ジャポニスムとパリモード

ファッションのジャポニスムというと、悪趣味のような気がします。
しかしジャポニスムは一過性の流行ではなく、その後のパリモードに大きな影響を与えるのでした。

 

ジャポニスム

ジャポニスム02「エリオ夫人」 ピエール=オーギュスト・ルノアール 1882年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」
ISBN978-3-8365-3719-1より

 

  • エリオ夫人
    ピエール=オーギュスト・ルノアール
    1882年
    夫人はきのもをドレスの上に着ている
    ウエストにドレスと同色のベルト
    きものは白地に藤、水文様などの文様が浮かび上がっている
    文様はオレンジ(朱)、ブルー(群青)、グリーン、金

1854年の日本開国以降、ヨーロッパで日本への関心が急速に高まりました。

そしてジャポニスムは、流行しました。

1860年ごろになると、日本の品を売る店がパリやロンドンなどに現れました。

 

日本の工芸品の輸出

ジャポニスム03扇 日本 19世紀後半
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より

 


  • 日本

    19世紀後半
    象牙製
    蒔絵や象嵌(ぞうがん)による人物柄と、昆虫や花籠柄
    根付風タッセル付き
    19.6cm

ジャポニスムの流行とともに、ヨーロッパに向けた日本の工芸品が輸出されました。

なかでも扇は、最も人気のある品のひとつでした。

親骨の梅や菊などの細工は、ヒスイや珊瑚、貝による象嵌です。

要にはヨーロッパで収集熱が高まっていた、根付風のタッセル飾りが付いています。

 

日本の文様の引用

ジャポニスム04 ジャック・ドゥーセデイ・ドレス ジャック・ドゥーセ 1897年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」

 

  • デイ・ドレス
    ジャック・ドゥーセ

    1897年
    グレイのウール・ツイルのツーピース・ドレス
    肩と袖と裾に、ベルベットのアヤメ、サテンの葉と茎の飾り
    衿ぐりにシルク・シフォン
    裾にシルク・サテン
    アヤメ文様のエナメルのバックル

日本の文様が、引用されるようになりました。

リヨンのテキスタイルに、日本風の花鳥風月(特に小動物)や家紋などが積極的に取り入れられました。

この傾向は1880年代に始まり、1920年代まで続きました。

 

ティ・ガウン

ジャポニスム05ティ・ガウン 日本 1895年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より

 

  • ティ・ガウン
    日本

    1895年
    ピンクの精好
    ジャボとプラストロンは楊柳
    菊の刺繍
    背にピエモンテーズ風プリーツ
    ハンギング・プリーツ
    裏地は羽二重に木綿の中綿を裏打ちした、
    ミシン・ステッチのキルティング

日本で精好と呼ばれた、タフタ地が用いられています。

菊の刺繍が日本の技法、肉入縫いで施されています。

ティ・ガウンは、19世紀後半から20世紀初頭に着用されました。

コルセットを緩めて、着用することができました。

1875年に設立したリバティ商会は、日本の絹地や室内着を輸入、販売しました。

 

室内着

ジャポニスム06室内着 飯田高島屋 1906年ころ
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」

 

  • 室内着
    飯田高島屋

    1906年ころ
    灰色の絹平織
    後ろ身頃から前身頃にかけて、
    桜の木に留まる孔雀の刺繍
    袖口には組紐と房飾り
    ピンクのふき
    裏地は羽二重

飯田高島屋、三越といった日本の大手呉服屋は、19世紀末から積極的に貿易事業を展開しました。

この写真のように、絹に日本刺繍をしたコートもその一環でした。

このキモノ風室内着は、身頃は裾に向かって緩やかに広がり衿もカーブしています。

きもの本来の形を生かしながら、ヨーロッパ市場を意識した裁断をしています。

 

きものからの裁断への影響

イブニング・コート ジャンヌ・パキャン 1912年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より

 

  • イブニング・ドレス
    ジャンヌ・パキャン

    1912年
    ブルーの絹シャルミューズと黒い絹サテン 
    後ろ身頃に日本風の花と水紋の刺繍

このショール風のコートは、1枚の布でシンプルな裁断で作られています。

1910年から13年にかけて多くのメゾンが、後ろ身頃にたっぷりゆとりを持たせたコートを発表しています。

これらのコートは、日本のきものの抜き衣紋を意識したような衿足を見せるデザインでした。

 

まとめ

ジャポニスム08 マリアノ・フォルチュニィコート マリアノ・フォルチュニィ 1910年
「FASHION A History from the 18th to the 20th Century」より

 

  • コート
    マリアノ・フォルチュニィ

    1910年
    薄茶のベルベットに多色のステンシル・プリント
    立湧(たてわく)蝶葵文様
    ライニングはサーモンピンクの絹ファイユ
    布幅をいっぱいに使った直線裁ちの後ろ身頃と
    1/2幅の前身頃2枚で構成されている

ジャポニスムの流れは、

  1. きものが室内着として着られた
  2. 日本のきもの地がドレスに仕立てられた
  3. 日本のモチーフ(文様)が引用された
  4. 新しいタイプの室内着キモノが生まれた

のように進みました。

そして20世紀には、きもののシルエットや平面的な構造がモードに大きな影響を与えることになります。

ジャポニスムがパリモードに与えた影響へつづく・・・