マーク・アスコリが山本耀司を語る

アート・ディレクターのマーク・アスコリの話は、楽しさに溢れています。
1984年から1996年のヨウジヤマモトのカッコよさの秘密に、納得しました。

 

マーク・アスコリ

マーク・アスコリ02マーク・アスコリ
「FASHION NEWS」より

 

マーク・アスコリ(Marc Ascoli)

1984年春夏から1996年春夏の期間、「ヨウジヤマモト」のファムとオムのショーや広告キャンペーン、カタログなどすべてのアート・ディレクションを担当。

当時、若手フォトグラファーだったマックス・ヴァデュカルニック・ナイトらを起用。

その他、

のイメージディレクションを担当。

の広告キャンペーンを手がける。

マーク・アスコリのインタビューが載っている雑誌は、

  • ファッションニュース 161号3月号増刊
    2011年3月1日発行
    発行所 株式会社INFASパブリケーションズ

です。

それでは、以下に引用します。

マーク・アスコリは1984年春夏から96年春夏の期間、16シーズンにわたり、アート・ディレクターとして「ヨウジヤマモト」のブランドイメージの構築に尽力した。
特に若手の才能発掘に手腕を振い、マーク・ヴァデュカル、ニック・ナイトやデヴィッド・シムズといった写真家を起用し、数多くの印象的なイメージヴィジュアルを作り上げている。

 

この世に存在しない人に服を着せているのです

ヨウジヤマモト388 1988年秋冬カタログ ニック・ナイトケープ ヨウジヤマモト 1988年秋冬
「Yohji Yamamoto」より
ISBN2-84323-704-1

 

  • 黒い革のケープ
    ヨウジヤマモト
    1988年秋冬
    撮影:ニック・ナイト

編集部

「ヨウジヤマモト」で仕事をすることになったきっかけを教えてください。

マーク・アスコリ

それには80年代初頭に端を発するモードの系譜を辿り直す必要がありますね。
パリのファッション界に日本人デザイナーたちが台頭してきたあの頃です。
「ヨウジヤマモト」の最初のショーを目にした時、これまでに一度も抱いたことのない新しい感情が私の胸に込み上げてきました。
間もなくして「一緒に働いて欲しい」とヨウジから連絡があり、ほんの数分話し合っただけで彼にとても親しみを感じました。
また、互いのコンセプトが似ていると感じました。
それは千載一遇の出会いだったのです。
東京に招かれた時に、彼の仕事ぶりと彼のチームを見て「このプロジェクトはデザインとファッションの世界に新たな礎を築くだろう」と確信しました。

編集部

当時の、具体的な仕事内容を教えてください。

マーク・アスコリ

私のアート・ディレクターとしての役割は、私とヨウジの独特な関係の上で成り立っているのです。
私の仕事はいくつかのセクションに分けられました。
まず最初に彼のコンセプトを理解すること。
ヨウジは出会って間もなく「僕はこの世に存在しない人に服を着せているのです」と教えてくれました。
このコンセプトを深く理解することこそ、私が尽力したことなのです。
ショーでは、独特な顔つきをしたモデルのキャスティングを実現するために私たちチームは一丸となって働きました。
その頃、今までになかったモデルの新しい方向性を打ち出し、そのルックスに新たなエスプリを吹き込むために髪型やメイクを研究していました。
才能溢れるアーティストと出会ったのはコレクションを作り上げていく過程においてでした。
メイクアップアーティストでは、リンダ・メイソン、フランソワ・ナーズ、ステファン・マレ、リンダ・カンテロ、そしてヘアスタイリストは、ジュリアン・ディス、ユージン・ソレイマンなどを発掘したのです。

 

新しい才能を探し出して出会うことが重要な鍵

ヨウジヤマモト389 1988年春夏カタログ ニック・ナイトドレス ヨウジヤマモト 1988年春夏
「Yohji Yamamoto」より

 

  • 太ももに結び目のあるウールのドレス
    ヨウジヤマモト
    1988年春夏
    撮影:ニック・ナイト

 

マーク・アスコリ

次のステップは、カタログのイメージと広告のコンセプトを熟考すること。
そもそも私のコンセプトは「意表をついて驚かせること」。
このコンセプトのもとで行ったリサーチが私たちの資本となりました。
なぜなら突出した写真家を見つけ出すことによって、他の誰かの作業を真似ることのない、世界にたったひとつしかない「ヨウジヤマモト」というイメージを作り上げることが可能になったからです。
このプロセスで私は才能に溢れ、現在世界的に認められている数々の写真家を発掘しました。

編集部

どのようにしてテーマを決めていったのですか?

