山本耀司の逆境と挑戦 第2回

「山本耀司の逆境と挑戦」というインタビュー記事は、これまでのインタビューとは趣が全く違います。
今回も山本耀司は、かなり深いところまで答えています。

 

僕の服は一種の反抗的クリエーション

山本耀司337 インタビュー山本耀司
「LIBERTINES」より

 

  • LIBERTINES
    太田出版
    ISBN978-4-7783-1217-6

山本耀司へのインタビューは、2010年4月に行われました。

  • 文 :管付雅信
  • 写真:田島一成(mild inc.)

それでは、以下に引用します。

管付雅信

山本さんは、欧米への拡大路線は間違ってなかったということですか?

山本耀司

僕の商品は、パリに出て来年で30周年になります。
でも、パリに進出して6〜7年経った頃から、欧米向けの輸出金額はほぼ横ばいで、伸びていない。
コレクション・ラインの服ですから、着こなしが難しいんです。
僕の服は一種の反抗的クリエーションなんです。
だからたくさん売れるわけがない。
僕はつねづね営業部に「お前ら毎年4億だな」と文句を言っていたんですね。
つまり海外の売り上げはずっと4億くらいで増えもしないが減りもしない。
前任者はそれを変えたかったんです。
前任者が特に伸ばしたいと考えたのはY’sライン。
コレクション・ラインは売るのが難しいから。
Y’sラインをミラノ、ニューヨークで展示会を行って卸の拡大を狙ったんですが、先ほどの支払いの問題などもあって、負担がどんどん膨らんでいった。
僕は、記者会見した10月9日の、半年ぐらい前から、我が社の経営はかなり危ないと気づいていたんですよ。
僕個人のものがいろいろ担保に入れられていると聞いて、「お、そこまできてるんだな。これはいっちゃうかもしれないな」と感じていましたね。
そのときは、「自分はいろいろやらせてもらったし、自分もやった気がするし。この辺が引きどきだから、いっそやめようか」と思ってたんですよ。
やめようと思う自分と、続けろと言う周りの中で、大いに悩みました。

 

僕個人がやめてしまうのは簡単です

ヨウジヤマモト334 シワ加工されたルーズコート 1984年秋冬コート ヨウジヤマモト 1984年秋冬
「Yohji Yamamoto」より
ISBN2-84323-704-1

 

  • シワ加工したルーズコート
    ヨウジヤマモト
    1984年秋冬
    撮影:Max Vadakul

管付雅信

やめようというのは、経営もデザインも両方ですか?

山本耀司

一番強力な選択として、完全引退も考えていました。
二番目に思ったのは、会社はなくして、ひとりになって、もしアディダスがY-3は続けると言ってくれたら、その監修とかで、のんびりしてもいいかなと。
要するに自分ひとりならばそんな気楽な方法もあると、いろいろ考えました。
でも、「ヨウジヤマモトの名に傷をつけるな」と名乗りを上げて、会社を残すよう提案してくれた企業もあったり、いろいろな話し合いがもたれて、10月9日の民事再生法の申請から、2ヶ月も経たない12月1日には新会社が設立されていた。
どうやったかは僕にはわかりませんが、かなりのアクロバットだったことはわかります。
つまりみんなが言わんとするのは、「ヨウジさん、仕事を続けてください」ということです。
だから、やめようと思っていた自分と、続けて欲しいという周りとの間で、僕は大いに悩んだんです。
僕個人がやめてしまうのは簡単です。
楽になるのも簡単です。
でもそれで良いのだろうかと。
俺のために人生の大半を使ってくれた社員。
その家族。
それからもの作りに付き合ってくれた工場の人たち。
縫製工場、機屋、染め工場。
そうした人たちを考えると、ひとりだけ自由になるのは勝手すぎるなと思ったんですよ。
僕がやめたら倒産する企業も出るかもしれない。
そうすると、made in Japanの数に影響が出るだろう。

管付雅信

それが、記者会見での「ブっ倒れるまで服を作りつづける」という言葉につながったわけですね。

山本耀司

そうですね。
高いレベルのクリエーション技術が日本からなくなる。
だから悩んだんです。

山本耀司の言葉には、「ヨウジヤマモトを着ている人たち」がありません。

山本耀司が仕事をやめてしまえば、ヨウジヤマモトを着ている人たちはとても困ります。

ヨウジヤマモトの販売員さんは、とても良くしてくれます。

山本耀司と私たちを繋いでくれているのが、販売員さんたちです。

山本耀司と有名人ではない私たちが、直につながる日は来るのでしょうか。

山本耀司の言葉の中に、「ヨウジヤマモトを着ている人たち」が加わる日は来るのでしょうか?

 

山本耀司の逆境と挑戦 第1回を読む

山本耀司の逆境と挑戦 第3回を読む

 

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