山本耀司の逆境と挑戦 第4回

今回の山本耀司は、日本について語ります。
山本耀司の目に2010年の日本はどう映り、2017年の現在はどう映っているのでしょうか?

 

インターナショナルなつもりなのに、
ときどき日本が足枷になる

山本耀司341 インタビュー山本耀司
「LIBERTINES」より

 

  • LIBERTINES
    太田出版
    ISBN978-4-7783-1217-6

山本耀司へのインタビューは、2010年4月に行われました。

  • 文 :管付雅信
  • 写真:田島一成(mild inc.)

それでは、以下に引用します。

管付雅信

好むと好まざるを度外視して、山本さんが日本のファッションを海外にリプレゼントしなきゃいけない役割を負いましたね。

山本耀司

勝手にそうさせられたんですよ。

管付雅信

それは、嬉しかったり困ったり?

山本耀司

僕はインターナショナルな題材で仕事をしているつもりなのに、なぜ俺自身の中に日本を感じるのだろうと。
ときどき足枷ですね。

管付雅信

4月1日のショウでも、もう一度日本と向き合おうと思われたわけですよね。

山本耀司

日本はいったいどこへ行っちゃうのだろう、中国などアジア諸国が伸びている中でどうなるのだろうと、最近よく思うんですよ。
日本にはまだアメリカの軍隊が駐留していて、果たしてこの国は独立国家かと。
その思いはガキの頃から持っていましたね。
日本人のプライドはどこにあると。
経済大国として成功して、一億総中流という幻想がありましたが、人件費だけ上がってしまって、made in Japanが高くなった。
そうすれば生産は安いところへスイッチされる。
だから外国人から「お前の服はなんでこんなに高いんだ」とよく言われる。
それは人件費だけじゃなくて、原価も高いからです。
織物も特殊な染めもすべてオリジナルだから。
それに海外に持っていくと流通費、関税がかかるから高い。
訊ねられる度に説明するのも面倒だから、「クリエーションだから」と答えるんです。
でも逆に、日本人は海外のブランドの服を高いと言わずに買っているのにね。

 

それを男の子がかわいいと言う

ヨウジヤマモト342 1992年秋冬ニット ヨウジヤマモト 1992年秋冬
「Yohji Yamamoto」より
ISBN2-84323-704-1

 

  • ニット
    ヨウジヤマモト
    1992年秋冬
    とても長い袖のアシンメトリー・リブジャージー

    撮影:Dominique Isserman
    ヴォーグ・フランス

管付雅信

欧米のファッション関係者が来日した際に、若者がヨウジやコム デ ギャルソンを着ていると知ると大変驚きますよね。
なぜ若い人がこんな高い服が買えるのか理解できないようですね。

山本耀司

四畳半風呂なしに住んで、デザイナーズブランドを着ている。
でもそれが生活の弾み、人生の楽しさがファッションだったという時代があったわけです。

管付雅信

そういうファッションにとって幸福な時代はまたやって来ますか?

山本耀司

うーん、難しいでしょう。
今の中国が30年前の日本にそっくりですね。
この間、香港でY-3のストアオープニングに参加したんですよ。
世話をしてくれたショップの中国人の女の子に「凄いスピードだね、中国は」と聞くと、ちょっと悲しい眼をして「早すぎる」と答えたんです。
” Too Fast ” と。
要するに基礎訓練なしに、いきなりトップ・ファッションに行ってるんですね。
それはそれで危険。
一方で今の日本は坂口安吾の『堕落論』のとおりになっているでしょう。
落ちるところまで落ちている。
見事に落ちている。

管付雅信

落ちたほうが良いのでしょうか?

山本耀司

最近そう思います。
それで初めて出直せるだろうと。
女の子の肌の露出具合なんて異常でしょう?
あんなカッコは昔は売春婦だけだったんだから。
こんなことをオジサンが言っても通じないでしょうが、女性は隠せば隠すほどセクシーなのに、全部見せるから全然セクシーじゃない。
まったくの逆効果です。
それを男の子がかわいいと言う。
余りにも安易すぎて、恋愛で言えば過程を省略していきなりセックスみたいな。
欲望の質が下落したんですね。
もはやオヤジの絶叫も通じない状態だ。

山本耀司は、「ヨウジヤマモトが高いのは原価が高いから」と言っています。

ヨウジヤマモトプールオムの1989年秋冬のジャケットは、ウールギャバジンの二重織りでした。

2005年秋冬のコートも、素晴らしい素材でできていました。

この時期までのヨウジヤマモトプールオムは、原価が高いのも納得できます。

現在のヨウジヤマモトプールオムの素材は、どうでしょうか?

よかった頃とくらべると、素材がペラペラしています。

少し紙のような風合いで、とても残念です。

そして「そうすれば生産は安いところへスイッチされる」という発言は、次の段階への伏線と取れてしまいます。

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