マーク・アスコリ

「探さなければ見つからない」という古いことわざがあります。
前述したようにリサーチ、つまり新しい才能を探し出して出会うことが重要な鍵。
そしてその才能をぐんぐん引き出す。
彼らがどのように共鳴しどのように考えるのかを理解して、その才能をヨウジの世界に浸透させるのです。
私の仕事は映画のワンシーンのような出会いの連続から成り立っています。
たとえば、マックス・ヴァデュカル、パオロ・ロヴェルシ、ニック・ナイト、デヴィッド・シムズ、彼らとの出会いは私の中でとても美しい思い出として今も輝いています。

編集部

ちょうど同じ頃、パリで「コム デ ギャルソン」も注目を集め始めました。
「コム デ ギャルソン」との差別化を意識しましたか?

マーク・アスコリ

そうですね。
確かにあの頃、ピーター・リンドバーグやスティーブン・マイゼルなど、すでにコラボレーションをしていた「コム デ ギャルソン」が私の前に立ちはだかりました。
大きなチャレンジでしたが、同時にとても刺激的なクリエイションの原動力でもあったのです。
刺激なしでは何も作れませんからね。
変化を与えるために、前述した数多くの写真家を発見したのです。
また音楽業界にいた有能なグラフィックデザイナーであるピーター・サヴィルとコラボレーションをしたり、同じくグラフィックデザイナーのM/Mを発掘したりしました。
つまり私の役割は化学反応を起こし刺激を与え創造することなのです。

 

たかが服、されど服

ヨウジヤマモト390 1988年春夏カタログ ニック・ナイト帽子 ヨウジヤマモト 1988年春夏
「Yohji Yamamoto」より

 

  • 花の形の大きなブリムの白い帽子
    ヨウジヤマモト
    1988年春夏
    撮影:ニック・ナイト

編集部

特に印象的だった仕事について教えてください。

マーク・アスコリ

約10年間に及ぶヨウジとのコラボレーションを通して優れた写真家を発見し、ともに働くことができたことは幸運でした。
とりわけニック・ナイトとはとても実りの多い仕事ができましたね。
モノクロを進化させ、「テクノカラー」と呼ばれる革新的な技法を用いることで私たちはアイコニックなイメージを定着させました。
豊かで優美な想像の世界は、何度も濃密な出会いと発見を重ねた成果なのです。

編集部

「ヨウジヤマモト」のコレクションの魅力は?

マーク・アスコリ

ヨウジのコレクションには特色があります。
それはヨウジの「たかが服、されど服」という言葉に集約されますね。
ヨウジは服はもちろんのこと、身体の存在感を作りあげること。
一挙手一投足にも全身全霊を注いでいました。
それが彼の哲学であり、そこに詩情と冷酷さが混ざり合っているのです。
これが唯一無二な味を醸し出しています。

編集部

仕事を進めていく中で印象的だったことは何ですか?

マーク・アスコリ

ヨウジとは数えきれないほどの思い出があります。
10年以上をともに仕事をした歳月は、私の学校であり、経験であり、また数々の出会いをもたらしてくれました。

編集部

耀司さんと長年仕事をともにされました。
彼と共通点があるとしたらどこだと思いますか?

マーク・アスコリ

発見する喜び、好奇心、驚きたいという欲望。
そして何よりも感情を表現したいという欲望。

編集部

最近の「ヨウジヤマモト」のコレクションは見ていますか?

マーク・アスコリ

ヨウジのコレクションは定期的に見に行っています。
超消費社会に侵略され変わり果てたファッション界で彼のコレクションで我々が目にしているのは洋服だけではなくヨウジ自身、彼そのものでもあるんです。
毅然として決して変わらない彼のコレクションはなんと感動的なのでしょう。

翻訳:鈴木なつみ

 

「クリエイターが山本耀司を語る」は、以下も参考にしてください。