服を作る者にとって、布の地の目はとても大切です。
どこに経地の目(たてじのめ)を通すかによって、服の表情が変わります。
布の表情
赤い布のサンプル(経糸と緯糸見えますか?)
「YVES SAINT LAURENT」より
ISBN978-0-8109-9608-3
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を織って、布地を作ります。
- 糸の種類
- 経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の太さの違い
- 打込み本数(1インチあたりの糸の本数)の違い
- 織り方による組織の違い(主に平織り、綾織り、朱子織りがある)
これらの違いによって、布の張り感、垂れ感の違いが生まれます。
布の表情が違うと、服のデザインも変わってきます。
地の目が見えた瞬間
青い布のサンプル
「YVES SAINT LAURENT」より
私が文化服装学院で勉強を始めた頃、地の目の大切さを頭ではわかっていました。
しかしトワルを組んでみても、地の目を実感することがなかなかできませんでした。
もちろん、布地を見れば経糸(たていと)、緯糸(よこいと)は見えます。
織り方の違いによる、組織の違いもわかります。
でもトワルを組んでいるときには、地の目が見えてこなかったのです。
文化服装学院で学び始めて10ヶ月が過ぎた2月頃、装苑賞の候補作品に選ばれました。
私はトワルを組んでは解体し、又組み直すことを繰り返していました。
トワルを、20体くらい組んだ頃でしょうか。
突然、トワルの「地の目」が目に飛び込んできたのです。
私は、驚きました。
あれほど見えなかった地の目が、自然と見えるようになったのです。
地の目が見えるようになってからの作品は、私が思うに「窮屈さがない」ようになりました。
繰り返しトレーニングするということ
この服を作っている時に自然と地の目が見えるようになりました
「装苑1992年6月号」より
その後も、繰り返し繰り返し服を作りました。
そして繰り返し服を作る過程から、
- わかったこと
- 身についたこと
が、たくさんありました。
「服を作る」ということは、頭でわかっているだけではできません。
服を作るためには、トレーニングが必要です。
繰り返しトレーニングをすることは、楽しいことではありません。
しかしつまらないと思うことを、何度も何度も繰り返さなければ、できるようにはならないことは沢山あります。
トレーニングを重ねて、初めて見えるもの、理解できることがあります。
私はアパレル業界で、トレーニングを積んでこなかった人をたくさん見ました。