだ。
田園コロシアムでショーをやったときのポスターを、田原さんの作品集から選ばせてもらった。
それと、カタログの話が相前後してあったでしょう。

 

出会い2

ヨウジヤマモト メタファー08 田原桂一ジャン=マルク・ビュスタマン
1983-1984年秋冬

「METAPHORE(メタファー)」より

 

田原桂一

うん、カレンダーをつくるときに写真を選ぶんで、うちに彼が来て、「ほかに何かありますか」と言うから、ポートレートがありますけどと言って、その当時ずっと『流行通信』でやっていたでしょう、そのポートレートを見せたら、彼が、「男物のカタログなんか興味ないですか」って。

あれは年2回でしょう。
それでアーティストを使ってるでしょう。
かっこのいいアーティストでも、つくってるものがおもしろくないと、やっぱりやってもおもしろくないでしょうね。
その辺でアーティストを探すというのはむずかしいんですよね。
だいたい友達ですねどね。
それと、服が上がってくるまでわからない。

山本耀司

コレクションショーを田原さんが見るというチャンスがほとんどないからでしょう。
コレクションが終わって、今度これなんですけどと言うころには、撮影が間近なの。
だからといって、服が上がる前にモデルを決めておくというわけにはいかないし。

田原桂一

それに、実際に着せてみないとわからない。

山本耀司

服はね。

田原桂一

本当にわからないね。
多分いけるだろうな、でパーッと持って行っちゃう。
特にパリ以外に住んでいる人のときには、試しに着てもらうというわけにもいかないしね。

山本耀司

田原さんはいわゆるファッションフォトグラファーじゃないですからね。
ファッションフォトとしての応用範囲がほとんどないんです。

田原桂一

女性の場合、どうしても服をかなり見せなきゃいけないとか、そういうことがありますよね。
でも、男物というのは、イメージのほうが強いんじゃないでしょうか。

山本耀司

男がいればいいという感じ。

 

なぜアーティストか1

ヨウジヤマモト メタファー09 田原桂一アラン・ボレル
1984年春夏

「METAPHORE(メタファー)」より

 

田原桂一

どうせ普通のカタログはつくりたくないみたいなことで、任せてくれるんだったら、好きなようにやりたいし、「それじゃ任せますよ。まあ1度やってみてください」ということで、それだったらアーティストを使って、アーティストに着せて、そのほうがおもしろいんじゃないかというんで、それでやってみようと。
男のモデルというのはなよなよした感じで、あんまりいいのがいないんですよね。
特に男のファッションというのは、男の主張みたいなものがあったほうが、顔に生きざまが出ているような、そういう人に着てもらったほうがおもしろいものができるし、撮る側としてもそっちのほうが興味があるわけですよ。
自己主張のできる人というのは撮ってもおもしろいし、着せかえ人形にはならないですね。
それなりに自分でやりますね。

それと、作品がいいという、両方が兼ね備わらないとむずかしい。
すごく背が高くて、モデルみたいなアーティストも中にはいるわけですよね。

逆に髪の毛が物すごくグジャグジャで、脂ぎったような顔をしていても、存在感があるというのはあるよね。
果たしてそういう人が耀司さんの服を着れるかどうかというのは、また別問題として。

山本さんとしては、アーティストに着せるという基本的な考え方というのはどうだったんですか。
1回目の写真が来たとき、どうだった?

山本耀司

1回目、よかったですよ。
一緒に写真選びとか、やった。
僕、2回しか写真選びに立ち会ってないですけどね。
それは、彼はパリに住んでいて、僕は東京ということもあったし、それから僕は最初から、これは僕のものじゃなくて、田原桂一のものだというふにわかっていたから、僕があんまり口を挟む必要はまずないと決めていたんで。

ファッション関係者の中には、こういうパンフレットをぼろくそに言う人がいます。
全然服が見えないし、販促に何もつながらないという言い方で、困ると言う人がいますけど、そういう程度の販促だったらば、別に改めて男物のパンフレットなんかつくりたくないし、すごく恥ずかしいね。

