デンマーク近代家具の祖 コーア・クリント

コーア・クリントは、デンマーク近代家具デザインの重要な人物です。
しかし、コーア・クリントの作品を目にする機会はあまりありません。

 

コーア・クリント

コーア・クリント02コーア・クリント
「北欧インテリア図鑑 ELLE DECOR NO.139 2015年 8月号別冊付録」より

 

コーア・クリント(Kaare Klint)

  • 1888年 デンマークのコペンハーゲンに生まれる(12月15日)
  • 1914年 ファーボウ美術館のための椅子、ファーボウチェアを発表
  • 1916年 人間工学的な発想にもとづき、人間と家具の研究を行う
  • 1917年 家具デザイナーとして独立
  • 1920年 個人事務所を設立
  • 1924年 デンマーク王立芸術アカデミーの家具コースの責任者となる
  • 1926年 デンマーク工芸美術博物館の内装と家具デザインを担当
  • 1927年 プロペラスツール、レッドチェアを発表
  • 1928年 エッカースベア賞受賞
  • 1929年 バルセロナ万博でレッドチェアがグランプリを受賞
  • 1944年 王立美術アカデミー家具科の初代教授に就任
  • 1954年 死去(3月28日)

 

家具の標準寸法の確立

コーア・クリント03 プロペラスツールプロペラスツール コーア・クリント 1927年
「別冊家庭画報 北欧インテリア」より
ISBN978-4-418-09101-0

 

  • プロペラスツール
    コーア・クリント
    1927年
    アフリカの民芸品にヒントを得てリデザイン
    革、トネリコ材
    W580×D490×H430mm

コーア・クリントの功績のひとつは、人間と家具のバランスに関する研究です。

コーア・クリントは人間工学的な手法により、

  • 人体の各部の動きを採寸測定
  • 収納家具における収納物の寸法とその平均値の算出

などさまざまな項目について、調査・分析を行いました。

そしてこの分析から、家具の標準寸法を確立しました。

 

伝統的な様式家具の研究

コーア・クリント04 ファーボウチェアファーボウチェア コーア・クリント 1914年
「別冊家庭画報 北欧インテリア」より

 

  • ファーボウチェア
    コーア・クリント
    1914年
    ファーボウ美術館のためにデザイン
    英国と中国様式の両方の影響を受ける
    新古典主義からモダニズムへ移行するターニングポイントとなった一脚

    マホガニー、籐
    W690×D545×H720、SH450mm

コーア・クリントは、古くからの様式家具の基礎研究を行いました。

そして近代デザインに、リデザインしました。

このファーボウチェアも、18世紀半ばのチッペンデール様式(当時の代表的家具作家の名前)が源流にあります。

 

古代は我々よりももっとモダンである

コーア・クリント05 レッドチェアレッドチェア コーア・クリント 1927年
「別冊家庭画報 北欧インテリア」より

 

  • レッドチェア
    コーア・クリント
    1927年
    英国のトーマス・チッペンデール様式のリデザイン・モデル
    バルセロナチェアとも言われる
    W570×D550×H885、SH450mm

コーア・クリントは、「古代は我々よりももっとモダンである」と述べています。

リデザインの考え方は、

  1. すでに価値の認められた伝統的な家具のよい点を見直す
  2. 問題点を改善する

というものでした。

リデザインによって、美しく完成度の高いプロポーションを生み出しました。

 

アノニマスデザインのリデザイン

コーア・クリント06 サファリチェアサファリチェア コーア・クリント 1933年
「別冊家庭画報 北欧インテリア」より

 

  • サファリチェア
    コーア・クリント
    1933年
    植民地に派遣されていた英国将校が使用した携帯できる安楽椅子にヒントを得て発想
    組み立て式家具

    背と座は布張り
    アーム部は革
    脚部は木材
    W570×D570×H800、SH330mm

コーア・クリントは伝統的な様式主義の椅子だけでなく、アノニマスデザインもリデザインしています。

サファリチェアは、アフリカやインド統治時代にイギリス軍でつくられたコロニアルチェアをリデザインした椅子です。

解体、組立てが簡単にできたコロニアルチェアの特色を踏襲しています。

 

教育者としてのコーア・クリント

コーア・クリント07 ウィングチェアウィングチェア コーア・クリント 1941年
「北欧インテリア図鑑 ELLE DECOR NO.139 2015年 8月号別冊付録」より

 

  • ウィングチェア
    コーア・クリント
    1941年
    ウィングチェアをモダンにリデザインした作品
    ウィングチェアW690×D830×H1140、SH460mm
    スツール   W500×D500×H420mm

コーア・クリントは、教育者としても一流でした。

コーア・クリントは、多くの教え子を世に送り出しました。

コーア・クリントの教え子には、

などデンマークを代表するデザイナーがいます。

 

デンマーク近代家具デザインの父

コーア・クリント08 ソファ・ウィズ・ハイ・サイドソファ・ウィズ・ハイ・サイド コーア・クリント 1930年
「北欧インテリア図鑑 ELLE DECOR NO.139 2015年 8月号別冊付録」より

 

  • ソファ・ウィズ・ハイ・サイド
    コーア・クリント
    1930年
    デンマーク首相執務室用にデザイン
    コーア・クリントにとって初のボックス形ソファ
    W1340×D800×H860、SH380mm

コーア・クリントの2つの研究である

  1. 機能性の追求
  2. 審美性の追求

が、その後のデンマーク家具の「機能美」を生み出します。

このようなデザイン理念は、今日もデンマークの若いデザイナー達に受け継がれています。

 

まとめ

コーア・クリント09 Pendant 101ペンダント101 コーア・クリント 1944年
「別冊家庭画報 北欧インテリア」より

 

  • ペンダント101
    コーア・クリント
    1944年
    フルーツランプとも呼ばれる折り目の美しいペンダントランプ
    父親直伝の1枚の紙を折って作るランプシェードは、現在ではプラスチック板で作られている
    直径270×H360mm〜

「デンマーク・デザイン展」に、

フィンランドのデザイナーに比べて、デンマークのデザイナーは層が厚いと思いました。

その理由のひとつに、コーア・クリントの存在があります。

と書きました。

コーア・クリントは重要なデザイナーですが、メジャーではありません。

コーア・クリントがメジャーではない理由は、製品が高価だからだと思います。

椅子の値段が、100万円以上します。

手軽に手に入れることができるコーア・クリントの製品が、レ・クリントのペンダント101です。

私も、自宅で使っています。

メディアはもっと、コーア・クリントを紹介してほしいと思います。

 

デンマークのデザイナーについては、以下も参考にしてください。