ポール・ケアホルム

デンマークには、ポール・ケアホルムのようなデザイナーもいます。
デンマークのデザイナーの、層の厚さを感じます。

 

ポール・ケアホルム

ポール・ケアホルム02ポール・ケアホルム
「北欧インテリア図鑑 ELLE DECOR NO.139 2015年 8月号別冊付録」より

 

ポール・ケアホルム(Poul Kjaerholm)

  • 1929年 デンマークのオスターヴゥローに生まれる(1月8日)
  • 1936年 北ユトランド半島のヤーイングに移住
  • 1948年 家具職人のグロンペックに弟子入り
  • 1950年 ハンス・ウェグナーの事務所に勤務
         デンマーク王立芸術アカデミーの夜間コースで家具デザインを学ぶ
  • 1951年 デンマーク王立芸術アカデミーの卒業制作としてPK25をデザイン
  • 1952年 フリッツ・ハンセン社に入社
  • 1953年 建築家のハンナと結婚
         デンマーク王立芸術アカデミーのエリック・ヘアロウ教授の事務所に勤務
  • 1955年 ポール・スウェンソン教授の事務所に勤務
         デンマーク工芸学校の家具デザイン科の助手として教鞭を執る
         並行してデンマーク王立芸術アカデミーでも教鞭を執る
         (-1976年)
  • 1957年 第11回ミラノトリエンナーレでグランプリを受賞
         デンマーク工芸家協会年度賞受賞
  • 1958年 ルニング賞を受賞
  • 1960年 第12回ミラノトリエンナーレのデンマークパピリオンのデザインで絶賛を浴びる
         ミラノトリエンナーレでグランプリを受賞
         デンマーク家具ギルド展年度賞受賞
  • 1962年 ハンナの設計による自邸が完成
  • 1971年 デンマーク・デザイン協会会長に就任
         デンマーク・インダストリアルデザイン賞受賞
  • 1976年 デンマーク王立芸術アカデミー建築家家具デザイン教授として教鞭を執る
         (-1980年)
  • 1977年 デンマーク家具製造業連盟賞受賞
  • 1980年 死去(4月18日)

 

若き日のポール・ケアホルム

ポール・ケアホルム03 PK25イージーチェア ポール・ケアホルム 1951年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より
ISBN4-4449-0244-7

 

  • イージーチェア PK25
    ポール・ケアホルム
    1951年
    工芸学校の卒業制作に作られた作品
    スチール+フラッグ・ハリアード・ライン
    W690×D730×H750、SH400mm
    フリッツ・ハンセン社

ポール・ケアホルムは、20歳前に家具マイスターの資格を取得していました。

ポール・ケアホルムは学生時代から才能を開花させ、卒業制作にはPK25を発表しています。

ポール・ケアホルムは、ミース・ファン・デル・ローエを敬愛していました。

PK25は、ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェアにインスピレーションを受けています。

 

金属と革や籐

ポール・ケアホルム04 PK22 PK91イージーチェアとスツール ポール・ケアホルム
「北欧デザイン手帖」より
ISBN978-4-579-21019-0

 

  • イージーチェア PK22
    ポール・ケアホルム
    1955年
    通常の鋼材では脚が広がるため、スプリング鋼を使用
    バルセロナチェアにインスピレーションを受けた
    スチール+革張り
    W630×D630×H710、SH350mm
    フリッツ・ハンセン社
  • フォールディングスツール PK91
    ポール・ケアホルム
    1961年
    コーア・クリントのプロペラスツールに着想を受けリデザイン
    スチール+革張り
    W590×D450×H410mm
    フリッツ・ハンセン社

ポール・ケアホルムは、金属と

などの良質な自然素材との組み合わせが、豊かさを醸し出すことにいち早く注目しました。

しかし1950年代のデンマークでは、

などの優れた品質とデザインの木製家具が主流を占めていました。

 

デザイナーの勇気

ポール・ケアホルム05 PK31ソファ ポール・ケアホルム 1958年
「別冊家庭画報 北欧インテリア」より
ISBN978-4-418-09101-0

 

  • ソファ PK31
    ポール・ケアホルム
    1958年
    ソファの座面が浮いているような軽やかさを表現
    スチール+革張り
    W1370×D760×H760、SH380mm
    フリッツ・ハンセン社

