ロシア・アバンギャルドと衣服デザイン

1917年のロシア革命の前夜、新しい芸術を模索する動きが、モスクワとペテルブルクを中心として次から次へとわき出していました。

 

ロシアの新しい芸術運動

ロシア・アバンギャルド01 ソニア・ドローネファッション・ドローイング ソニア・ドローネー 1922-1923年
「100 years of Fashion Illustration」より
ISBN978-1-85669-462-9

 

  • ファッション・ドローイング
    ソニア・ドローネー
    1922-1923年
    紙にグワッシュ

1917年のロシア革命の前夜、ロシアにはたくさんの芸術運動が起こりました。

モスクワやペテルブルク(現在のサンクトペテルブルク)を中心に、

  1. ネオ・プリミティヴィスム
    (1907年-1914年)
  2. 光線主義
    (1912年-1914年)
  3. 立体=未来派
    (1912年-1916年)
  4. シュプレマティスム
    (1915年-1920年代の超越主義)

などの前衛的な芸術運動が次々と起こりました。

やがて1920年代以降、これらの動きは構成主義へと収斂していきました。

 

ロシア・アバンギャルド

ロシア・アバンギャルド03 ソニア・ドローネファッション・ドローイング ソニア・ドローネー 1922-1923年
「100 years of Fashion Illustration」より

 

  • ファッション・ドローイング
    ソニア・ドローネー
    1922-1923年
    紙にグワッシュ

ロシア・アバンギャルドの重要な柱となる動きは、2つあります。

その2つとは、

  1. シュプレマティスム
    カジミール・マレーヴィッチが絵画の再現性を否定し、無対象を目指しました。
  2. 構成主義
    ウラジーミル・タトリンが、鉄板や木片によるレリーフを「構成」と呼んだのに始まります。
    現実の素材による、非現実的構成です。

ロシア・アバンギャルドは、以下のような独自性を持っていました。

  1. 未来派やキュビズムなどの芸術潮流とかかわっていました。
  2. ロシア特有の土着的な伝統から切り離して考えるわけにはいきません。
  3. 工業生産と結びつき、社会での実用性を目指しました。

ロシア・アバンギャルドは純粋芸術にとどまらず、

  • 建築
  • グラフィック
  • 舞台芸術
  • テキスタイル
  • 衣服デザイン

へと広がっていきました。

 

ソニア・ドローネー

ロシア・アバンギャルド04 ソニア・ドローネコート ソニア・ドローネー 1925年ころ
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より
ISBN978-3-8365-5719-1

 

  • コート
    ソニア・ドローネー
    1925年ころ
    ブラウンのウール全面に毛糸と絹糸で刺繍

ソニア・ドローネー

ロシアの画家、デザイナー

  • 1885年 ロシアに生まれる
  • 1905年 パリに移住
  • 1910年 画家ロベール・ドローネーと結婚
  • 1913年 「シミュルタネ(同時性)」のドレスを製作
  • 1917年 マドリードで「カーサ・ソニア」を開店
  • 1923年 リヨンの絹織物会社ビアンキニ・フェリエに”シミュルタネ”をデザイン
  • 1924年 パリにジャック・エイムと共同で「シミュルタネ」を開店
         (-1930年)
  • 1979年 死去

ソニア・ドローネーは1910年代前半には、抽象的な絵画表現を行なっていました。

のちに色彩を軸とした抽象画をはじめ、広く装飾芸術の分野で活躍します。

「シミュルタネ(同時性)」のドレスは、色彩と素材がまちまちな幾何学形態の布をはぎ合わせてつくられました。

ソニア・ドローネーは、流行のファッションをデザインするのではなく芸術表現の一つとして衣装を製作しました。

 

アレクサンドル・ロトチェンコ

ロシア・アバンギャルド05 アレクサンドル・ロトチェンコドレスのデザイン アレクサンドル・ロトチェンコ 1924年
「100 years of Fashion Illustration」より

 

  • ドレスのデザイン
    アレクサンドル・ロトチェンコ
    1924年
    紙にコラージュとインク

アレクサンドル・ロトチェンコ

  • 1891年 ロシアに生まれる
  • 1956年 死去

アレクサンドル・ロトチェンコは、構成主義のマルチアーティストでした。

ウラジーミル・タトリンに共鳴していたアレクサンドル・ロトチェンコは、いつも坊主頭にしていました。

有名な”生産主義の服”は、アレクサンドル・ロトチェンコがデザインいました。

”生産主義の服”は、アレクサンドル・ロトチェンコの妻であり、アーティストであるヴァルヴァラ・ステパーノヴァが

  • ウールとレザーを裁断
  • ミシンで縫って

仕立てました。

ヴァルヴァラ・ステパーノヴァは、

  • 舞台衣装
  • 舞台装置
  • パイロット
  • 潜水士

などのデザインをするようになりました。

ヴァルヴァラ・ステパーノヴァは構成主義の理念を、ドレス・デザインに最も具現化しています。

 

リュポフ・ポポーヴァ

1920年代のファッションイラストレーション05 リュボーフィ・ポポーワイラストレーション リュポフ・ポポーヴァ 1924年
「100 years of Fashion Illustration」より

 

  • イラストレーション
    リュポフ・ポポーヴァ

    ” Leto ” 1924年夏号の表紙
    コラージュとグワッシュ

リュポフ・ポポーヴァ

  • 1889年 ロシアに生まれる(4月24日)
  • 1923年 綿プリントのデザインを始める
  • 1924年 死去(5月25日)

リュポフ・ポポーヴァはパリに出て、

  • キュビズム
  • 立体=未来派

の影響を受けました。

リュポフ・ポポーヴァは、またシュプレマティスムにも接近しました。

1923年にリュポフ・ポポーヴァとヴァルヴァラ・ステパーノヴァはモスクワのプリント工場に出かけ、綿プリントのデザインを始めました。

芸術と現代の産業が結びつき、純粋芸術が生活の中の美へと変容していきました。

抽象的・幾何学的テキスタイル・デザインは、ロシア・アバンギャルドの精神が最も純粋に具現化しました。

抽象的・幾何学的テキスタイル・デザインは、

のプリントを受け継ぎ、現代のテイストを決定したと言っても過言ではありません。

 

参考文献

  • ファッションの世紀
    深井晃子署
    平凡社
    ISBN4-582-62034-5

20世紀のアートとファッションの関係は、以下も参考にしてください。