袖のデザインと機能性2 小池千枝先生

「袖 着やすさと美しさのテクニック」には、高田賢三のスケッチが載っています。
今回は高田賢三のスケッチとともに、「袖のデザインと機能性」の続きを紹介します。

 

袖自体においても量感のバランスをとる

小池千枝先生 袖のデザインと機能性04 高田賢三画画:高田賢三 1970年
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

  • 1970年 英国発信で流行していたロンドン・ポップ
  • 1970年 英ビクトリア時代の水着や子どもの制服に着想を得たマリンルック

袖の量感は、身頃とのバランスで決められるのはもちろんのことですが、袖自体においても量感のバランスをとることを忘れてはなりません。

たとえば、袖のデザイン上の細かいテクニックで、ずいぶん印象が変わることがあるのです。
袖口のフリル、袖山のタックやギャザーなどは、量感にかかわりのあるテクニックとしてあげられます。

これらの技法をとり入れたパフスリーブ、フレアスリーブ、レッグオブマトンスリーブなどは、袖の上部と下部で量感のバランスをとった例といえるでしょう。

 

丈にふさわしい形がある

小池千枝先生 袖のデザインと機能性05 高田賢三画画:高田賢三 1971年
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

袖丈は量感の問題を別にしても、機能上重要なポイントだと思います。

身頃の大きさなり形なりが決まったからといって、そこから常識的な袖の寸法や形は決められないものです。
身頃の形が影響してはじめて袖の形が決定するものですが、それはできそうでいてなかなかできないものです。

ルール的に処理できないのは、デザインというのは感覚的なもの、時代の要求によるものだからです。
袖丈に例をとっても、七分袖に新しさを感じたり、また手首よりも長いほどの丈を新しく感じたり・・・・・、まさにその時代の要求によって変わるものなのです。

つまり、袖は非常にあいまいな状況におかれた部分ということになります。

袖丈がいったん決まると、これは袖の形にというか、裁ち方に対して強い発言力をもってくるように思われます。
必ずしも丈がさきに決まるというものではありませんが、少なくとも身頃と袖のバランスについてあるアイディアが生まれたとき、その丈と形には強い結びつきがあるような気がします。

 

袖山の高さを決定する条件

小池千枝先生 袖のデザインと機能性06 高田賢三画画:高田賢三 1972年 1973年
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

袖丈は勝手に短くすればいい・・・・・、そう思っているとしか考えられないデザインをする人が意外に多いものです。

しかし、丈を短くするなら、それに見合う幅があるものです。
半袖や四部袖は、長袖をそこで切ればいいというものではなく、腕のどこに袖口がくるかということによって、袖山の高さ、袖幅を考えることが必要です。
袖丈が肘を超える、超えないは、袖山の高さを決定するのに大切な条件になるのですから。

 

袖のデザインと機能性

小池千枝先生 袖のデザインと機能性07 高田賢三画画:高田賢三 1974年 1975年
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

  • 1974年 日本の田舎木綿を使ったもんぺ型のペザント・ルック
  • 1975年 中国服に和風角帯を低めに巻いた中国・ルック
  • 1975年 一枚の布を体に巻き付けたアフリカン・ルック

袖のデザインには腕の動きに素直に従うものと、腕を1本の軸と見立て、その周辺に自由な造形を試みるものがあります。
極端なものは、ニットのTシャツの袖のように、まるで腕そのものようなゆとりのないものから、運動の極限を袖の分量に置き換えたようなバットウィングスリーブまであるのです。

また、袖と身頃をどのようにつなげるかということは、袖の機能性を考えるとき、どうしても通らなければならない問題です。

カッティングの面からみると、関節本位のそれと、そうでないものがあるといえるのではないでしょうか。

関節本意とはおかしいかもしれませんが、肩(腕のつけ根)、肘、手首という3つの節が機能の元締めですから、機能を大事にするためにはまず関節本意ということになります。

さらに皮膚の伸縮にそったカッティングもあります。
つまり、布を皮膚と見立てたかのように、皮膚の伸縮がいちばん強いところを1枚に裁断し、体にそわせるように仕上げるのです。
これはこれで一理あります。

着やすい袖としてはラグランスリーブ、シャツスリーブ、キモノスリーブなどがあげられますが、まだまだ機能性を高く見る向きは少ないようです。

 

高田賢三の袖

小池千枝先生 袖のデザインと機能性08 高田賢三画画:高田賢三 1976年 1977年
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

  • 1976年 厚手の木綿やコーデュロイを使ったアメリカインディアン・ルック
  • 1976年 本格的なドレープに取り組んだギリシャ・ルック
  • 1977年 インド首相の衣装から着想したネール・ルック

袖のデザインを決める足がかりを述べてきたわけですが、こんなときにはこうするという虎の巻を作ることはとても不可能です。
あくまでもデザインする人の目とセンスがものをいいます。

実はここにすばらしいデザイナーが存在しています。
その人は高田賢三さんです。
彼の1970〜77年までの作品の一端を見ても、実にファッション的であり、解剖学的でもあるのです。
彼は絶えず肩関節の解放を目指しています。
それは意識しないにしても、現実に出来上がった作品には開放感があります。
そのなかでもニットの水平袖などは傑作中の傑作であり、その後のシャツスリーブやラグランスリーブ、そしてアップショルダースリーブやバットウィングスリーブなど、多彩なものです。

ここに『ハイファッション』(1979年2月号)掲載の彼のスケッチを借りて、袖のデザインと機能性のあり方を確認したいものです。

 

参考文献

  • 袖 着やすさと美しさのテクニック
    ISBN4-579-10131-6

小池千枝先生の「袖 着やすさと美しさのテクニック」については、以下も参考にしてください。