メンズモード 山本耀司のファッション進化論

山本耀司のファッション進化論から、今回はメンズモードを紹介します。
1986年のインタビューです。

 

メンズモード

ヨウジヤマモト067 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Nick Knight

 

それでは引用します。

編集部

わあ、ブスな男ばっかり。

山本耀司

いかにも百姓の次男三男が、ナントカ祭で思い切りおしゃれしたって感じ、出てるでしょう。

編集部

Yohji Yamamoto pour homme の春夏カタログは、田舎もん特集!

山本耀司

「かっこいい」って言い方に疲れてきたから。
お父さんのおさがりかなんか、サイズの合わない背広着て、町へ繰り出して、飲んで騒いで、着替える瞬間、ため息つく男のかわいさ、ダサイ男が突然気取りすますおかしさを出したかった。
レーヨンの特殊紡績でくたびれたウールの感じを作って、衿も基本形で、高い三つボタン。
磨き上げたべいごまみたいに、ちょっと新しい感じでくたびれた良さを、感覚の鋭い人たちはわかっています。

 

ヨーロッパの覇権主義

ヨウジヤマモト107 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Nick Knight

 

編集部

同じ晴れ着でも、はやりのタキシードとはだいぶ違う。

山本耀司

タキシードは、西洋人が体型を誇示するための服。
外国人がらみのパーティに行くと、驚愕としますね。
もともと男物の基本は、サヴィル・ロー・ストリート周辺で完成されたダンディズム。
紳士の身だしなみ、常識美を形にしたものです。
だからメンズモードを語るとき、ヨーロッパの覇権主義に裏打ちされた服であることにふれないわけにはいかない。

 

ボヘミアン志向

ヨウジヤマモト108 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Nick Knight

 

編集部

それでアウトサイダーの耀司さんとしては、どうくずすか。

山本耀司

くずす、こわすというより、内側から溶かすほうがいい。
男がアウトサイダーでいるのは、大変なことです。
まず親がホワイトカラーを望むし、結婚すれば奥さんが、立派に見える服を着せたがる。
環境すべてと闘わなければならない。
身のまわりを傷つけるのがつらくて、しかたなくグレーの背広を着ている男たちがいることを、僕は知っています。
そういう等身大の優しさが世界を支えていることも。
だからアウトサイダーとコモンセンスの中間、ホワイトカラーとブルーカラーの中間の服を作りたかった。
漫画っぽく、両方がエヘヘ・・・と笑えるような。

編集部

胸の刺繍見たら、笑ってしまうわ。

山本耀司

エンブレムを花火にした。
中国の労働者が定年退職するとき、大きな花飾りをつけて写真を撮るそうです。
そんな気分でシャツに花プリントしたり。
晴れがましさには、お上にほめられるという意識がつきまとう。
ばかばかしいねって感じ。

編集部

勝手に自分で晴れがましくしちゃう。

山本耀司

うん、ざまあみろって。
何の権利があって偉そうにほめたり、勲章をやったりできるんだ、と思ってる。

編集部

ウフフ、また犬の遠吠えしてる。

山本耀司

ほんと。
でも男が着るものに熱心になると必ず権威主義に近づく。
今どこでも紳士服売り場は、フォーマルウェアが伸びています。
僕はメンズモードが華やかになればなるほど自由に、ボヘミアン志向になってほしいと思う。

 

着てもらわなければ意味がない

ヨウジヤマモト109 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Nick Knight

 

編集部

そんなに重要な服なのに、どうしてコレクションや展示会がパリだけなの?

山本耀司

義務の多いブランドにしたくないかです。
東京で展示会をすると、この商品で食べていかなければならない店が出てきます。
すると、このシャツのサイズが欲しい、色違いが欲しいと、際限がなくなる。
マーチャンダイジングしないで、このシーズンに言いたいことだけ言えるブランドを1つ残しておかないと。

編集部

そうなの。
ただ気取ってるのかと思ってた。

山本耀司

気取らせてください。
市場で戦う商品にすると、責任を背負い込まなければならないから。
ブランドを持っているデザイナーは、ほとんどそのわなにはまってしまった。
はたと気づいたときは、もう戻れない。

編集部

pour homme は売れなくてもいいと。

山本耀司

とんでもない。
売れてコミュニケーションですから。
直営店に置くだけしか作っていないけれど、それは売れなければ困る。
着てもらわなければ意味がない。

 

ブランドの飽和点

ヨウジヤマモト110 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Nick Knight

 

編集部

パリでは?

山本耀司

コレクションをすると、雑誌に載るでしょう。
僕が何をしているか、どういう気分なのかが、明示される。
雑誌の役割は、とても大切だと思っています。
着るための服なのだから、公表する以上、御展開が必要だということです。

編集部

コレクションの責任を果たす。

山本耀司

ただし、この商品はめちゃ高くなるのもあって、競争力はないですね。

編集部

他のメンズブランドは?

山本耀司

1つのブランドには、飽和点があって、そこに届くまでは伸びるけれど、越すと悩みになる。
ふつうその飽和点は誰にでもわかるけれど、メンズの場合、ブームでマーケットが膨張しすぎてわからなくなっている。
ぴんと張りつめた木綿糸のようなものです。
いつ切れるかわからない。

編集部

成功した経営者の悩みでしょか。

山本耀司

成功したなんて思っていませんよ。
切れてもともとって気分があるから、つい冗談ぽい服を作ってしまう。

他の「山本耀司のファッション進化論」は、以下を参考にしてください。