山本耀司へのインタビュー ブルータス編

珍しく、雑誌「ブルータス」に山本耀司へのインタビューが載っていました。
今回は山本耀司が、メンズについて語ります。

 

アウトサイダーな男たちの服

山本耀司452山本耀司
「BRUTUS 855 2017年10月1日号」より

 

  • 山本耀司
    撮影:Masaru Tatsuki

「BRUTUS 855 2017年10月1日号」より、山本耀司の言葉のみを以下に引用します。

山本耀司

僕がパリに出た直後ぐらいに、「ワイズやヨウジヤマモトを着ている女性に男性は声をかけにくい」ってよく言われたんです。
強く見えるし、怖く見えるってね。
だったら、その女性の隣に立てる男の服を作ってやろうと思ったのがきっかけです。
その時に決めたのが、ビジネススーツじゃない男物の服。
ビジネスマンが着ないもの。
要するに、社会の真面目な本流から外れているアウトサイダーたちの服を作ろうと。

山本耀司

母親は、第二次世界大戦の戦争未亡人で、僕が物心ついた頃からずっと働いている印象しかない人でした。
猛烈に働く母を通して世の中を見ていたので、ものすごく社会にある不公平を感じていました。
その頃から、僕のアウトサイダー志向が芽生えたように思います。

山本耀司

(メンズの服を作り始めた時に)決めたのは、1サイズしかない既製服。
大きな人が着るとピタピタで、小柄な人が着るとブカブカ。
要するに、既製服なのに、サイズ展開しない。
例えば、うちのパンツは太いから、デブでも痩せでもウエストゴムや紐でギュッとすれば誰でも穿ける。
だから、リアルな話ですけど、在庫も残らない。

 

山本耀司がカッコいいと思うこと

ヨウジヤマモト453 Y's for menスーツ Y’s for men 1994年秋冬
「Yohji Yamamoto V&A」より
ISBN978-1-85177-627-6

 

  • スーツ
    Y’s for men
    1994年秋冬
    撮影:Ferdinando Scianna

山本耀司

僕は、男子たるもの、親からもらった容姿だけで勝負するとは何事かと思うところがありまして(笑)。
だから、コレクションでは、何かの職業に打ち込んでいる男たちをモデルに起用することが多くあります。
そうすると、僕が作った服と、着ている男の個性の激突が起こって、それが面白いんですよ。

山本耀司

ブランドを始めた当時は、主に、パリを中心とした欧米のファッション界が流行を決定していました。
そうすると、色や柄が豊富で溢れている中でどう目立つかということが一つ。
そしてこれは、レディースを立ち上げた時から決めていたんだけど、街の中で目立たない、人の目を邪魔しない服を作りたいと思っていたこと。
自然に、モノトーンや暗い色を選ぶことになったんだけど、パリコレに出たら海外のジャーナリストから、いろいろ理由をつけられてしまった。
西洋から見れば黒はタブーの色で、流儀に反していたからね。

山本耀司

ヨーロッパを旅するとよくノマド(遊牧民)とすれ違うんですよね。
彼らはとてもカッコいいんですよ。
お洒落の重ね着ではなくて、土地を移動するために、すべての服、つまり全財産を身に着けている姿がね。
実際に99年春夏メンズコレクションのテーマにもしたくらい魅力的な人たち。
僕には真似できないし、一生勝てないって思いますけど、僕自身も旅する時は、定番のジャケットの内ポケットにボーディングパス、書類、キャッシュの3つ、それを入れて手ぶらで動いてますね。

山本耀司

カッコいい服を簡単にいうと、力仕事するやつが似合う服。
僕は、高給ビジネスマンの姿よりも、制服を着て働いているガードマンのおじさんたちがカッコいいと思う。
それと、昔、VANの創設者の石津謙介さんに言われたことが印象に残っています。
「耀司さんは、絶対にこっちには来るなよ」って。
こっちとは、要するに大量生産ね。
VANの工場に見学に行ったら、当時すでにアウトポケットをじゃんじゃん作り出す機械があってびっくりした。
これを着て個性的になれって言われても無理だよなって。
もちろん、安く作れるけど、僕はそっちの世界に興味ないですね。

