小池千枝先生 第6回

1991年6月、出張中の小池千枝先生からファッション工科専攻科の学生に課題が出されました。 

 

マドレーヌ・ヴィオネについての講義

小池千枝先生18第67回装苑賞公開審査の小池千枝先生 1993年1月
「装苑1993年4月号」より

 

前回の特別授業で小池千枝先生は、「マドレーヌ・ヴィオネ」について講義してくださいました。

  • この年に発刊されたマドレーヌ・ヴィオネの本を私たちに見せながら
  • バイアスカット
  • パリコレのジャン=ポール・ゴルチエのハンカチーフヘムのスカート

などを紹介してくださいました。

 

小池千枝先生からの課題

小池千枝先生19 マドレーヌ・ヴィオネの課題1辺が108cm〜112cmの正方形の布を正バイアスに使う

 

小池千枝先生からの課題は、マドレーヌ・ヴィオネのバイアスカットを応用したものでした。

「シングル幅の正方形の布を正バイアスに使い、2枚で体を包みなさい。」
というものでした。

1辺が108cm〜112cmの正方形の布を、2枚使います。

それぞれを正バイアスに使い、2枚で体を包み込みます。

 

私が作った服

小池千枝先生20 マドレーヌ・ヴィオネの課題私が作った型紙
左が前身頃 右が後ろ身頃

 

私は、

  1. 前中心に適当な切り込みを入れ、前衿ぐりにしました
  2. 前身頃と後ろ身頃の点線部分を縫って肩線にしました。前衿ぐりはV字に開きます
  3. アームホールの形を整えました
  4. 脇線を止めてシルエットを作りました
  5. 着丈を決めて、裾線をカットしました
  6. 後ろ衿(セーラーカラー)の形を決めました

すると下のデザイン画のような服が出来上がりました。

 

小池千枝先生の評価

小池千枝先生21 マドレーヌ・ヴィオネの課題 佐藤真樹デザイン画小池千枝先生の課題で作った服のデザイン画

 

小池千枝先生は、ファッション工科専攻科の学生全員の作品を講評してくださいました。

私はダメ出しされると思っていましたが、小池千枝先生から初めて褒めていただきました。

小池千枝先生に、
「正バイアスの特性を一番上手に表現しているし、制限がある中で面白いアイディアを形にしている。」
と言っていただいたことを覚えています。

私が作ったこの服を、小池千枝先生はとても気に入ってくださりました。

さらに、
「夏の講習会に持って行って、モデルに着てもらいます。日本中の講習生の方に、見てもらいます。
そして『服の勉強をして、わずか3か月の学生が作った服です』と、みなさんに伝えます。」
と言ってくださいました。

 

小池千枝先生と軽部征夫教授の約束

私が文化服装学院で学ぶにあたり、小池千枝先生と東京大学先端科学技術研究センターの軽部征夫教授との間で、ある約束をしていたそうです。

その約束とは、
「私にファッションデザイナーとしての才能がなければ、私は文化服装学院をやめて軽部教授の紹介で就職する。」
というものでした。

「若者の将来を潰したくない」という、小池千枝先生と軽部征夫教授のお気持ちだったそうです。

マドレーヌ・ヴィオネのバイアスカットの課題は、私にとっては文化服装学院で学び続けることができるかどうかの試験だったのです。

私は、無事に試験に合格することができました。

 

繊研新聞の記事

1年後、小池千枝先生はこのときのことを繊研新聞の記事にしてくださいました。

その記事の内容は、
「文化服装学院の中でも優秀な学生が集まっているファッション工科専攻科の中に、ファッションとは関係のない理科系大学を卒業した学生が入ってきました。
私は最初、ついていけないだろうと思って見ていました。
ところがマドレーヌ・ヴィオネのバイアスカットの課題を出した時、この理科系出身の学生の作品が一番出来が良かったのです。
私は長いこと教師生活を送ってきましたが、こんなことは初めてでした。
その後、この学生は装苑賞候補にも度々選ばれて、ファッションとは関係のなさそうな大学出身の学生でもここまでやれるんだと驚いています。」
というものでした。

小池千枝先生にこのような記事を書いていただき、本当にうれしかったです。

第7回につづく・・・