木製家具が主流を占めていた時代に、ポール・ケアホルムは金属のフラットバーを使用した椅子を発表しました。

ポール・ケアホルムは異質な存在であったと同時に、多大な勇気を必要としたことでしょう。

 

コル・クリステンセン

ポール・ケアホルム06 PK33スツール ポール・ケアホルム 1960年
「ELLE DECOR NO.133 2014年 8月号」より

 

  • スツール PK33
    ポール・ケアホルム
    1960年
    クッションを外すとスタッキングできる
    スチール+革張り
    直径530×H340mm
    フリッツ・ハンセン社

ポール・ケアホルムの椅子づくりを支えたのは、コル・クリステンセンでした。

コル・クリステンセンは、ポール・ケアホルムのデザインの多くが通常の鋼材では強度的に難しいことを知りました。

コル・クリステンセンは、ドイツの優れた技術を持つ鉄工所を探し出しました。

他にもポール・ケアホルムが求める製品を作るために、優れた技術の

  • 革職人
  • 籐職人
  • 石工

などの職人チームを作り上げました。

 

ポール・ケアホルム自邸

ポール・ケアホルム07 PK9ダイニングチェア ポール・ケアホルム 1961年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より

 

  • ダイニングチェア PK9
    ポール・ケアホルム
    1961年
    自邸のダイニング用としてデザインされた
    スチール+FRP+革張り
    W560×D600×H760、SH430mm
    フリッツ・ハンセン社

ポール・ケアホルムの自邸は、妻のハンナが設計しました。

フラットルーフのモダン住宅の基本構想は、日本発アメリカ西海岸経由でデンマークにたどり着いたものでした。

ハンナの言葉を、以下に引用します。

日本建築の影響はもちろん受けました。
学生時代には日本建築を勉強しましたが、授業ではなく本を見ての独学です。
私が一番惹かれたのは畳をはじめ、基準となる寸法、つまりモジュールがある合理的な日本建築のシステムです。
その影響でこの家は3メートルのモジュールに従い、設計しています。

「別冊家庭画報 北欧インテリア」p34より引用

ポール・ケアホルムは自邸のために数多くの家具をデザインし、見事に調和させました。

 

デンマーク王立芸術アカデミーの教授

ポール・ケアホルム08 PK24ハンモックチェア ポール・ケアホルム 1965年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より

 

  • ハンモックチェア PK24
    ポール・ケアホルム
     1965年
    自由に角度が変えられる
    ステンレススチール+籐
    W670×D1550×H870、SH140mm
    フリッツ・ハンセン社

ポール・ケアホルムは1976年に、デンマーク王立芸術アカデミーの家具担当教授に就任しました。

初代教授コーア・クリントの後任には、世界の伝統的な家具の学識を持つと同時にその考え方を近代化したオーレ・ヴァンシャーが就任しました。

このように優れた木製家具の伝統を支えてきた家具担当教授の地位に、金属家具のポール・ケアホルムが就任したことは大きな驚きを持って迎えられました。

そしてそれは、好意的な受け止め方が大勢を占めていました。

デンマークの家具の伝統は、

  • 高い造形性
  • 製造技術
  • 生活の道具への提案性

にあり、木製、金属製といった素材にこだわらず本質を求めていたのでした。

 

まとめ

ポール・ケアホルム09 PK20ハイバックチェア ポール・ケアホルム 1967年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より

 

  • ハイバックチェア PK20
    ポール・ケアホルム
    1967年
    カンティレバーで脚のカーブを実現
    スチール+革張り
    W800×D710×H890、SH370mm
    フリッツ・ハンセン社

ポール・ケアホルムを見ていて、「デザイナーには勇気が必要であること」を改めて確認しました。

そしてデンマーク・デザインは、懐が深いと思いました。

ポール・ケアホルムの家具は、本当にカッコいいです。

しかし私はポール・ケアホルムの家具を見るたびに、金属のエッジで怪我をする自分をいつも想像してしまいます。

ポール・ケアホルムの家具には、緊張感があります。

 

デンマーク・デザイン展」も、参考にしてください。