田原さんの写真を褒める言葉というのは、いま氾濫しているから、あえて僕はあんまり言いたくない。
要するにすべて任せているくらい大丈夫だ、好きだ、みたいなことです。

 

なぜアーティストか2

ヨウジヤマモト メタファー10 田原桂一ベルナール・パジェス
1986年春夏

「METAPHORE(メタファー)」より

 

田原桂一

でき上がって、「できたよ」とかっていうんです。

山本耀司

いま撮影してんの?なんて知らないときがあるくらいで。

田原桂一

いまなんかは、パリでセレクションとおおまかなレイアウトを決めちゃって、それがボーンと着いて、耀司さんが見て、そのまま印刷所に出す。

山本耀司

今度好きだよとか、今度まあまあだとか、そういう感想を言うくらいで、僕は何もしないのよ。

田原桂一

でも、昔よく言われた。
服が似合わないだの、いろんなことをね。

山本耀司

あれは、うちのブランドの責任者あるいはマーチャンダイジングの責任者あたりが外から言われることを、田原さんに言ったことがあったみたいですけど、僕は、10人やっちゃえばこっちの勝ちみたいに思っていたから、とりあえず10人と、おととしぐらいからずっと言い続けた。

田原桂一

いまは、そういうのは全然なくなっちゃったですね。
周りも、ああいうカタログをつくり出したということがあるんじゃないかね。

山本耀司

その前から、女物だけども、コム デ ギャルソンがずっと、もう10年ぐらいカタログをつくり続けているのかな。
それも日本で始めて、日本でそのころファッションフォトグラフでは一流だと言われていた人をずっと使い続けて。
最近はパリへ入ってから、ピーター・リンバーグなど、それなりにファッションフォトでは歴史に残るだろうという人を使って10年ぐらいになる中で、うちがどういうふうなやり方しても、やり方では絶対コピーになっちゃうと思った。
要するにファッションメーカーが自分のところのカタログをつくっていることになる。

だから、うちではつくらないというひとつのやり方をして、田原さんがつくっちゃって、田原さんの写真集の中の着ている服がたまたまうちの服だ、みたいな、そういうのが一番強くて勝てるだろうと、ストーリーづくりとしてはそれを狙ってましたね。
ファッションカメラマンを使って、カタログづくりをやったらば、どうやっても、やり方としての亜流になるから。
いまや日本の売れているメーカーはみんなそれをやってますから。
カタログを、結構売れてるカメラマンを使って、それなりのものをつくり始めているという時代だから。
いまそんなことをできるのは日本のメーカーだけでしょう。

 

なぜアーティストか3

ヨウジヤマモト メタファー11 田原桂一ベルナール・ラマルシュ=ヴァデル
1981-1982年秋冬

「METAPHORE(メタファー)」より

 

田原桂一

だけですね。
フランスなんていうのは、ああいうふうなカタログというのは、どうしてもみんな、見たら「いい」と言うんですよね。
「すごい、すごい」なんてね。
実際に自分がつくる側になってきたら、やれ服がみえないとか、ディテールがどうのこうのとかということになっちゃうわけなんで、実際にはできない。

山本耀司

日本だけです。

友松美幸

フランスの美術評論家が、写真家と仕事をしたときのクライアントとの関係というんで、ヨウジ・ヤマモトとケイイチ・タハラのような関係というのは、まず絶対あり得ないということを書いていたんですね。
それだけの決断をするクライアントがあちらにはいないと。

山本耀司

そこを書いてください(笑)。

田原桂一

たとえば本をつくるといっても、出版社が制限をいろいろ出してくるわけですね。
でも、いままでやってきたのは、そういう意味では、制約って全然ないですね。
何枚に増やそうが、カラーを使おうが。

1985年12月12日

友松美幸(ともまつ みゆき):翻訳家。パリ在住。

METAPHORE(メタファー)

  • 発行日 :1986年12月24日
  • 著者  :田原桂一
  • テキスト:カトリーヌ・ミエ
  • 発行所 :株式会社求龍堂
  • ISBN4-7630-8619-7

田原桂一と山本耀司の対談 METAPHORE 2 に続く

 

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