山本耀司

男のお洒落って細かいでしょう。
シャツとジャケットとパンツしかないからね。
襟幅とか、シャツの襟がどうとか。
ポケットの位置だとかすごく細かいでしょ。
そういう細かいディテールがもう、面倒くさくてしょうがない(笑)。
だから、布の分量を大事にするんです。
僕の服は、着た時にちょっとゆるいんで、着た人が何者かわからなくなる。
悪く言うといかがわしくなる。
すぐ職業がバレる格好じゃない。
それがカッコいいと思うんです。

 

自分が一番得意なことだけやっておこう

ヨウジヤマモト454服:ヨウジヤマモトプールオム 2005年
「100 CONTEMPORARY FASHION DESIGNERS」より
ISBN978-3-8365-5724-5

 

  • ヨウジヤマモトプールオム
    PHOTOGRAPHY : ALASDAIR MCLELLAN
    STYLING : OLIVIER RIZZO
    MODEL : REID
    2005年2月

山本耀司

ギャバジンは、メンズを始めた頃からずっと使っていますね。
特に、織物研究舎という会社の生地。
ここは、うちともう一社にしか作っていなくて、僕のために織ってくれた、”しわギャバジン”が好きです。
ちょっとふわっとしていて軽い。
縫うとずれちゃったりして扱いにくいんだけど、大好きですね。

山本耀司

生地探しの旅はとても面白くて、よく行きましたね。
雑な地図を持って、レンタカーでジャワ島1周とか、チュニジア1周とかね。
ひたすら走ってホテルの予約もなし。
現地の人たちが着ているものを作っている工場を探すんです。
一番、危なかったのは、北アフリカ。
車で砂漠と塩田地帯を走り続けていたら、なんと迷彩色のジープと機関銃を持った兵士の検問に出くわした。
実は、そこ、シリア国境だったんですよ。
俺は今日で終わりだなって思ったね。
結局、助かったんだけど、生地は見つからなくて。

山本耀司

一つだけ自慢話ね。
白シャツのボタンを開けてノータイで着るお洒落を流行らせたのは僕なんです。
昔は、男の白シャツには、ネクタイが当たり前でしたから。
実は、そのスタイルのもとは中国なんです。
中国で商社マンと一緒に生地探しの旅をしたんだけど、当時の中国は、まだ貧しくてお洒落をしちゃいけない時代でした。
その時の彼らが着ていたのはたった3色の人民服だった。
白、紺、カーキ。
それがすごく綺麗だったんです。
あれだけ多くの若者や子供が3色しか着ていない国なんて考えられない光景ですよ。
そこで僕が思ったのは、個性って何かなってこと。
人間は、自由すぎるとダメになるんじゃないかなって。
ある程度の制約がないと、自分の基準が消えるし、けじめがなくなるんじゃないかな。
軍服とか制服とかそういう規約、規則に縛られたものを着せられている時の方が、自分の個性を出そうとするでしょ。
兵隊さんも、学生さんもする。
それがすごいチャーミングで。
白シャツからネクタイを外してボタンを開けて着ることで、白シャツ姿に個性を与えてやろうと思ったんです。

山本耀司

4年ぐらい前に大ブレークしたのは、日本の袴をテーマにしたプリーツスカート。
爆発的に売れました。
いわゆるスカートのようなパンツを最近の若い男の子がたくさん穿くようになったよね。
自分の店の店内を見ると、男子と女子が入り交じっていて、ちょっと見では、性別がわからないことがあるんです。
お洒落な子はジェンダーレスになり始めていますね。
でも、ユニセックスとはちょっと違う。
女子力を持った男子。
僕の世代のカッコいい男性像とは、大きく違いますよ。

山本耀司

初めて、高田賢三さんを紹介された時の話。
同業の大先輩なんですけど、あった瞬間に「何か手伝うことありますか」って言いそうになっちゃった。
それはね、賢三さんのカリスマだと思った。
本物だけが持っているカリスマですね。

山本耀司

伊集院静の言葉ですけど、「人間は、病気や、災害や事故で死ぬんじゃない。寿命なんだ」と。
自決は残された人がひどく悲しむし、苦しむ。
なんで、気づいてあげられなかったんだろうって自分を責めることになるでしょ。
だから、そうなると寿命を待つしかない。
つまり、僕は、生かされてるんですよ。
どうせ生かされているならば、自分が一番得意なことだけやっておこうと。
それだけですね。

インタビューとテキスト:Shigeo Kanno

「BRUTUS 855 2017年10月1日号」より