ファッションとシュルレアリスム

エルザ・スキャパレリを取り上げたとき、シュルレアリスムに少しだけふれました。
今回は、シュルレアリスムとファッションの関係を見ていきます。

 

シュルレアリスム

ファッションとシュルレアリスム02 エルザ・スキャパレリマルセル・ヴェルテス
エルザ・スキャパレリの靴帽子
「ファッションの世紀」より

 

  • マルセル・ヴェルテス
    「エルザ・スキャパレリの靴帽子」
    ”ハーパーズ・バザー”誌1937年9月15日号

20世紀のアートにとってシュルレアリスム(超現実主義)は、最も重要な、そして影響力を持った動きのひとつでした。

1924年のパリで、フランスの詩人アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」によって始まりました。

シュルレアリスムは、

  • 美術
  • 文学
  • 政治

などの幅広い創造活動に共通する理論でした。

シュルレアリスムは、

  • ダダによる否定と破壊の思想
  • フロイト

の影響を受けていました。

そしてシュルレアリストたちは、

  • 幻覚
  • 狂人

などに現れる意識下の領域、つまり

  • 異常なもの
  • とっぴなもの
  • 病的なもの

などが現れる、不思議の国へと踏み込んでいきました。

シュルレアリスムは、ファッションもその視野の中に取り込んでいきました。

 

引き裂かれた服

ファッションとシュルレアリスム03 エルザ・スキャパレリイブニング・ドレス エルザ・スキャパレリ 1937年
「ファッションの世紀」より

 

  • イブニング・ドレス
    エルザ・スキャパレリ
    1937年
    引き裂かれた布をプリントにしたドレス
    露出と隠蔽という衣服の機能を問い直す
    「切り裂きドレス」

ダリのとっぴなアイディアをエルザ・スキャパレリは、ユーモアたっぷりに、しかも大まじめにオートクチュールの服に具現化しました。

引き裂きドレスではエレガントなイブニングドレスに、引き裂かれた布がプリントされていました。

ここで引き裂かれているのは、

  • 皮膚

ではなく、プリントによるイメージです。

イメージの奥にある私たちの意識が、引き裂かれました。

 

コム・デ・ギャルソンの場合

ファッションとシュルレアリスム04 コム・デ・ギャルソンブラウス、ドレス コム・デ・ギャルソン 1983年春夏
「FASHION 18世紀から現代まで」より
ISBN978-4-88783-282-4

 

  • ブラウス、ドレス
    川久保玲/コム・デ・ギャルソン
    1983年春夏
    生成りの綿ジャージーのブラウス
    綿リボンのアップリケ
    生成りのドレスは、シーチング、レーヨン・サテンのパッチワーク
    洗いざらし

ヘーゲルは、

理想的芸術は、人体の各部分を造形する際に、貧弱な動物的生命の現れたる細かい組織・・・血管、しわ、うぶ毛など・・・を抹消し、生命の脈打つ輪郭線のうちに精神の形を大きく浮かび上がらせますが、その仕事をここでは衣服が受けもつのです。

「ファッションの世紀」p131より引用

と言っています。

シュルレアリスティックな表現は、まさにそれとは逆の表現であると言えます。

 

ヨウジヤマモトの場合

ファッションとシュルレアリスム05 ヨウジヤマモトジャケット、ドレス、パンツ ヨウジヤマモト 1983年春夏
「FASHION 18世紀から現代まで」より

 

  • ジャケット、ドレス、パンツ
    ヨウジヤマモト
    1983年春夏
    カットワークした白い綿のジャケット、ドレス、パンツ

一般的な服の役割のひとつに、
「隠蔽することによって、隠蔽されたものの魅力を喚起する」
というものがあります。

  1. ずたずたに穴がうがたれ
  2. ぼろ切れが無意味に垂れ下がった
  3. 無残なドレープ

このようなドレスは、服の役割をひっくり返しました。

 

メタファーとしてのボディ

ファッションとシュルレアリスム06 エルザ・スキャパレリ香水「ショッキング」 エルザ・スキャパレリ 1943年
「もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー」より
ISBN978-4-7661-2374-6

 

  • 香水「ショッキング」の宣伝広告
    エルザ・スキャパレリ
    1943年

シュルレアリストは、

  • 身体
  • メタファーとしてのボデイ

を好みました。

エルザ・スヤパレリは1937年、ボディをかたどった香水瓶の「ショッキング」を発表しました。

瓶のデザインは、シュルレアリストのレオノール・フィニでした。

官能的な女性メイ・ウェストの体をモデルに作られました。

 

ジャン=ポール・ゴルチエの場合

ファッションとシュルレアリスム07 ジャン=ポール・ゴルチエ香水 ジャン=ポール・ゴルチエ
「The Fashion World of Jean Paul Gaultier」より

ISBN978-1-4197-0002-6

 

シュルレアリスムは、

  • 日常的なものと非日常的なもの
  • 毀損(きそん)と装飾
  • 身体と観念
  • 人工的なものと現実的なもの

の間の避けようのない激しいきしみに意識を集中します。

ファッションこそそのきしみを、もっともよく映し出すものと考えられました。

 

マルタン・マルジェラの場合

ファッションとシュルレアリスム08 マルタン・マルジェラジャケット マルタン・マルジェラ 1997年春夏
「FASHION A History from the 18th to 20th Century」より
ISBN978-3-8365-5719-1

 

  • ジャケット
    マルタン・マルジェラ
    1997年春夏
    麻の製造番号つきの人台をそのまま服にした

ファッションは、現実的なものと精神的なものとの関係に直接的にかかわっています。

シュルレアリスムは、

  1. 現実を超えるという理念に向かって
  2. 現実に揺さぶりをかけ
  3. 別なものへと転換

させていきます。

ファッションは、

  1. どんな手を使って
  2. 身体を変換させる

ことが可能か模索します。

ファッションは、身体の表層に夢を描き出す作業であると言うこともできます。

ファッションは本質的に、シュルレアルなものだと言うことができます。

 

まとめ

ファッションとシュルレアリスム09 トキオ・クマガイ靴 トキオ・クマガイ 1984年ころ
「FASHION A History from the 18th to 20th Century」より

 


  • トキオ・クマガイ
    1984年ころ
    樹脂
    「アイスクリーム・シューズ」

私は、プリントやトロンプルイユの良さがよくわかりません。

シュルレアリスムの理念のもと、プリントやトロンプルイユにたどり着いたのは、本当にすごいことです。

しかし現在では、イージーなプリントやトロンプルイユが氾濫しています。

そのことが、本質を見えにくくしています。

ファッションは、常にコピーされます。

それは、表層のみのコピーです。

そしてファッションは、陳腐化していくのです。

参考文献

  • ファッションの世紀
    深井晃子署
    平凡社
    ISBN4-582-62034-5

20世紀のアートとファッションの関係は、以下も参考にしてください。

 

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