マルタン・マルジェラは、有名なファッションデザイナーです。
しかしマルタン・マルジェラ本人のことは、謎に包まれています。
マルタン・マルジェラ
マルタン・マルジェラ
ジャン=ポール・ゴルチエのアトリエで打ち合わせ
M2Mの「Anti Fashion」より
マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)
- 1957年 (または1959年)ベルギーに生まれる(4月9日)
- 1980年 アントワープ王立芸術アカデミーを卒業
- 1984年 ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタントとして働く
(-1987年) - 1988年 「メゾン・マルタン・マルジェラ」を設立
1989年春夏パリ・コレクションにデビュー - 1997年 エルメスのデザイン・ディレクターに就任
- 2002年 ディーゼルのレンツォ・ロッソのグループ企業が出資
- 2003年 エルメスでの仕事を辞める
マルタン・マルジェラの写真は、Made to MeasureのAnti Fashionから使いました。
わからないファッションデザイナー
カーディガン、プルオーバー、ドレス、ベルト マルタン・マルジェラ 1996年春夏
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より
ISBN978-3-8365-5719-1
- カーディガン、プルオーバー、ドレス、ベルト
マルタン・マルジェラ
レーベル:(白い木綿テープ)
1996年春夏
ブラウンのレーヨン・トリコットのカーディガン
ナイロン・ネットのプルオーバー
アセテートのワンピース・ドレス
カーディガンとプルオーバーに転写プリント
ビニールのベルト
マルタン・マルジェラは、私には全くわからないファッションデザイナーです。
まず、マルタン・マルジェラがどのような人かわかりません。
いつまでデザインをしていて、いつメゾンから離れたのかもわかりません。
マルタン・マルジェラの服の良さも、私にはわかりません。
マルタン・マルジェラは、わからないことをたくさん残して消えました。
アバンギャルドか否か
ジャケット マルタン・マルジェラ 1997年春夏
「FASHION A History from the 18th to 20th Century」より
- ジャケット
マルタン・マルジェラ
レーベル:(白い木綿テープ)
1997年春夏
麻の製造番号つきの人台をそのまま服にした
マルタン・マルジェラがデビューした1988年、私はアバンギャルドかアバンギャルドではないかの物差しかもっていませんでした。
私には、マルタン・マルジェラはアバンギャルドには見えなかったのです。
本や雑誌には、マルタン・マルジェラについてのそれらしいことがたくさん書かれていました。
しかし、私にはその解説が全く理解できませんでした。
マルタン・マルジェラは過去に見たことのある服を構成し直しているように、私には見えました。
私は、ヨウジヤマモトがデビューする以前の服というものが嫌いでした。
ヨウジヤマモトのせいで、私は服好きになってしまいました。
そのような経緯もあって、古い服の再構成に見えるマルタン・マルジェラの服には魅力を感じませんでした。
マルタン・マルジェラが私に与えた影響
ジャケット マルタン・マルジェラ 1998年春夏
「FASHION A History from the 18th to 20th Century」より
- ジャケット
マルタン・マルジェラ
レーベル:(白い綿テープ)
1998年春夏
ベージュのポリエステル平織り
袖付けを前方に配置
縫製後にプレスをかけている
それでは私はマルタン・マルジェラの影響を受けていないかというと、そうではありません。
服の作り方がわからない大学生だった私は、ヨウジヤマモトのような服を作りたくても作れませんでした。
そんなときに、マルタン・マルジェラがデビューしました。
マルタン・マルジェラの服には、
- 紙でできたベスト
- ペンキが塗られたデニムパンツ
がありました。
これなら私でも、作れそうです。
私は持っていたリーバイスの501を、黒いペンキで塗りました。
そして、紙をちぎってベストを作ってみました。
ベストは思うような形にならなかったので、最終的にダンボールでサンダルを作りました。
このサンダルは、東京大学先端科学研究センターの軽部研究室で履いていました。
とても好評で、私がファッションデザイナーになりたいことを研究室の人がみんな認識してくれました。
コンセプト
コート マルタン・マルジェラ 1999年秋冬
「FASHION A History from the 18th to 20th Century」より
- コート
マルタン・マルジェラ
レーベル:(白い綿テープ)
1999年秋冬
ダウンが入った白い平織りの綿
端に茶色の綿のパイピング
広げると長方形になる
着脱式の袖
マルタン・マルジェラは、感覚的にいうとコム デ ギャルソンに似ています。
洗練とか完成度よりも、コンセプトが大事なファッションデザイナーだと思います。
装苑賞に応募していたとき、感じたことがありました。
私以外の候補者は、
- 洋裁の技術を使って、オブジェを作っている
- 服を再構成して、新しさを出そうとしている
- 服に使わない素材を使って、服を作ろうとしている
と思いました。
マルタン・マルジェラの服には、同じ匂いを感じます。
まとめ
マルタン・マルジェラのアトリエの入り口
M2Mの「Anti Fashion」より
2009年の時点でマルタン・マルジェラは最近のコレクションに関わっておらず、かつて彼と仕事をしたデザイン・チームによるものだということが発表されました。
そしてその後、マルタン・マルジェラがメゾンを辞めたことが発表されました。
とても人気のあったマルタン・マルジェラですが、いつの間にか消えてしまいました。
多分、マルタン・マルジェラが消えてしまったことすら気づいていない人もいるはずです。
ファッションデザイナーは、本当に大変な職業です。
アトリエの入り口の「SUCCESS」という文字が、寂しそうに見えます。