小池千枝先生 第7回

文化服装学院には、たくさんの服が所蔵されています。
小池千枝先生は特別授業のとき、所蔵されている服を持ってきてくださいました。

 

ジョルジオ・アルマーニのスーツ

小池千枝先生22小池千枝先生
「小池千枝ファッションの道」より
ISBN4-579-30334-2

 

1991年当時、男性の間ではジョルジオ・アルマーニのスーツが流行っていました。

小池千枝先生は、このジョルジオ・アルマーニのスーツを持ってきて、こう言われました。

「アルマーニのパターンを、真似してはいけません。
日本の硬い布地を使って、アルマーニのパターンでジャケットを作ったら腕が上がりません。
アルマーニの柔らかい風合いの良い布を使って、初めて動けるジャケットになるのです。」

「アルマーニのスーツを着て満員電車に乗ったら、1日で毛玉ができてしまします。
アルマーニのスーツは満員電車に乗らなくていい人が着る服です。」

「アルマーニのような、柔らかくて風合いのいい布は日本では作れないですね。
技術がないわけではないのです。」

「百貨店なんかの基準が、厳しいでしょ!
日本のメーカーがアルマーニみたいな布を作ったら、すぐに毛玉ができたとクレームが来るでしょ。
だから、丈夫な布しか作らないのです。
紙みたいな、面白くない布しか作らないのです!」

  • 高級品は丈夫
  • 高級品は長持ちする

という価値観の日本人には、ファッションの繊細さがわからないのでしょうね。

 

ヨウジヤマモトのコート

小池千枝先生23 ヨウジヤマモトコート ヨウジヤマモト 1983年
2011年 西武渋谷店 YOHJI YAMAMOTO 展 フライヤーより

 

小池千枝先生は写真のヨウジヤマモトのコートを持ってきて、私に着させてくださいました。

手に持つとずっしりと重いコートでしたが、着ると不思議と重さを感じません。

小池千枝先生は、実際に着ることによって身体的に服を感じさせてくださったのだと思います。

 

スパンコールについて。

小池千枝先生24 イヴ・サンローラン スパンコールドレス イヴ・サンローラン 1966年秋冬
「YVES SAINT LAURENT」より
ISBN 978-0-8109-9608-3

 

  • スパンコール・ドレス
    イヴ・サンローラン
    1966年秋冬オートクチュールコレクション
    チロリアン・カットされた石
    ”ヴォーグ・パリ”
    Photograph : David Bailey

小池千枝先生は、2つのスパンコール刺繍(ししゅう)された布を持ってきて、見せてくださいました。

1つはキラキラ光り輝き、もう1つは光り方がおとなしいものでした。

小池千枝先生はおっしゃいました。

「日本人は几帳面でしょ。
日本人はスパンコールをつけるとき、同じ方向に同じ間隔でまっすぐに綺麗につけました。
フランス人は適当に雑にスパンコールをつけているように見えました。」

「どちらが、日本人がつけたスパンコールでしょうか?」

「答えは、この光っていない方が日本人がつけたスパンコールです。」

スパンコールに光が乱反射して、キラキラ光るでしょ。
適当につけているふうのフランス人の作品の方が、キラキラ光るのです。
日本人の几帳面さが、裏目に出た例です。」

「しかも日本人がつけたスパンコールは、つけた数が多いのに光らないのです。」

 日本人の特徴である、

  • 「真面目」
  • 「几帳面」

ということが、ファッション性を妨げてしまう危険性があることを、小池千枝先生は何度も繰り返し教えてくださいました。

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