文化式原型の変遷 原型シリーズ2

小池千枝先生の「服装造形論」に、文化式原型の変遷について書かれています。
今回は、文化式原型がどのように変化したか見ていきます。

 

1936-47年(昭和11-22年)

小池千枝先生 文化式原型051936-47年の文化式原型
「服装造形論」ISBN4-579-10217-7より

 

身頃原型

この頃の婦人服原型は、男子服原型に類似しています。
男子服の原型を参考にして、作られたと思われます。

この原型は背広的感覚のもので、女性特有の胸部の表現は少なくなっています。

当時、婦人服はテーラードジャケットが主役でした。
テーラードジャケットに使いやすい、原型になっています。

前中心を真っすぐにしたドレス類のためには、胸上部の傾斜を処理しなければらない不便さがありました。

特徴は、

  • 前原型の中心に傾斜がついている
  • 前下がり分が少ない
  • 後ろウエストラインが、水平でない
  • 前肩が高く、後ろ肩先が低い
  • 衿ぐり、袖ぐりに0.7cmの縫い代を含んでいる

 

袖原型

袖原型は、身頃原型に相応して作られています。
腕の立体を、筒状に理解させようとしたものです。

特徴は、

  • 袖付けの基準は、袖山と前袖のすわりを合わせる
  • 必要寸法は、袖丈でなく裄丈

 

1947-51年(昭和22-26年)

小池千枝先生 文化式原型061947-51年の文化式原型
「服装造形論」より

 

身頃原型

ニュールックが生まれ、洋裁学校がブームとなる時代でした。

肩がややいかり肩になり、胸を張った静的なポーズとしては美しくなっています。
着やすさよりも、視覚的、静的なフィッティングを大切にしています。

特徴は、

  • 描き方が、やさしく単純化されている
  • 肩先点を同一の高さにした
  • 胸幅、背幅がやや狭くなった

 

袖原型

特徴は、

  • 袖丈を採用した
  • 身頃アームホールは、作図仕上がり線を測るようになった
  • ストレートな袖にした

 

1951-54年(昭和26-29年)

小池千枝先生 文化式原型071951-54年の文化式原型
「服装造形論」より

 

身頃原型

戦後のこの頃は、ドレス時代と言えました。
原型は、ドレス的になりました。

特徴は、

  • 胸囲のゆとりが減った
  • 胸幅、背幅を胸囲寸法から割り出すようになった
  • 前中心の傾斜をなくした
  • バストポイントを位置付けた
  • 前脇線に傾斜を付けた
  • 後ろ肩線を、やや前ぎみにした
  • 後ろウエストラインが水平でなくなった

 

袖原型

袖原型には、変化がありません。

 

1954-68年(昭和29-43年)

小池千枝先生 文化式原型081954-68年の文化式原型
「服装造形論」より

 

身頃原型

部分的な修正が、行われました。

特徴は、

  • 前衿ぐり幅を、後ろ衿ぐり幅と同寸にした
  • 後ろの袖ぐりを深くした

 

袖原型

特徴は、

  • 袖山を高くした
  • 作図が多少複雑になった

 

1968-83年 (昭和43-58年)

小池千枝先生 文化式原型091968-83年の文化式原型
「服装造形論」より

 

身頃原型

婦人服がカジュアル化され、動きやすく着やすい衣服が要求される時代になりました。

ジャンプスーツがファッションとして登場し、原型も変更しなければいけなくなりました。

運動量や、機能的要因が考慮された原型になりました。

特徴は、

  • 作図方を思い切り簡略化した
  • 背幅、胸幅位置に入っていた水平ラインが消える
  • 前衿ぐりを描く際の案内線である斜線上の分割をなくす
  • 前後アームホールを描く際の、斜線およびその分割をなくした
  • 背幅を胸幅より1.5cm広くした
  • ネックポイント位置を動かした
  • 前下がりがやや多くなった
  • 後ろウエストラインを水平にした

 

袖原型

特徴は、

  • 一枚袖に展開して、視覚的に袖山の形状を理解しやすくした
  • 後ろ袖幅を広くして、前後の袖幅に差を付けた
  • ストレートな袖なので、二枚袖やその他の袖に応用しやすい

 

1983年(昭和58年)

小池千枝先生 文化式原型101983年改定の文化式原型
「服装造形論」より

 

身頃原型

原型の変遷は、世相、社会の反映そのものです。

生活の場として椅子の様式がほとんである現在、若い世代に成長の変化が見られました。
また食生活の変化で、体型に変化が表れました。

しかし、単純に形態のみでなく、心理的な要因も加わって原型は改正されました。

特徴は、

  • 後ろネック幅を広くした

 

袖原型

特徴は、

  • 袖山を低くし、袖付け合い印を付けた

この改訂版の原型について小池千枝先生は、

以上、幾つかの改正を試みたが、いずれにしても完璧ということはありえない。
この新原型にも一長一短があり、それを超えたうえで使いやすい道具として、大いに応用発展させてほしいものである。

とおっしゃっています。

 

まとめ

文化服装学院創立者の並木伊三郎先生が若くして洋服に興味をもたれ、大正の初めには洋服のための原型を会得されました。

その原型をだれにも使いやすいように、平面にシステム化されました。
並木伊三郎先生はこの原型を教授され、これが洋服の一般化のあけぼのでした。

その最もはじめの原型は、1936年頃の原型に最も近いと思われます。

原型の移り変わりは、そのまま日本の服作りの変遷でもありました。
そしてその時代の背景を、語るものでもありました。

参考文献

  • 服装造形論

原型シリーズ3につづく・・・