男の正装 山本耀司のファッション進化論

山本耀司のファッション進化論から、今日のテーマは男の正装です。
過激な発言が、飛び出しそうです。

 

男の正装

ヨウジヤマモト128 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

  • Photographs : Kenji Toma
  • Hair : Masanao Nomoto(Seints)
  • Model : Bill Blake

それでは引用します。

編集部

男のフォーマルウェア。
いかにも耀司さんの嫌いそうなテーマですねえ。

山本耀司

ええ、フォーマルな席には、なるべく出たくない。
正装とか礼装とか、人間に正式になれとは、どういうことなのか。
成功した人、権威ある人に合わせるやり方としか思えない。
そういう服着て、敗北感ないのかな。

編集部

若い男の人たち、タキシード大好きみたい。
パーティ用に。

山本耀司

彼ら、過保護だから。

編集部

えっ、どういう意味?

山本耀司

”過程がとぶ”というのが、過保護の端的な表われ。
人生、仕事、すべて過程に楽しみがある。
意気投合したり、励まし合ったり、傷つけ合ったり、やっている最中が大事で結果はどうでもいい。
過保護人間は、途中を抜かしてパーティが大事。
つまり表方。
”あちら側の人たち”なんです。

編集部

耀司さんは裏方、と言いたいんでしょう。

山本耀司

そのほうが人生おもしろいし、好みに合うから。
もの作る人は、なぜ作るの、ときかれても、それしか説明できないんです。
で、パーティの理由を完成させた人たちは、パーティなんかどうでもいい。
出てこない。

編集部

表方が出てくる。

山本耀司

”あちら側の人たち”は、人生を劇場にたとえると観客。
生まれてこのかた生活、金銭、人間関係の苦労をしたことがない。
こういう本読みました、映画見ました、よかった。
疑似体験してわかったような気分になるだけ。
根源的な疑問がない。
心を平和に保つことに慣れて、気持ちが豚になっている。
”こっち側の人たち”は、ねたと直接かかわって生きている。
平和ではいられない。
何かの主人公であるということは、常に心が戦争状態。
過保護人間には無理です。

 

その気持ちが悲しいですね

ヨウジヤマモト129 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

そのくせ主人公になりたい。
だからパーティ。

山本耀司

もともとこっち側の人間が、勘違いして文化人になって、あっち側とつきあいはじめる。
若手デザイナーの中には、芸者しているうちに有名になるのがいたりして。

編集部

耀司さん、若い人に嫌われるよ。

山本耀司

若いやつらに、おまえ過保護だからだめなんだと言っても、なぜ過保護か気づかない。
わかるわかると言うよりも、しかる言葉のほうがいい。
理解してくれる、渋いおじさんじゃだめ。
いやな野郎だけど、いつか、あ、こういうことかとわかってくれればいい。
だから言わせてもらえば、いちばん卑しいのは、服装で目立とうとする。
その気持ちが悲しいですね。

 

相手をたたえる気持ちならフォーマルできる

ヨウジヤマモト130 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

パーティに行っても楽しめないでしょう。

山本耀司

対等に引き下げられる。
”格”の争いの中におとしめられるのも、いやです。

編集部

どうしても出席せざるをえない場合は?

山本耀司

フランスの文化大臣に招待された、なんてときは困ります。
欠席の説明がつかない。
失礼はあまり好きじゃないから。

編集部

そんなとき、何着たい?

山本耀司

できるだけ、いつもの格好で行きたい。
でも一度、友人の披露宴を忘れていて、ワークシャツ腕まくりして行ったら、政界財界の人だらけみたいな席で、すごい違和感。
目立っちゃいけないと思いました。
自分でフォーマルしていると思うのは、ゴルチエのコレクションにゴルチエの服を着ていくようなとき。
相手をたたえる気持ちならフォーマルできる。
僕だったら、その人が来てくれれば、どんな格好でもいいけど。

編集部

冠婚葬祭って、そうはいかないのよね。

山本耀司

冠婚葬祭がどんなにくだらないものか、青春している人はわかるでしょう。
(中略)
結婚式は、親や親類のため。
好きなら勝手にくっつけばいい。
若いくせにコマーシャリズムに完全に拉致されて、だらしないんじゃないか。

 

フォーマルは最終的に”顔”です

ヨウジヤマモト131 ニック・ナイトハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

という立場でフォーマルを作ると?

山本耀司

タキシードをからかう。
モーニングをからかう。
ネクタイをからかう。
モーニングカットの上着の下にコットンのパンツをはくとか。
過激にならないで、ちょっと感じる人が見るとアヘッとなるような。
相手が、たちの悪くない冗談と思ってくれる範囲。
それから借り着みたいな服。
上着だけ借りて、ばれちゃってるフォーマルウェア大好きです。

編集部

2番目の服ですね。

山本耀司

田舎者です、こういうところは場なれしていません。
そういう人のほうが今、もてる。
人が寄ってくる。
フォーマルの着方が上手い人は不幸な顔してます。
ほんとうはスターなの、でも誰も来ない。

編集部

今日は手厳しいのね。
この服4点とも田舎っぽくて、かわいい。

山本耀司

今度のコレクションは、もっと田舎者。
映画なんかで割と好きなプロットは、アイダホとかテキサスの警官が、ニューヨークに犯人を追ってくる。
テンガロンハットやカウボーイブーツをからかわれても堂々として、おれはダンディだっていばってる。

編集部

卑屈にならないのがいい。

山本耀司

顔が卑しいから服装で決めたがる。
顔が立派だと何着ても、○○氏が来た、となる。
フォーマルは最終的に”顔”です。

他の「山本耀司のファッション進化論」は、以下を参考にしてください。