男と女 山本耀司のファッション進化論

以前紹介した、「山本耀司のファッション進化論」。
出版されることはないでしょうから、その内容を紹介します。

 

男と女

ヨウジヤマモト097ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs by Kenji Tohma

 

今回は、「男と女」と題されたインタビューを引用します。

編集部

女物と男物の違いは何ですか?
サイズや機能を別にして。

山本耀司

女物を作るときは、一定のねらい、イメージ、光景なりが向こうにあって、それを眺めながらつかまえに行くという感じですね。
男物の場合は、眺めるべき男像がない。
逆に眺められる側でデザインしている。
自分が服という窓を通して世の中を眺めているといってもいい。

編集部

女物のような距離がない、ということ?

山本耀司

ええ、今感じているイライラとか、世の中に対する考えを表わすんだったら、こういう服着るな、と。
自分のポジションと服が一致している。

編集部

そのポジションというのは?

山本耀司

一言でいうと、ひねくれ者。
これは変えようがないですね。
一般にいう男のポジション、正当なルートにいなかったから。
いい男、やさ男を脇から見てひねくれていた。

編集部

ウフフ。自分に素直に服を作ると、ひねくれた服になるわけね。

山本耀司

うん、ひねくれている自分を否定も肯定もしないで、ありのままに出している。
落ち込んでいるときは、自分のポジションが風狂とか単なるスタイルに思えていやになるけど、服を作ることは攻めの表現だから、これでもかって、自分を出さなきゃならない。

編集部

すると、どうしたって強く、たくましいという一般的な男らしさの路線をはずれる。

山本耀司

並みじゃない男がいい男を見て、どうせおれにはできないという劣等感と、できなくていいんだという誇りを持ちつつ、指をくわえている感じ。
すごくわかるし、そういう葛藤のある男のほうがおもしろいと思う。

 

春夏の服

ヨウジヤマモト098ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs by Kenji Tohma

 

編集部

それで、この春夏の服は、優しくて、キュートなのね。
カットワークのジャケットとか、花プリントのシャツとか。

山本耀司

ダサイ男たちに「ねっ」とか「なっ」とか言いたいわけ。
「だぞっ」て言うんじゃなくて。
同じダメ男どうしに通じる心理のカード遊びかな。

編集部

切り札は?

山本耀司

(略、コピーが切れていました。)ところに熱中する、浪費こそが男の本質だと思うから、ボタン穴とかポケットとか、どうでもいい部分にこだわって作ってます。
りんごでいうと、皮と芯はいちばん近い。
表面の照れ、虚勢、寂しがり、みんな芯の深い部分につながっている。
キャリア、年齢、常識で培われた白い実の部分は、重要じゃない。

 

上から押しつけられた男らしさ

ヨウジヤマモト099ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs by Kenji Tohma

 

編集部

普通はこれ着るといい男に見えるぞっ、て作るのよね。

山本耀司

僕は、何々風に見える服って大嫌いだから。
何風でもなくて、いかがわしいほうがいい。
それにいわゆる男らしさ、女らしさって、管理しやすいように作られたものでしょう。
上から押しつけられた男らしさなんか拒否するって気持ちもある。 

編集部

それが全部だったりして。

山本耀司

ほんとう。
男らしさが苦痛でなかったはずはないんだから。

編集部

戦争には行かされるし。

山本耀司

僕はすべてのファシズムが嫌い、権威が嫌い。
偉そうなのも大嫌い。
権威のない服を作るのが課題なんです。

 

ヨウジヤマモト100ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs by Kenji Tohma

 

編集部

もともと耀司さんは、ヨーロッパの支配者階級の美意識や女らしさの固定観念を破ることから出発したわけだから、男物も女物も基本的な姿勢は変わっていませんね。

山本耀司

権威を求める女の服って、もっといやです。
いい女に見えるとか、お嬢さまに見れるとか。
リクルートファッションて何?
有能そうに見せて、おじさんをひっかける服じゃないか。
ゴルチエが言っていたけど、女が自分を有能に思っている姿、形は最悪だって。
僕もそう思う。

編集部

そんなにいやがらなくても・・・。
がんばってるんだから。

山本耀司

がんばる方向を間違えてるんじゃないかな。
このごろ女の人がかさかさしちゃって、少しも魅力的に見えない。

編集部

どんなふうになってほしいの?

山本耀司

大江健三郎さんの「いかに木を殺すか」の描写で、高熱で寝込んでいる子どもに、
母親が「死んでも惧れることはない、すぐにもう一度あなたを産んであげれるよ」って言うの。
イメージの上でも、母性の意志の上でも、すごい表現でしょう。
男はいつも帰りたいんだ。
もともと出てきたくなかったんだから。

編集部

そんな根源的な包容力や優しさがあって、しかも美意識にかなう女性なんて、一人に求めるのは無理です。

山本耀司

無理だとわかっています。

編集部

ずるいなあ。
でも、女性にだって「ねっ」とか「なっ」とか言いたいんでしょう?

山本耀司

もちろん。
ただし男性の気持ちは手に取るようにわかるけれど、女性の場合は、コレクションのたびに賭けしてる感じ。
犬の遠ぼえが届くかなって。

編集部

この前は、とりはずしのバッスルで、フォーマルをからかっていたけど、あれは女性にとっても痛快でした。
この春夏は?

山本耀司

もう一度女の人を好きになるために、女のおかしさを探してみたい。
子どもと女の中間あたりでおかしさを見つけて、一緒に笑えたら、と思っています。

他の「山本耀司のファッション進化論」は、以下を参考にしてください。