モダンについてのファッションデザイナーの考え

ファッションを語るときに用いられる「モダン」は、とても曖昧な言葉です。
4人のファッションデザイナーは、「モダン」をどのように考えているのでしょうか?

 

マドレーヌ・ヴィオネ

モダニズムとファッションデザイナー02 マドレーヌ・ヴィオネドレス マドレーヌ・ヴィオネ 1934年
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より

ISBN978-4-7661-2374-6

 

  • ドレス
    マドレーヌ・ヴィオネ
    1934年
    ディテールとシンプルさの完璧なバランスを成立

マドレーヌ・ヴィオネの服づくりには、モダニストとしての姿が見られます。

マドレーヌ・ヴィオネ自身の言葉を引用できないことが、残念です。

「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」から、以下に引用します。

パリで最もエキサイティングで革新的な時代に登場したヴィオネは、周囲の芸術家や知識人たちの哲学的な考えをとりいれた。
彼女は過剰な装飾をそぎ落とし、新しいタイプの女性たちがもっと動きやすく、快適に感じられる服を作りたいと考えるモダニストだった。
古代ギリシャ/ローマ時代のドレスの影響もあったが、ほかのモダニストのデザイナー同様、体が服によって変形させられるのではなく、服が体に合わせて変わるべきだと感じたのだった。
ヴィオネのドレスを着た女性は、コルセットを捨てた代償に、動きやすさを手に入れることになった。

「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」p90より引用

 

山本耀司

モダニズムとファッションデザイナー03 ヨウジヤマモト コート ヨウジヤマモト 1986年
「All About Yohji Yamamoto」より
ISBN978-4-579-30446-2

 

山本耀司のファッション進化論」の中に、モダニズムという項目があります。

山本耀司が考えるモダンについて、以下に引用します。

編集部

疑問からデザインが始まる?

山本耀司

どんな分野であれ、疑問を持つ人でなきゃ、物は作れないと思うよ。

編集部

「平凡社大百科事典」によると、モダニズムとは、根源的な懐疑精神に貫かれた、ブルジョア文化に対する急進的な批判である、と書いてあるけど。

山本耀司

自分自身で疑問を提起してそれに答える。
悪戦苦闘の中から生まれるものが真実だと信じたい。

だから物を作る人は、基本的な姿勢としてモダニズム精神が必要なんじゃないか。

編集部

もっと苦しみなさいってこと?

山本耀司

そうじゃない。
その悪戦苦闘を楽しみなさい。
それが物を作る喜びなんだと。

編集部

じゃあ、安易に過去のものをなぞっちゃいけない。

山本耀司

トレーニング、修練としてのクラシシズムは必要だけどね。

音楽家が感性だ味だと言えるまでには、何年、何十年と基本的な練習を積む。
デザイナーだって、基本的なテクニックを身につけていなきゃ話にならない。
ただ、その中には過去の人がつくった価値観、文化観に支えられた部分があるから大きな矛盾を感じるはず。
その矛盾に苦しむべきだ。
基礎で苦しんでいるうちに、自分の判断、闘い方がわかってくる。
それからすべてのエスタブリッシュメントに反論すればいい。
それじゃないと勝てないよ。

「All About Yohji Yamamoto」p6より引用

モダンとは、すべてのものから魂を抜き去ることである。

「MY DEAR BOMB」p134より引用
ISBN978-4-00-024811-2

 

ジョン・ガリアーノ

モダニズムとファッションデザイナー04 ジョン・ガリアーノドレス ディオール/ジョン・ガリアーノ 2009年秋冬
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より

 

  • ドレス
    ディオール/ジョン・ガリアーノ
    2009年秋冬
    ランジェリーに用いられる布地を使っている

ジョン・ガリアーノは1990年代後半、「ジョン・ガリアーノが作り出す服がもはやモダンではない」と批判されていました。

モダンに対するジョン・ガリアーノの言葉を、以下に引用します。

何をもって「モダン」というのでしょうか?
私は、自分のしていることがモダンだと思っていますし、皆さんがそう思ってくださればそれがモダンなのでしょう?
この言葉自体が使い古されてしまった感じがします。
多くの人が考える「モダン」とはどういうものでしょう?
グッチですか?
プラダですか?
それは彼らの解釈する「モダン」でしょう?
しかし、それらも歴史に基づいたものなんですよ。

私が初めてバイアスカットをしたとき、そう、人々は「これはヴィンテージだ」って言ったんですよ。
このバイアスカットは、弾力性の最もモダンなかたちなんです。
布をななめに切る、そうすると合成繊維を混ぜなくても伸縮性が生まれます。

「ヴィジョナリーズ ファッション・デザイナーたちの哲学」p188より引用
ISBN978-4-86020-148-7

 

フセイン・チャラヤン

モダニズムとファッションデザイナー05 フセイン・チャラヤンドレス フセイン・チャラヤン 2009年秋冬
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より

 

  • ドレス
    フセイン・チャラヤン
    2009年秋冬「アースバウンド」
    ドレスの布には地面や岩のような質感がある
    首を包む胸当ては、機械やロボットを思わせる

フセイン・チャラヤンのデザイン思想の中に、モダニズムが現れています。

フセイン・チャラヤンの言葉を、以下に引用します。

ある物を現代風にするのはその「機能性」だと思います。
現代主義(モダニズム)が形成されたのもそのためです。
そして何かをデザインするというのは、機能があってこそなのです。
デザインは最終的に最小限(ミニマル)に帰着します。
けれどもそこにたくさんのリサーチや思想が詰めこまれているという意味では、ミニマルではないのかもしれません。
まるでひとつのアイデアを何度も繰り返しふるいにかけていく感じです。
僕は過剰にデザインされたものは好きではありません。
たしかにその方がごまかしはききますよ。
どこかに畳みこんでしまえばいいんですから。
少ないものよりたくさんのもので効果を生むほうが簡単だし、アイデアは付け足すよりもまとめることの方が難しいんです。

「ヴィジョナリーズ ファッション・デザイナーたちの哲学」p74より引用