18世紀と19世紀の袖付けの不思議

「西洋服装史Ⅱ スタイルとディテイル」展を観て、ジャケットの袖付けに驚きました。     

 

袖付けについて

18世紀の袖付け01 ロココ・スタイル男性用スーツ(アビ・ア・ラ・フランセーズ) 1770-80年ころ
「FASHION 18世紀から現代まで」より
ISBN978-4-88783-282-4

 

  • 男性用スーツ(アビ・ア・ラ・フランセーズ)
    1770-80年ころ
    フランス
    アビ、ジレ、キュロットの三つ揃い
    ペール・ブルーの縞柄の絹タフタ
    花柄を織り出した縁飾り
    スリーブ・ラッフルはニードル・ポイント・レース

西洋服装史Ⅱ スタイルとディテイル」展で18〜19世紀の服を見ていたら、

  • 後ろ身頃のアームホールが大きくくられている
  • 背幅がとても狭い

袖付けをしている服が、数点ありました。

このような袖付けは、現代では「やってはいけない袖付け」として教えられます。

背幅が狭いと、腕を前方向に動かしにくくなるからです。

では年代ごとに、具体的に袖付けを見ていきましょう。

「西洋服装史Ⅱ」は写真撮影ができないため、私のスケッチをもとに進めます。

 

1.ロココ・スタイル(1730-1790年ころ)男性用

18世紀の袖付け02 ロココ・スタイルロココ・スタイルの男性服
左・前から見たところ 右・斜め後ろから見たところ

 

ロココ・スタイルの、男性用ジャケットです。

前から見ると狭い肩幅ですが、普通の袖付け(現代のジャケットの袖付け)に見えます。

しかし斜め後ろから見ると、後ろ身頃のアームホールが、大きくくられていることがわかります。

運動量を出すために、袖山の後ろ側が大きくなっています。

後ろ袖の上の方に、しわを描いたのがわかるでしょうか?

このしわのところに、歪みが大きく出ています。

しかし前から見ると、袖はきれいに下におりています。

 

2.ロココ・スタイル(1730-1790年ころ)女性用

18世紀の袖付け03 ロココ・スタイルロココ・スタイルの女性服
左・前から見たところ 右・斜め後ろから見たところ

 

ロココ・スタイルの、女性用ドレスの様子です。 

こちらも、前から見ると普通の袖付けです。

しかし、後ろ身頃のアームホールは大きくくられています。

下のスケッチも、御覧ください。 

 

18世紀の袖付け04 ロココ・スタイルロココ・スタイルの女性服
左・横から見たところ 右・後ろから見たところ

 

このロココ・スタイルの女性用のドレスは、後ろから見るとまるでラグランスリーブのようでした。

このスケッチのように、袖が後ろの衿ぐりまで続いていました。

ただこの袖付けは、現代のラグランスリーブとは違いました。

ラグランスリーブのような袖付けで、わざと袖を後ろに引っ張っているように見えました。

 

3.ヴィクトリア期(1900年ころ)ウエディングドレス

19世紀の袖付け05 ヴィクトリア期ヴィクトリア期のウエディングドレス
左・前から見たところ 右・後ろから見たところ

 

このスケッチは、ヴィクトリア期のウエディングドレスです。

後ろから見ると、背幅がとても狭いことがわかります。

以前、「ヴィクトリア期には、女性は動きにくい服を着せられていた。」という記述を読んだことがあります。

このウエディングドレスは、わざと動きにくい袖付けになっているようです。

コルセットだけではなく、服全体に動きにくい仕掛けがされていたように思えます。

 

4.バッスル・スタイル(1870-1890年ころ)女性用

19世紀の袖付け06 バッスル・スタイルバッスル・スタイルの女性服
左・前から見たところ 右・横から見たところ

 

このスケッチは、バッスル・スタイルの女性用ドレスです。

横から見たとき、袖山の後ろ側が後ろ身頃に引っ張られているのがわかるでしょうか?

現代の感覚でいうと、かなり無理をした袖付けです。

 

19世紀の袖付け07 バッスル・スタイルバッスル・スタイルの女性服
左・横から見たところ 右・斜め後ろから見たところ

 

こちらも、バッスル・スタイルの女性用ドレスのスケッチです。

マネキンの腕の線が、袖から薄っすらとわかります。

袖山の後ろが、腕からかなり離れて後ろ身頃に引っ張られています。

後ろ身頃のしわからもわかるように、背幅はとても小さく袖が後ろ身頃に引っ張られています。

 

袖付けについての推測

私は、服装史の専門家ではありません。

これからまとめることは、あくまで私の推測です。

「西洋服装史Ⅱ」を見て、袖付けについて私が考えたことを発表します。

  1. 袖が後ろ身頃に引っ張られることによって、胸が大きく開く
    鳩胸になり、立派に見える
  2. 運動する(動くこと)が美徳ではなかった
    服に運動量は必要なかった
  3. 美的感覚や価値観、女性像が現代とはまったく違う

1は技術的なことです。

2と3は価値観的なことです。

私は、このように推測しました。

20世紀になり、

が19世紀までの古い価値観を否定し、20世紀の価値観にあった服装の技術を確立したように思います。