マドレーヌ・ヴィオネ バイアス・カットの服

ジャポニスムがパリモードに与えた影響”を書きながら、
「マドレーヌ・ヴィオネは、いつごろバイアス・カットを使い出したのか?」
という疑問がわいてきました。

 

バイアス・カットの始まり

マドレーヌ・ヴィオネ09イブニング・ドレス マドレーヌ・ヴィオネ 1929年ころ
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より
ISBN978-3-8365-5719-1

 

  • イブニング・ドレス
    マドレーヌ・ヴィオネ
    1929年ころ
    星型が刺繍されたピンクの絹ボイルのワンピース・ドレス
    バイアス・カット
    クルーネック
    スカートは9枚のパネルで構成
    共布のベルト付き

1929年の世界恐慌で、世界は不況の時代を迎えました。

不況と共に、

  1. 快活で斬新なシルエットは影を潜めた
  2. 女性の体の丸みを活かし、穏やかで流れるようなシルエット
  3. スカート丈は再び長くなった
  4. 肩や背中の美しさを強調するデザイン
  5. バイアス・カットによって生み出されるフレアー
  6. 文様は小ぶりで、穏やかな色調

このような、デザインの特徴が見られるようになりました。

マドレーヌ・ヴィオネは、バイアス・カットという画期的な技法を考案しました。

 

バイアス・カット

マドレーヌ・ヴィオネ10イブニング・ドレス マドレーヌ・ヴィオネ 1932年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より

 

  • イブニング・ドレス
    マドレーヌ・ヴィオネ
    1932年
    黒の絹サテンのワンピース・ドレス
    身頃は2ピース、スカート部は大小5ピースで構成
    バイアス・カット

バイアスとは、織物の布目に対して斜めであることです。

布地は、経(たて)方向と緯(よこ)方向で伸び率が異なります。

地の目をバイアスにすると、左右で布の垂れ具合が違ってきます。

マドレーヌ・ヴィオネは、

  1. あらかじめ布を伸ばす
  2. 高度なカッティング
  3. 高度な縫製技術を使う

などして、布地の伸びを調整していました。

1930年代、ファッションに女性特有の曲線的な身体の線が蘇りました。

その線をしなやかに際立たせる、バイアス・カットの真価が発揮されました。

 

透けるほど薄い布地

マドレーヌ・ヴィオネ11ドレス マドレーヌ・ヴィオネ 1933年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より

 

  • ドレス
    マドレーヌ・ヴィオネ
    1933年
    絹シフォンにぼかしのプリントのワンピース・ドレス
    バイアス・カット
    長いサッシュは、ネックラインに留めつけられて衿となり、前でねじり、交差する

1930年代、布地には流動性を生かすように薄さと軽さが求められました。

マドレーヌ・ヴィオネは、柔らかなシフォンの生地をバイアスに用いて体のラインを浮き立たせています。

また胸部の布をねじりながら、表情豊かな立体感を出しています。

この装飾手法は、当時のマドレーヌ・ヴィオネの作品の特徴です。

透けるほど薄い素材を、皺を作らず接ぎ合わせるには、お針子の熟練の技が必要不可欠でした。

 

ボーを体に巻きつける

マドレーヌ・ヴィオネ12イブニング・ドレス マドレーヌ・ヴィオネ 1933年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より

 

  • イブニング・ドレス
    マドレーヌ・ヴィオネ
    1933年
    黒のレーヨン・ジャージーのワンピース・ドレス
    バイアス・カット
    身頃に巻きつけたサッシュは、朱赤の絹クレープ
    衿ぐり前中央、後ろ肩切り替え線でドレスに留めつけられている
    エステート・オブ・ティナ・チャウ寄贈

ドレープ性のよいレーヨン・ジャージーを、巧みなバイアス・カットで体にフィットさせています。

巻き付けたボーが、細身のボディを引き立てています。

本品は、ヴィオネ自身のワードローブでした。

ティナ・チャウ寄贈です。

1992年にワコールで開催された、「ティナ・チャウ回顧展」に出品されていたかもしれません。

私は、このイブニング・ドレスの実物を見たことがあるかもしれません。

 

まとめ

マドレーヌ・ヴィオネ13ドレス マドレーヌ・ヴィオネ 1935年ころ
「文化学園服飾博物館コレクション ヨーロピアン・モード」より

 

  • ドレス
    マドレーヌ・ヴィオネ
    1935年ころ
    ダーツ入れずパネルの切替とバイアス・カットを利用
    フィット・アンド・フレアーの流動的なシルエット

私が持っている写真で、一番古いバイアス・カットの服は1929年のものでした。

1929年のイブニング・ドレスは、まだ筒状のシルエットをしています。

1930年代に入り、女性特有の曲線的なシルエットのドレスになります。

1920年代後半には、マドレーヌ・ヴィオネはバイアス・カットの技法を考案していたものと考えられます。

1930年代に入り、女性特有の曲線的なシルエットを際立たせるバイアス・カットが真価を発揮しました。

そして1939年、マドレーヌ・ヴィオネはメゾンを閉鎖するのでした。

 

マドレーヌ・ヴィオネについては、以下も参考にしてください。