ドレープ 山本耀司のファッション進化論

山本耀司のファッション進化論から、今回はドレープです。
ドレープは、技術的にも感覚的にも難しいところがあります。

 

ドレープ

ヨウジヤマモト112ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Yohji Yamamoto

 

  • Superassist : Takeshi Fujimoto (B.P.B.)
    Make-up & Hair : Katsumi Nagatsuka (Heads)
    Model : Anette

それでは引用します。

編集部

ドレープって、オートクチュールのイメージだと思いません?

山本耀司

一般的にはね。
でもドレープの範疇はすごく広いですよ。
原点は、体に布地を巻きつけること。
ギリシア、ローマ時代の服や民族衣装を見ればわかるように、すべる布地をいかに体のそげたところに密着させて服にするか。
その結果できたしわがもとだから、オートクチュールの服のように、人が着なくても、壁にかけた状態でも形になっているのは、ただの装飾。
花束を置くのと同じで、僕は何の魅力も感じません。

 

生きたドレープ

ヨウジヤマモト113ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Yohji Yamamoto

 

編集部

着ることによってのみ生まれるドレープでなければ・・・。

山本耀司

それ以外は、いやらしさ、わざとらしさ、おかしさをからかう場合。
もともとボディがなければ存在しない美しさなのだから。
スカーフを巻くときも同じでしょう。
スカーフの縦寸法の中心と後ろのネックポイントを合わせたほうがいいのか、左右対称にして結んだほうがいいのか。
布地に対する皮膚感、センスも、ドレープの重要な要素になる。
腰巻き1枚にしても、しょっちゅうずっこけてだらだらになる人と、腰のくぼみにぽっとのせて、うまく着る人がいたはず。

編集部

ひだがきれいで形くずれしないから、うまい人の巻き方をみんながまねする。

山本耀司

部族によって巻き方が違ったり。

編集部

そういうのが、生きたドレープなのね。

山本耀司

布地を巻きつけるときの、布と体の出会いがすべてだと思う。

編集部

それには布地の性質がわかっていないと。

山本耀司

そう。
布地を見極める。
どういう比重を持っているかを知る。
そして服作りの最初にして最後に行き着くところでもあるけれど、布地に自然に備わった性格を生かす。
ヌーベル・キュィジーヌみたいにね。

 

布地の重さ

ヨウジヤマモト114ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Yohji Yamamoto

 

編集部

かっちり作り上げたドレープは、素材を殺したうえに、ソースが重くて。

山本耀司

全部とは言わないけれど。
階級を誇示するための衣装や、結婚式みたいな儀式の衣装は、比重を無視したものが多い。
セミの羽のシルクといった、ただふわふわした布地を好きになれないのは、目的のために布地をゆがめていると思うから。

編集部

ある程度の重さが必要だということ?

山本耀司

重さと張り。
重さがあるから布地が垂れて体につく。
つかない部分は、布地の張りで立ったり下りたりするわけ。
でき上がった布地にけちをつけるとき、よくドレープ性がないねっていうんです。
これは、選ぶとき、さわるだけでなく、持ち上げて重さ、たるみぐあいを見なければわからない。

 

布地の張り

ヨウジヤマモト068 山本耀司ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Yohji Yamamoto

 

編集部

張りというのは?

山本耀司

糸の縦横の打ち込みぐあい。
布地の密度が高いほど、持ち上げるときの力が強い。
そのたて糸、よこ糸の動きを眺めながら魅力を発見していく。

 

山本耀司の立体裁断

ヨウジヤマモト115ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Yohji Yamamoto

 

編集部

布地ごとに違う魅力があるのね。
だからこの黒いジャージのドレスも、この素材でなければできない表情を持っている。
耀司さんがパターンを作ったんですって?

山本耀司

ええ、立体裁断でね。
普通は肩とかウエストとか、体のある部分を起点にして、火口から溶岩が流れ出るような形がドレープの美とされているけれど、僕は、体に当たって盛り上がる布地の美しさを出したいと思った。

編集部

きれい。
で、ボタンをはずせばただのきれ。

山本耀司

無責任な服です。

編集部

着るほうにとっては危険。
スカーフ以上にセンスをさらけ出すことになるから。

山本耀司

安心したらつまらない。
いつの時代もモードを引っぱっていくのは、危なさだと思う。
どこか危ない、セクシーという常識におさまらない感覚。

編集部

アンチモラルな部分。

山本耀司

そう、やくざな要素が魅力につながる。

 

ドレープの意識革命

ヨウジヤマモト116ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より
Photographs : Yohji Yamamoto

 

編集部

シャツとブルーマーズのつなぎみたいな服も、かなりはみ出してます。

山本耀司

危なさを通り越してナンセンス。
幼稚性とばかばかしさ・・・春夏のコンセプトそのものです。

編集部

素材は?

山本耀司

安っぽい水着用の合繊ジャージーで、前身頃から後ろ身頃まで1枚続き。

編集部

それで、おむつみたいなんだ。
かわいいな。

山本耀司

布地の、引っぱられたおもしろさがねらい。

編集部

ドレープの意識革命ね。
こんなにバリエーションがあるとは思わなかった。

山本耀司

僕がいちばんきれいだと思うのは、女の人がゆったりめの男のワイシャツを着たとき。
ひじにひだが走る。
胸にかげが走る。
デザイナーの計算をこえた、自然発生のドレープに見とれてしまう。
やはりドレープの美しさは、布地の持つ美しさに尽きるんじゃないか。

他の「山本耀司のファッション進化論」は、以下を参考にしてください。