山本耀司インタビュー by 佐山一郎 第2回

耀司さんは、20世紀の本当に偉大なファッションデザイナーでした。
21世紀になった今でも現役でいることに、涙がこぼれます。

 

ボディに布を置き始めたところから始まります

ヨウジヤマモト400 1988年秋冬カタログストール ヨウジヤマモト 1988年秋冬
「Yohji Yamamoto」より

ISBN2-84323-704-1

 

  • カーキ色のウールのストール
    ヨウジヤマモト
    1988年秋冬
    ”フレンチ・ヴォーグ”
    撮影:アーサー・エルゴート

「デザインと人 25 interviews by 佐山一郎」(ISBN978-4-12-390166-6)から、山本耀司へのインタビューを引用します。

佐山一郎

とても意外なことに、スタイル画をお描きにならないそうですね。

山本耀司

ここ10年くらい描いてないです。
いまはイマジネーションが物凄くて、絵に描けないです。

佐山一郎

状況が良いということですか。

山本耀司

ええ(笑)。
ボディ(人台)に布を置き始めたところから始まります。
そこ一点では贅沢な仕事ぶりで、シーチング(平織りの綿布)を使わずに、本物か、それに近い風合いの生地を使う場合がありますからおカネもかかります。
ワン・シーズン、1着もOKが出ないまま10メーターの生地を切り刻むパタンナーがいても、我慢しなきゃいけないわけですから。

佐山一郎

不安な自分を引きずったままパリ・コレにいかれることも?

山本耀司

開き直りか諦めか分からないけど、ま、こんなもんだろう、というのはありますね。

佐山一郎

日本人なりフランス人なりのカラダの変化はお感じになりますか。

山本耀司

日本人の女性は変わっていると思います。
男も変わってきている。
全体にワーッと縦に伸びている。

佐山一郎

やりにくいですか。

山本耀司

やりにくい面も出てきましたね。
昔、日本人のカラダは扁平だと言われましたね。
それがゴロッとしてきて、悪くいうと鳩胸ー出っ尻というか、風情がない。
パリ・コレに出てもらうモデルはだいたい177センチくらいで、全体にお餅を伸ばしたみたいにゆるやかですね。
黒人だけ異例にお尻が高いところにあるのでびっくりしますよ。
日本人は間違いなく足が長くなっています。
Gパンが似合うようになりましたよね。

 

クルマは何に乗っても誤解されますよね

ヨウジヤマモト401 1997年春夏カタログイブニング・ドレス ヨウジヤマモト 1997年春夏
「Yohji Yamamoto」より

 

  • 黒い絹サテンの非構築的なイブニング・ドレス
    ヨウジヤマモト
    1997年春夏
    撮影:パオロ・ロベルシ

佐山一郎

男性の場合、特に感じるのが、ここ10年ぐらいの靴のデザインの変化です。
トウが四角くなったり反ったりで、全体に分量アップ気味です。
もはや靴でしか主張ができないのかなと、ふと思ったりします。

山本耀司

爪とか耳とかの突端にお洒落が全部来ている。
いいことだと思いますけどね。
内ポケット、Vゾーンというふうに男物はこだわる細部が限られている。
いつまでこういうシャツと上着とズボンなのかな、僕が現役のうちは男は変わらないだろうな、と悩みます。
宇宙旅行的未来服はあまり考えられない。
靴ということで言うと、現代女性の歩き始める日常の靴ってのは男靴だという感覚があるんです。
スニーカーなんてのもそうです。
ヒールの靴には、段階を踏みながら移行する。
だからハイヒールをうまく歩ける人が少ない感じ、しますね。

佐山一郎

「工業製品」のデザインの現状についてはどうですか。

山本耀司

僕の場合はデザイナーという職業でいながら、デザインって言葉嫌いですからね。
日本語で言う「画策する」とか「謀る」みたいな感じがどうもね。
「悪だくみ」という語感に近い・・・・・。
グッドデザイン的なものって駄目なんですよ、ちょっと困ったように作ってあるものが好きだから。
クルマは何に乗っても誤解されますよね。
ただ、最近、軽自動車の面白いやつは面白いなあと思って見ていますけど。
どこか勝負どころが軽いからなんだろうと思う。
コストが軽いのか、何が軽いか分からないですけども、やりたいことやってるな、と。
もっとも、我々に来るクルマの仕事は、来たとしてもインテリアだけですからね。

 

切ることで決まっちゃいますから

ヨウジヤマモト402 1995年春夏カタログ マッツ・グスタフソンキモノ・ドレス ヨウジヤマモト 1995年春夏
「Yohji Yamamoto」より

 

  • 黒いトリコットとオレンジと金のブロケード(金襴)
    ヨウジヤマモト
    1995年春夏
    イラスト:マッツ・グスタフソン

佐山一郎

匿名前提で、全体もどうぞ、と仮に許されたらどうしますか。

山本耀司

いいですね。
アシンメトリー(不均整)なクルマを作りたい。

佐山一郎

クルマは無理でもデザイナーズ・ブランドの文脈でならと、椅子なり照明なりのID方面にチャレンジする若い人たちが徐々にですが、出てきています。

山本耀司

ファッションデザイナーがそういった意味で世に出やすいのは、大掛かりなシステムがいらないからでしょう。
自分で一室に閉じこもって友だちに手伝ってもらってサンプルを作って工場に行く。
小規模の量産をしている工場がまだありますから。
ただ、その場合は、工場と人材の確保がまず大変です。
そこをいかに家内工業化するかってことなんですけどね。

佐山一郎

既製服の場合は、縫製工場によって相当な力量差があるようですね(1)。

山本耀司

全然違う。
襟の表と裏があるでしょ。
表のほうを大きく作るんですよ。
職人さんが何枚かの生地を微妙にカッティングするんですよ。
これだけはなかなか2代目、3代目に教えられないみたいです。
切ることで決まっちゃいますから。

(1)〈縫製〉という言葉が一般に知られだしたのは村上春樹/安西水丸コンビによる「日出る国の工場」(平凡社刊・’87年)が刊行されたとき。
二人の取材先はDCブランド・ブームの渦中にある「コム デ ギャルソン」を請け負う縫製工場だった。

2000年6月13日

山本耀司へのインタビューを読んで、20世紀は遥か昔であると実感しました。

20世紀の成功体験は通用しない21世紀に、私たちは生きています。

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