構造線について 小池千枝先生

「服装造形論」の中で、構造線について小池千枝先生が言及しています。
構造線について、小池千枝先生の講義を3つ引用します。

 

脇の縫合線の描き方

小池千枝先生 構造線について02図1 脇線の描き方
「服装造形論 着て・動いて・美しく」より
ISBN4-579-10217-7

 

構造線の一つである脇の縫合線の描き方について述べてみよう。

衣服造形上、脇線は慣習的に前後身頃のほぼ中央に決められているようであるが、人体を側面から見ると、決して前面と後面は均等な形態ではない。
さらに体側面はかなり平面的な部分でもある。
パターンメーキングの際、このような平らな面に、前面から見たままの体側のシルエット線をそのまま脇線として描こうとしているところに無理がおきるわけである。
さらに好ましくないことは、ウエストライン上の一点を中心に、【図1A】のような線で描かれているパターンを多く見る。
一見ウエストにフィットしそうに見えるが、このような脇線を縫合した場合には脇縫い目の無理がウエストラインの角一点に集中し、大きなつれとなってしまう。
少なくともこのa点が点ではなく【図1B】のような線で描かれるならば、この現象は減少する。
このように、なだらかなカーブに描くならば、体側のカーブへのフィッティングは容易となり、かなり深いくり込みの脇線でも無理なく縫合できる。

続く裾への脇線の描き方は、【図1A】のように描くと裾線は脇に直角にとり直すためやや上がる。
【図1B】のようにヒップへのなだらかなカーブを描きながら、裾の平行線に直角におさまることが好ましい。
たとえ合理的な位置に入れられた構造線でも、描き方ひとつで体型への適合性を失い、美感もそこなうものである。

 

体側の構造線の位置

小池千枝先生 構造線について03図2 合理的な脇線
「服装造形論 着て・動いて・美しく」より

 

人体の前面と後面は均等な形態ではなく、とくに後面は肩甲骨突部からウエスト、殿部突出部への凹凸の度合いは前面より大きい。
また日常動作のなかでも運動による体表の偏移は後面のほうが大きいなど、静的にみても動的にみても人体は前面より後面のほうがダイナミックなものである。

このように異なった両面を包んで接合する、いわゆる脇線が、前後均等のカーブをもったラインであることは決して好ましいものではない。
【図2】のパターンのように、体幹部を上下続けて包む場合に、脇縫い目位置をやや後ろに回しているのを見るが、これは体そのものが自然に教えてくれる無理のない合理的なドレスパターンといえよう。
すなわち布を用いてチッ体裁断をしてみれば容易にわかるように、スタン(ボディ)の前中心も正しく合わせて前面から側面に一枚の布を回して当ててみたときに、バストの乳房部からヒップの腸骨の張りにかけて自然に引かれるしわができる。
これをダーツ状につまんでダーツとして残したり、そのまま面の転換線として処理してしまうと、布は側面を包み、そのまま後ろへ回すことができる。
このような前脇のわずかな処理で体側面をおさめることができるのである。
こうしてみると、体幹部全体を一枚布で包むとき、バスト下にまっすぐとっているダーツを多くみるが、これは体型を無視したむしろ布に無理のかかる構造線になるわけである。

また、よく使われているプリンセスラインも、同様に一枚布で包むには無理な構造線であり、いくつかのピースに分けて処理し、構成されることになる。

後面は、肩甲骨の張りと殿部突出部とを包むと同時に、ウエストの深いくぼみにフィットさせながら前方へ回すことは困難なために、後腋点位あたりの後面と側面との面の転換位置で、前面より回された布と接合して後ろ寄り脇線をつくる。

このように体型観察からも、自然に縫合線の決定ができると同時に、その体側線の縫い合わせのカーブが均等であることはありえないということも理解できよう。
展開図【図2】にあらわしている体側の縫合線は無理のないラインになっている。

このように、むしろ人体に即したパターンこそ望ましいものである。
しかし、工業化になると人体の形態は無視され、前後脇線は同傾斜、同布目となり、オートクチュール的なものになると、手仕事のテクニックを加えるなど、生産性、経済性から量産的方向とオートクチュール的方向とでは多少異なったパターンメーキングの方法をとらざるをえない。
いずれにしても本来の目的を失わないようにしたいものである。

この「合理的な脇線」について、私は文化服装学院で小池千枝先生に直に習うことができました。

このエピソードは、「小池千枝先生 第11回」を参考にしてください。

 

後ろ中心の縫合線のつけ方

小池千枝先生 構造線について04図3 後ろ中心縫い目線
「服装造形論 着て・動いて・美しく」より

 

脇縫い目と同様、後ろ中心に縫い目をつける場合も、とかく問題があるものである。
人体を側面から見たとき、後面のシルエット線は肩甲骨突点、ウエスト、殿部突点など、それぞれ異なった部位の複合シルエットとなっている。
そしてそれらの各部はそれぞれ違った角度をもった凹凸面をもっている。
このような複雑な複合体である後面の中心に、衣服造形ではしばしば縫い目をつけて構成することがある。
そこで【図3A】のように、ウエスト位置で深くくり入れたカッティングをよくみるが、これでは後ろ中心部のみに負担をかけすぎ、かえってなかなかフィットしない。
当然、複雑な複合体を一本の縫い目で処理しようとするのが無理なのである。
美しく合わせようとするなら、脇線との兼合いも必要であるが、少なくとも背面部は平らに、ウエストラインまで布の縦地をそのまま利用することが好ましい。
臀部への張りがおさまらないときや、フレアを多くほしいときは、【図3B】のようにウエスト位置でわずかに引き込むだけで裾への広がりを出せばよく、深くしぼって出すよりも布に無理がかからなくてよい。
それは、【図3A】と【図3B】にくぼみ量を示したように、【図3B】のほうが縫い目の負担が少なくなるからである。
しかし、後ろ中心部のくぼみや肩甲骨の張り、殿部突出部など、体型なりに表現したいときには、各突出点を結ぶプリンセスラインに構成するとか、布のこなしにたよらざるをえない。

「服装造形論 着て・動いて・美しく」p144〜148より引用しました。

 

「服装造形論 着て・動いて・美しく」については、以下も参考にしてください。