肩傾斜について 小池千枝先生

袖のデザインは腕だけではなく、肩にも関係して展開されます。
そこで今回は、肩の形状について観察します。

 

なで肩といかり肩

小池千枝先生 肩傾斜について02肩傾斜例(シルエッター計測データより)
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

「袖 着やすさと美しさのテクニック」から、肩傾斜について以下に引用します。

成人女子の肩全体の平均肩傾斜角度は23度前後ですが、個人差が大きく、30度のなで肩の人もいれば、10度のいかり肩の人も見かけられます。

(上の)図は、一般的な女性のなかに見られる肩傾斜のいろいろです。

「袖 着やすさと美しさのテクニック」p38より引用

 

肩線の状態

小池千枝先生 肩傾斜について03広川資料より
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

次に、肩線の状態を見ていきます。

また、肩線の状態をよく見ると、前述した肩の全体的傾斜とは別に、ネック寄りの傾斜と肩先寄りの傾斜の二段階があることに気がつきます。
肩線は決して一直線ではなく、くぼみのある微妙な傾斜をもっているのです。

服作りでは、この微妙な傾斜をそれなりに表現することもあれば、総合したものとして直線的に表現する場合があります。
前者はブラウスやワンピースに、後者はスーツやコートなどの直線的なシルエットの服に多くみられます。

「袖 着やすさと美しさのテクニック」p38より引用

山本耀司のファッション進化論「袖」のなかで、山本耀司が肩傾斜について語っています。

その内容を、以下に引用します。

編集部

いい袖つけって、どんなもの?

山本耀司

服の性格によって違うけれど、チェックポイントは、腕を自然に下げたときに、べしょっとつぶれていないか。
袖つけが手に引っぱられていないか。
パッドがなくても魅力的に浮いているか。
感覚的にいえば、布地の材質に合った肩傾斜に袖がタイミングよく、鋭角的にぶつかり合っているか。

編集部

でも肩の形って、人によって違うでしょ。

山本耀司

そう、肩は顔と同じくらい一人一人違う。
既製服は、それを一つの魅力におさめなければならない。
服の思想に合った理想的な肩幅と肩傾斜を作るわけです。
定型詩みたいに。

編集部

どうやって?

山本耀司

千差万別の肩に、一つだけ、ここでつかまえろ、というポイントがある。
ちょうど鎖骨のそげたところ。
ここから肩をはねるか、下げるか。
ここさえ決まれば、どんな形でもねらった表情が出せます。
肩だけでなく、洋服の起点といってもいいかもしれない。
ここから第1ボタンに向かって重心がかかるし、すべてのドレープはここからおりる。

「All About Yohji Yamamoto」p12より引用

 

原型補正

小池千枝先生 肩傾斜について08原型補正
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

美しさを表現するために、肩傾斜の違いにより文化式原型を補正する必要があります。

文化式原型の補正の仕方を、「袖 着やすさと美しさのテクニック」から以下に引用します。

肩傾斜なりの美しさを服に表現する場合は、次のような方法をとるといいでしょう。

なで肩の場合は、比較的肩全体の厚みが多く、いかり肩の場合は厚みが少なく、腕つけ根を包む袖ぐりとしては、それほど差をつける必要がないものです。

身頃原型の肩線は、肩の厚みと傾斜とが総合されたものですが、どうしても肩先で余ったり足りなくなる場合は、図のように肩先と袖ぐり下でプラスマイナスして体に合わせてください。
このとき、なで肩の場合は、袖ぐり下をくり下げすぎないように注意します。

「袖 着やすさと美しさのテクニック」p38-39より引用

 

好みのシルエットを作るために

小池千枝先生 肩傾斜について06「黒いネクタイの女」 モディリアーニ
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

小池千枝先生は、

  • なで肩にはなで肩なりの美しさ
  • いかり肩にはいかり肩なりの美しさ

があることを指摘しています。

なで肩にはなで肩なりの美しさが、いかり肩にはいかり肩なりの美しさがあります。
なで肩には優美さを、いかり肩にはスポーティでボーイッシュな快活さを感じるというように。
そして、モディリアーニの描く女性のように極端な肩下がり服に生きることもあり、アメリカンフットボールのユニフォームに見られるシルエットまで、大まじめに作られることがあるものです。

前者は1955年ごろのマダム・グレの作品などに、後者は1978〜79年の、肩パッドを入れたスーツやコートにみられます。

「袖 着やすさと美しさのテクニック」p39より引用

 

時代が生み出すファッションへの挑戦

小池千枝先生 肩傾斜について07アメリカンフットボール 「ハイファッション」より
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

いかり肩は高さの感覚も伴うもので、背が高く見えるものです。
これは、丈の長さを求める流行が、必然的に肩先を上げることに気づかせたのでしょうか。

このように、なで肩、いかり肩それぞれの個性美をいかすデザイン力も、ぜひ身につけたいものです。

さらに時代が生み出すファッションに挑戦することも、服を知るうえで大切でしょう。

「袖 着やすさと美しさのテクニック」p39より引用

 

参考文献

  • 袖 着やすさと美しさのテクニック
    ISBN4-579-10131-6
  • All About Yohji Yamamoto
    ISBN978-4-579-30446-2

小池千枝先生の「袖 着やすさと美しさのテクニック」については、以下も参考にしてください。