袖のデザインと機能性1 小池千枝先生

袖の美的効果と機能性は、バランスをとることが難しいと小池千枝先生は言います。
袖をデザインするときには、どのような問題があるのでしょうか?

 

形の美しさと運動のしやすさが共存

小池千枝先生 袖のデザインと機能性03トレーナー
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

  • トレーナー
    ウエストの適度なブラウジング分量
    伸縮性に富むニットの素材とがからみ合った
    機能的なラグランスリーブ
    「ハイファッション」より

袖には多種多様なデザインがありますが、いずれも見た目の美的効果と着やすさの両面から追求されたものです。
つまり袖は腕の機能を美化したものといっていいでしょう。
「静と動」の要素を加味してこそ、新しい機能美が生まれるのです。

しかし、この機能性と美的効果とのバランスをとることは難しく、袖のデザインについて考える場合、永久に残る問題点といっても過言ではありません。
腕の機能を尊重しようとすると美的な造形が難しく、反対に静的な形を美しくするということばかりを考えると、機能性を見失いがちになるのです。

袖の美しさと機能性という、この二つの矛盾点を、袖のデザインのなかにどのように共存させていけばいいのでしょうか。

それには、まず服の目的を考えることです。
服にはスポーティなものもフォーマルなものもあります。
それらの目的によって、動的な機能性と静的なシルエットとのかね合いをみることが大切です。

一方、形の美しさと運動のしやすさを共存させるといっても、まだまだ一部には、袖に対する認識やカッティング方法に大きな問題が残っていることは否定できません。

どちらかといえば機能性を無視した袖が多いのはどうしてでしょう。

それは、機能性を抑えた服作りのなかに、女のイメージを作りだす秘密があるからでしょうか?
言い換えれば「静的な女」のイメージにこそ女らしさの秘密があるという考え方も、無視できないような気がするのです。
束縛されている女、弱い性、それが女性だという、古いといえば古い考え方が、とくに男性の目にはまだまだ残っているようです。

たとえば静的なフォーマルドレスを着た場合を想像してみましょう。
乾杯!というとき、グラスを静かにあげるしぐさに女らしさのあらわれがあり、ここで動的な袖のデザインによって、腕をぐいっと挙げてしまっては女らしさが吹き飛んでしまう、とでもいいたいのでしょうか。

また、こういう見方をすれば、静的な形を尊重し、機能を無視する方法もまだ必要だということでしょうか。

しかし、どんなものでも着やすいことが第一です。
そしてその場、そのときの雰囲気に合わせて着こなすものですから、フォーマルドレスといえども、機能性を豊かにしてほしいものです。

このように、機能性と美的効果のバランスのとり方にはまだまだ問題があり、決定的な解答は永遠に出てこないかもしれません。
ともかく袖は、この両者の比重の変化によって作られるということを根本に考えてください。

 

袖の分量は身頃とのバランスによって決まる

小池千枝先生 袖のデザインと機能性02ブルゾン
「袖 着やすさと美しさのテクニック」より

 

  • ブルゾン
    なだらかな肩線
    ウエストのブラウジング分量
    袖のパフ分量など
    適度な運動量を入れた着やすい袖
    写真提供:国際羊毛事務局

袖のデザインをするとき、まず大きな問題は、身頃の量感に対してどの程度の量感の袖を組ませてバランスをとるか、にあります。
ここでいう量感とは、機能性の量感とデザイン上の量感をいいます。

この袖と身頃との機能性の量感のバランスについて考える際、次のことを念頭においてください。

それは、袖と身頃が相互に助け合うバランスでありたいということです。

確かに腕を挙げると、袖の運動量の不足によって身頃が引かれて、つれじわがでます。
しかし、それをしわではなく、それなりの情緒のある美しい線にしたいものです。
さらに腕の運動が終わったとき、そのしわが美しいもどり方をすれば、理想的です。

そのためには、袖の運動量の不足分を、身頃のデザインやカッティングで補うことが必要です。
というのは、袖と身頃はつねに関連しているものであり、腕の運動による変化に袖のみで対応させようとすることは至難の技だからです。
ただ、ニットやストレッチ性の素材で作る場合は例外ですが。

さて、袖と身頃の組み合わせにはほとんど無限ともいえるケースが考えられます。

デザイン上の量感には幅と丈が関係しますが、ここで細さ、太さだけを考えるとしても、非常に量感のある身頃に対して、やはり量感のある袖、反対にほっそりとつつましやかな袖。
あるいは身頃も袖も、ともになるべく量を感じさせないように考えた細いシルエット。
そんな対比と同調のおもしろさは、それぞれにまた程度の変化があるものです。

また、幅や丈のほかに材質も量感に影響します。
柔らかい素材で流動感あふれるものにしたり、張りのある布を使って、その張りを味わうこともあります。

参考文献

  • 袖 着やすさと美しさのテクニック
    ISBN4-579-10131-6

小池千枝先生の「袖 着やすさと美しさのテクニック」については、以下も参考にしてください。

 

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