ボタン 山本耀司のファッション進化論

山本耀司のファッション進化論は、今回が最終回です。
ボタンをテーマにした、とても深い話が展開します。

 

ボタン

ヨウジヤマモト152ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

  • Photographs by Yohji Yamamoto
  • Super assist : Takeshi Fujimoto (B.P.B)
  • Make-up & Hair : Katsumi Nagatsuka (Heads)
  • Model : Atsuko Miyama

それでは、引用します。

編集部

ボタンの役目って、何ですか?

山本耀司

ボタンをできるだけ使わない服が、僕らのサイドのグッドデザインという見方がありますね。
ボタンをいっぱい使ってとめれば簡単。
ボタンやファスナーが少ないほどプロフェッショナル。
で、必要最小限の仕事は何か。

編集部

・・・というと?

山本耀司

たとへばジャケットの場合、着て、前のボタンを一つかけると、そこにジャケットの重心がすっとかかる。
その瞬間に服が命を得て、ボタンは役目を終える。
扇のかなめと言い換えてもいいけど。
その位置を探すことが、服を生かしも殺しもします。
三つボタンでも六つボタンでも、ポイントになるのは一個だけ。
残りのボタンやカフスボタンは、単なる飾り。
様式美にすぎません。
ついでに言うと、ボタンをはずしたとき、身頃が少し脇にいくはず。
しめてもはずしても同じ服は、どこかが間違っています。

 

みぞおちの指がいちばん入るところ

ヨウジヤマモト153ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

そのポイントはだいたいどの辺ですか?

山本耀司

服によって違いますが、最大公約数で言ってしまうと、みぞおちの、指がいちばん入るところ。

編集部

いっぱいボタンのあるシャツの場合は?

山本耀司

シャツでも、そこを起点に割り算ができているか、ダブルなら、そこを仮定してボタンをずらしているか、ということです。

編集部

ボタンが決まらないと・・・。

山本耀司

あいまいな服になります。
基本を押さえたうえで役目のないおもしろさを発展させるならいいけれど、基本がいいかげんだと、素人が見ても遊びだけの上っ面とわかってしまう。

編集部

ジャケットを買うとき、よく気をつけなきゃ。
ところで、この写真、左右(1枚目と2枚目)とも同じ服ですが、二個のボタンはどれが基本で、どれが遊びなのかしら?

山本耀司

両方とも基本です。
同じ服がボタンの効果で、シングルとダブルの二通りに着られる。
扇の要が二つあるというわけ。
役目も二つ果たしています。
とめる機能とシルエットをつくる機能。
ことに左( 2枚目)の写真は、ボタンが布の流れを止めているのがわかるでしょう。
ボタンは布地の句読点ともいえますね。

 

ボタンの色と形と大きさと厚み

ヨウジヤマモト154ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

この茶色のワンピースにおけるボタンの役割は?

山本耀司

本来シルエットをつくるのにボタンはいらないんですが、これはボタンでシルエットをつくっています。
伸縮性のある布地だから、一個はずすごとにシルエットが変わる。

編集部

すごいな。
ボタンの一つ一つが機能と装飾性をあわせ持っている・・・。
色と形は?

山本耀司

色は、布地に合わせて染めないほうがいいですね。
黒と白は問題ないけれど、素材が違うからどうしても布地の持つ色と違って不純な色になります。
形は、丸が使いやすい。
丸以外のものは物語をしゃべるから、点であるという役割をはみ出してしまう。

編集部

大きさと厚みは?

山本耀司

布地や服の性格との関連で一概にはいえません。
ボタンの力がごつくほしいときと、さらっと薄べったくほしいときがありますから。
靴と靴ひもの関係に似ているかな。

 

決定的にセンスがものをいう

ヨウジヤマモト155ハイファッション「山本耀司のファッション進化論」より

 

編集部

選ぶときの決め手は?

山本耀司

センス。
ボタンとポケットの選び方、置き方は、決定的にセンスがものをいいます。
パターンナーを見ていても、いかに多感であるか、戦場を体験しているか、がすぐわかる。

編集部

ボタンにしようか、ファスナーにしようか、迷うことはありませんか?

山本耀司

ほとんどありません。
役割が違いますから。
ボタンは布地や力を集めて、よどませて、また解放するけれど、ファスナーは流れを断ち切ってしまう。
使いようによっては強いモダニズムを表現しますが、具体的すぎて下品になることが多い。
ボタンは、布地をつまむ指の代わりみたいな気がします。
だからさわった指先の快さって大切ですね。
よくサスペンスもので、上着のボタンをはずして拳銃を抜くでしょう。
はずすときの快感って、誰にでもあるんじゃないですか。
脱ぐ、着るの色気もボタンにかかっています。

編集部

左(4枚目の写真)のジャケットとパンツ、ボタン穴がファスナーになってる・・・。

山本耀司

これはメンズだから。
男の人はディテールに凝るでしょう。
ボタン穴がしまるんだぞって、遊ばせてやったわけ。
これは、ひたすら遊びの役目を果たしています。

他の「山本耀司のファッション進化論」は、以下を参考にしてください。