カンティレバーチェアの名作6脚

前回「アキッレ・カスティリオーニと2人の兄」を書いたとき、カンティレバーチェアについてふれておきたいと思いました。
椅子のデザインにおいて、カンティレバーは特別な意味を持っていました。

 

カンティレバーとは

カンティレバーチェア02 マルト・スタムガスパイプチェア マルト・スタム
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より
ISBN4-7779-0244-7

 

  • ガスパイプチェア
    マルト・スタム

カンティレバーとは、片持ち構造を意味します。

カンティレバー構造の椅子が開発されるまで、椅子は基本的に座面を前後の4本の脚で支えていました。

カンティレバー構造の椅子は、(前後のどちらか)片側だけで座面を支えています。

マルト・スタムは、1926年に最初のカンティレバーチェアの原型を発案しました。

 

マルト・スタム

カンティレバーチェア03 マルト・スタムサイドチェア マルト・スタム 1933年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より

 

  • サイドチェア(CANTILEVER Chair)
    マルト・スタム
    1933年
    スチールパイプ+革張り
    トーネット社

マルト・スタムは、オランダの建築家です。

マルト・スタムはガス管と金具のみでつくった椅子を、ロッテルダムの自宅の妻のために考案しました。

サイドチェアは、マルト・スタムとアントン・ローレンツの合作です。

アントン・ローレンツは、トーネット社のデザイナーの一人でした。

サイドチェアの接地面は、背もたれのある位置よりも後ろにあります。

サイドチェアは、深く腰掛けて背に寄りかかったときの安定感を求めています。

 

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ

カンティレバーチェア04 ルートヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエアームチェア ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ 1927年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より

 

  • アームチェア MR20 (MR Chair)
    ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ
    1927年
    スチールパイプ+籐張り
    W480×D750×H830、SH420mm
    トーネット社

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエは、1926年にマルト・スタムのカンティレバー構造を知りました。

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエは、フレームの前側を丸くして鋼管の弾力を座り心地に反映させました。

またルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエは、肘掛けの造形をマルセル・ブロイヤーの「チェスカ」とはまったく違った方法で行いました。

エンドレスに見える鋼管は、本体は床面に接する後ろ脚の中央でつながれています。

また肘掛けは、背中に回した真ん中でつながれています。

座面の裏には、貫状に弓形の鋼棒がはめられています。

 

マルセル・ブロイヤー

カンティレバーチェア05 マルセル・ブロイヤーアームチェア マルセル・ブロイヤー 1929年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より

 

  • アームチェア B64 (チェスカ)
    マルセル・ブロイヤー
    1929年
    スチールパイプ+籐張り
    W590×D630×H790、SH440mm
    トーネット社

マルセル・ブロイヤーの「チェスカ」は、宙に浮いたようなフォルムを実現しています。

一筆書きの線を描く鋼管のフォルムを、とても自然に椅子の機能と一体化しています。

「チェスカ」の座面の下には、補強材がありません。

補強材をなくすことができたのは、座面と背もたれに木製の枠を使ったからです。

このアイディアにより、それまでにない純度の高いシルエットが完成しました。

 

アルヴァ・アアルト

カンティレバーチェア06 アルヴァ・アアルトイージーチェア アルヴァ・アアルト 1938年
「美しい椅子3 世界の木製名作椅子」
ISBN4-7779-0153-X

 

  • イージーチェア
    アルヴァ・アアルト
    1938年
    バーチ(カバ材)成形合板+コットン・革ベルト
    W600×D720×H870、SH410mm
    アルテック

木製カンティレバーは、アルヴァ・アアルトのテーマのひとつでした。

フィンランドのアルヴァ・アアルトは、バウハウスの影響を自国の木工文化に写し白樺材でデザインを試みました。

アルヴァ・アアルトは、

  • 無垢の材
  • 成形合板

の利点を見極めた家具の設計を次々に行いました。

形成合板の粘りと強度によって、木製カンティレバーが実現しました。

 

アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ

アキッレ・カスティリオーニ04 メッツァドロメッツァドロ アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ 1957年
「20世紀のデザイン」より

 

  • メッツァドロ
    アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ
    1957年
    スチールクロームメッキ+ビーチ材
    W490×D510×H510mm
    ザノッタ

アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニは、トラクターの座面と支柱をそのまま椅子にしました。

メッツァドロはノックダウン構造になっているため、3つのパーツに分解できます。

座と脚を蝶ネジで留めるアイディアに、カスティリオーニらしいアイロニカルなデザインが見受けられます。

カスティリオーニは、この椅子の実用性も重視していました。

メッツァドロは、

  • 実用性
  • アバンギャルド

のギャップがたまらない椅子です。

 

ポール・ケアホルム

ポール・ケアホルム09 PK20ハイバックチェア ポール・ケアホルム 1967年
「美しい椅子4 世界の金属製名作椅子」より

 

  • ハイバックチェア PK20
    ポール・ケアホルム
    1967年
    スチール+革張り
    W800×D710×H890、SH370mm
    フリッツ・ハンセン社

ポール・ケアホルムがデザインしたPK20は、軽快な造形にまとめあげられました。

PK20を横から見ると、脚部と座面の接着面が極端に少ないことがわかります。

脚部を直接シートに接着するのではなく、浮かせてジョイントしてあります。

こうすることで、脚部の曲線をより美しく見せています。

そして、軽やかな印象を与えることに成功しています。