小池千枝先生 第11回

ファションコンテストが終わると、文化服装学院はもうすぐ卒業式です。
卒業生は卒ショーや卒展の準備に入ります。

 

全員が服を作れるように 

小池千枝先生341955年 パリから帰国した小池千枝先生
「小池千枝 ファッションの道」より
ISBN4-579-30334-2

 

今日は卒展の準備の間の、ファッション工科専攻科の放課後の様子を紹介します。

小池千枝先生が学院長だった頃の文化服装学院は、
「どの学科の学生も、服を一人で全部作れる」
ということを大事にしていました。

担任の先生もスタイリスト科出身の学生に、
「スタイリストになるにしても、服を作った経験は将来の仕事のためになりますよ。」
と言っていました。

作業量だけで言うと、型紙作りはデザインの何倍もの時間と労力がいります。

縫製作業は、型紙作りの何倍もの時間がかかります。

型紙作りや縫製をしない方が楽なので、学生はできるだけ型紙作りや縫製を避けようとします。

現在のアパレル業界には服作りのことがわからない人が大勢いて、型紙や縫製のことを理解できない人もたくさんいます。

しかも服作りのことがわからない人たちが大きな顔をしているのが、いまのアパレル業界です。

 

ジャケットの立体裁断

そんな教育方針の中、スタイリストに進路が決まった学生も、放課後ジャケットの立体裁断に挑戦していました。

ファッション工科専攻科の学生は、いろいろなことに挑戦し実力をつけていました。

そこに小池千枝先生が、ふらりと現れました。

小池千枝先生は、放課後よく校内を歩き回り、学生に声をかけていらっしゃいました。

そして学生の立体裁断を見て、
「あら、頑張っているわね。」
とねぎらいの声をかけてくださいました。

そして、
「そんなカッティングじゃダメよ!下手ね!」
とはっきりとおっしゃいました。

 

小池千枝先生がダメ出しした学生のカッティング

小池千枝先生35 ジャケットの型紙身頃を3枚構成にしたジャケットの型紙
「文化ファッション講座 婦人服2」より

 

作っていたジャケットの身頃は、上の図のように、

  1. 前身頃
  2. 脇身頃
  3. 後ろ身頃

の、3枚の構成になっていました。

小池千枝先生は、
「下手な人は脇身頃を切り替えちゃうけれど、前身頃を後ろまで回してダーツで処理してみなさい。
なめらかな身頃が、できますよ。」

とアドバイスすると、さっさとどこかへ行ってしまいました。

 

小池千枝先生が教えてくださったカッティング

小池千枝先生36 ジャケットの型紙身頃を2枚構成にしたジャケットの型紙
「文化ファッション講座 婦人服4」より

 

上の図はジャケットの身頃が、

  1. 前身頃
  2. 後ろ身頃

の、2枚構成になっています。

小池千枝先生は、この型紙のように
「前身頃を、後ろまで持っていきなさい。」
とアドバイスしてくださったのでした。

 

装苑賞の仮縫い

別の日の、放課後のことです。

私が担任の先生と教室前の廊下で、装苑賞用(リンク先にこの時の服の写真があります)の仮縫いをしていました。

そこに小池千枝先生が、いらっしゃいました。

担任の先生が小池千枝先生に、
「佐藤さん、また装苑賞の候補に選ばれたんですよ。
この足のところがうまくいかなくて・・・。」
と相談しました。

小池千枝先生は、
「デザイン画を見せてちょうだい。」
「難しく考えることないのよ。
こんなの重っ苦しいから、とっちゃいなさい。」

と言うと、トワルを破りました。

するとデザイン画に近い服が、私たちの目の前に現れたのでした。

担任の先生と私は、驚きました。

第12回につづく・・・