前回「ポップアートとペーパー・ドレス」を書きながら、アメリカのファッションデザイナーを取り上げたいと思いました。
今回は、ロイ・ホルストン・フローイックを取り上げます。
ロイ・ホルストン・フローイック
ロイ・ホルストン・フローイックとヴィルナ・リージ 1964年
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より
ISBN978-4-7661-2374-6
ロイ・ホルストン・フローイック(Roy Halston Frowick)
- 1932年 アイオワ州デモインで生まれる(4月23日)
- 1952年 シカゴに移る
シカゴ美術館付属美術大学の夜間部に入学
日中は百貨店で働く - 1957年 ニューヨークに渡り、帽子職人リリー・ダッシェのもとで働く
- 1958年 百貨店バーグドルフ・グッドマンの帽子デザイナーに就任
- 1966年 バーグドルフ・グッドマン内で、自身のブランドの服を販売する機会が与えられる
しかし、1年しか続かなかった - 1968年 ホルストン社を設立
帽子を販売
その年のうちに洋服も扱うようになる - 1972年 ブティックをオープン
- 1973年 ノートン・サイモン・インダストリーに買収される
- 1984年 チーフ・デザイナー職を解雇される
- 1986年 レブロンがホルストン社を買収
- 1990年 死去(3月26日)
シンプル
ジャンプスーツ ホルストン 1972年
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より
- ジャンプスーツ
ホルストン
1972年
ロイ・ホルストン・フローイックは、
- クレア・マッカーデルのカジュアルなシンプルさと着やすさ
- イヴ・サンローランの洗練
を融合させて服を作りました。
そしてロイ・ホルストン・フローイックは、それをさらに独自のデザインに変換しました。
ロイ・ホルストン・フローイックの服の哲学は、
- シンプルであること
- 気軽さ
でした。
この考えは、増え続ける働く女性たちのニーズにぴったりと合いました。
パンツ・スタイル
ライザ・ミネリ ホルストン
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より
- ライザ・ミネリ
ホルストンのデザインによるさりげなく洗練されたスーツ
1970年代は、まだ女性がパンツをはくことについて論争が起こる時代でした。
ロイ・ホルストン・フローイックは、
ズボンは女性たちにかつてない自由を与え、彼女らは自由の獲得をあきらめるつもりはないのだ。
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」p48より引用
と語っています。
ロイ・ホルストン・フローイックは、おしゃれの選択肢としてパンツ・スタイルをアメリカで奨めた最初のデザイナーのひとりでした。
バイアス・カット
パステル・コレクション ホルストン 1975年
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より
- パステル・コレクション
ホルストン
1975年
モデル:ナオミ・シムズ
ロイ・ホルストン・フローイックは、マドレーヌ・ヴィオネの作品が掲載された1930年代の雑誌を読むのが好きだったと言われています。
マドレーヌ・ヴィオネのバイアス・カット・ドレスの、控えめなエレガンスが好きでした。
ロイ・ホルストン・フローイックの服は、
- 柔らかで贅沢な布
- バイアス・カット
- 縫い目を極力使わない
- 留め具を極力使わない
ことで知られていました。
縫い目と留め具を極力使わないのは、シルエットのじゃまにならないようにするためでした。
ロイ・ホルストン・フローイックの言葉を、引用します。
バイアスはセクシーだと思う。
服の生地を布目に沿ってまっすぐに切ると、どこかありきたりな感じがする。
バイアスはなにか過激な感覚を与える。
夜になると自分のスイッチを入れたくなるだろう。
そんなときに、バイアスほどスイッチを入れた感覚にさせてくれる生地はない。
バイアスはソフトさに新たな次元を加えるのだ。
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」p49より引用
私にも、この感覚はよく分かります。
私は正バイアスも退屈に思え、角度を少しずらしていました。
しかし装苑賞のときこの少しずらしたバイアスを三宅一生先生に、「つまらない」と言われてしまいました。
まとめ
イブニング・ドレス ホルストン 1972年
「文化学園服飾博物館コレクション ヨーロピアン・モード」より
- イブニング・ドレス
ホルストン
1972年
絹ジャージーのドレス
ロイ・ホルストン・フローイックは、ライセンス・ビジネスを手広く展開しました。
結果、ブランドの価値が低下してしまいます。
またロイ・ホルストン・フローイックは、後年ドラッグに溺れます。
そして常軌を逸した破壊的な行動をとるようになり、解雇されてしまいます。
最後は、エイズによる合併症で亡くなります。
ファッションデザイナーとしての才能があっても、失敗する人はたくさんいます。
ロイ・ホルストン・フローイックも、そのひとりです。
ファッションデザイナーは、だいたい失敗します。