山本耀司の逆境と挑戦 最終回

「山本耀司の逆境と挑戦」は、今回が最終回となりました。
ヨウジさんには、今後も素晴らしい服を作り続けて欲しいと思います。

 

名前を変えて、
東京ガールズコレクションの服を作ってみたい

山本耀司350 インタビュー山本耀司 Photo : Françoise Huguier
「Yohji Yamamoto」より
ISBN2-84323-704-1

 

  • LIBERTINES
    太田出版
    ISBN978-4-7783-1217-6

山本耀司へのインタビューは、2010年4月に行われました。

  • 文 :管付雅信

それでは、以下に引用します。

管付雅信

今後ヨウジヤマモトというブランドをご自身はどうしたいと思われていますか?

山本耀司

今までやってきたやり方を変える気はないんです。
異議申し立てをやりながら終わりたいと思っています。
ビジネスをする部隊は勝手にやってくれと。
ただそのビジネスをする部隊の基本的な思想は、裏方として俺も一言加えたい、と。
そういう関係が、僕は一番心地よいと思いますね。
娘の里美がちょっとカリスマ性があるんで、彼女がどれくらい大きくなれるか。
彼女はこれからが本当の戦いだと思います。
これまでは親の七光り。
Y’sはちょっと大人っぽいので、買えない若い子がLimi feuを買うという関係で来ましたけども。
彼女、幸か不幸か本格派志向なんですよ。
ちょうど彼女が中3から高校にかけて、僕がパリへ行く度に連れて行ってたんですね。
その頃のゴルチエコム デ ギャルソンを彼女は生で見ているんで。
今は本格派志向がみんな駄目なので、売れないですよね。
どっちかというとスタイリスト的な服のほうが売れるでしょう。
でも彼女は既に10年のキャリアですよ。
「10年でこの売り上げじゃあ、俺のときより全然遅いなぁ」と言ってるんですけど。
時代が時代ですからね。
今僕がやってみたいのは、知らん顔して、名前変えて東京ガールズコレクションの服を作ってみたいです(笑)。

管付雅信

それは大事件ですね!

山本耀司

最後に着る服ということばかり考えてやってきたこともあって、今は大量販店の服を作りたくて仕方がないんです。
素材と価格が限定された最低条件の中で、どれだけできるだろうか、みたいな。
それもデザイナーの実力の内だろうと思いますから。

管付雅信

それはそれで面白いと思います。
以前にカール・ラガーフェルドがH&Mでコラボをやったときに印象深いコメントをしていて、「デザインの質と服の値段は関係ない」と。
「服の値段をデザインの言いわけにしているデザイナーが多すぎる」と言っていて、それは名言だと思いました。

山本耀司

確かに。
要するにできたものがいくらに見える?の勝負ですからね。
だから300円でできた服を1万円で売る力があるかどうかです。
そこをやってみたいですよ。

 

思いきり愛の服と暴力的な服と

ヨウジヤマモト351 1997年春夏カタログ黒と白の絹ツイードのスーツ ヨウジヤマモト 1997年春夏
「Yohji Yamamoto」より

 

  • 黒い絹と白い絹で緩く織られたツイードのスーツ
    ヨウジヤマモト
    カタログ
    1997年春夏
    撮影:Paolo Roversi

管付雅信

山本耀司が手がける大量に売れる安い服というのも面白いと思います。

山本耀司

そうするには、計画とノウハウが要りますね。
ユニクロさんが随分時間を掛けて何回も失敗して今の成功があるように、やっぱりそう簡単にはできませんよね。
それはわかっています。
あそこは原料から作っていますからね。
綿から牧場と契約していたり。
それぐらいでやらないと。

管付雅信

先ほども異議申し立てという話が出ましたが、それでも山本さんのファッションのメインストリームに対する異議申し立てみたいな部分はずっと残って行くんでしょうね。
そういうアンチな姿勢と、通俗的なファッション・ビジネスにも惹かれてらっしゃる。
その振り子の幅が山本さんなのかなと思います。

山本耀司

そうですね。
これは北野武が言っていた名言なのですが、「なんであんな極端な映画作るの?」と聞いたら「”振り子の原理”だ」と。
「一方は愛に思いっきり振って、一方は暴力に思いきりバンと振る。それが面白い」と言ったんですよ。
そういうのを僕も服でやってもよいかなと。
思いきり愛の服と暴力的な服をね。

山本耀司先生は、装苑賞の審査員を長年やっていました。

私は山本耀司先生を、とても信頼できる審査員だったと思っています。

しかし山本耀司先生は、娘のことになると信頼できる審査員ではなくなります。

山本耀司先生も人の親なので、仕方ないことです。

私は「装苑賞でのヨウジ先生からのアドバイス」に書いたように、とてもありがたいアドバイスを山本耀司先生からいただきました。

最近私はヨウジヤマモトプールオムに対して、きびし目のコメントを書きました。

なぜかというと、山本耀司の能力からいえばもっといい服を作れるはずだからです。

私にとってヨウジヤマモトプールオムを買ったり着たりすることは、山本耀司との真剣勝負なのです。

本当は私はファッションデザイナーとして、山本耀司のライバルになりたかったのでした。

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